HIV/AIDS 2011年
(Vol. 33 p. 229-230: 2012年9月号)
1.1985~2011年のHIV/AIDS報告数の推移:2011年に新たに報告されたHIV感染者は1,056(男994、女62)で、2008年(1,126)、2007年(1,082)、2010年(1,075)に次ぐ過去4位の報告数であった。AIDS患者は473(男440、女33)で、過去最多であった(図1)。1985~2011年の累積報告数(凝固因子製剤による感染例を除く)はHIV感染者13,704(男11,564、女2,140)、AIDS患者6,272(男5,604、女668)で、2011年10月1日人口10万対累積HIV感染者は10.723、同AIDS患者は4.908となった。また、2011年に厚生労働省疾病対策課に病変報告***として、HIV感染者→AIDS患者が6例、生存→死亡が16例(いずれもすべて日本国籍男性)報告された。なおこの他に、「血液凝固異常症全国調査」(2011年5月31日現在)において血液凝固因子製剤によるHIV感染者が累計で1,439(2008~2010年と同数:生存中のAIDS患者164および死亡者674を含む)報告されている。
国籍・性別:2011年は日本国籍男性がHIV感染者923(2010年956)、AIDS患者419(2010年421)と、ともに減少はしたが、依然としてそれぞれ全体の87%、89%を占めた(参考図)。日本国籍女性、外国国籍男性・女性のHIV感染者の報告数はそれぞれ42、71、20で、AIDS患者は16、21、17であった。
感染経路・年齢群別:日本国籍男性では、HIV感染者・AIDS患者ともに同性間性的接触(両性間性的接触を含む)によるものが多い(図2)。2011年の日本国籍男性HIV感染者のうち、同性間性的接触によるものは74%(686/923)を占め、その年齢群別では30代(249)、20代(246)が多いが、30代は2008年(290)以降減少傾向が続き、20代は2008年(252)のピークを超えていない(図3a)。また、2011年に初めて10~14歳の同性間性的接触によるものが1報告された。日本国籍男性AIDS患者のうち、同性間性的接触によるものは61%(255/419)を占め、30代(85)、40代(79)が多く、30代は2年連続して減少したが、40代は2009年以降の増加が著しい(図3b)。日本国籍女性の感染経路はほとんどが異性間性的接触である。静注薬物使用によるものはHIV感染者、AIDS患者合計5(日本国籍者3、外国国籍者2)(2010年7)で、これ以外に「その他」として静注薬物使用と性的接触の両方によるものが9(日本国籍者9)(2010年12)あった。母子感染の報告は2007~2009年には無く、2010年はHIV感染児が3報告され、2011年も1報告された。
推定感染地域:日本国籍者では男女ともに国内での感染が多く、2011年はHIV感染者の91%(男性92%、女性81%)、AIDS患者の81%(男性81%、女性75%)を占めた。また、外国国籍男性のHIV感染者でも2001年以降国内感染が国外感染を上回っており、2011年は51%を占めた。
*HIV感染者:感染症法に基づく後天性免疫不全症候群発生届により、HIV感染症と診断されたものであって、症状がないもの(無症候性キャリア)またはAIDS指標疾患の基準を満たさない何らかの症状があるもの
**AIDS患者:初回報告時にAIDSと診断されたもの(既にHIV感染者として報告されている症例がAIDSを発症する等病状に変化を生じた場合は除く)
***病変報告:厚労省疾病対策課結核・感染症対策室長通知(平成7年4月1日健医感発第30号)において、既に報告されたHIV感染者あるいはAIDS患者に病状の変化(HIV感染者がAIDS発症または死亡、AIDS患者が死亡)があった場合に、「エイズ病原体感染者報告票(病状に変化を生じた事項に関する報告)」により報告を依頼しているもの(任意報告)