2024年第11週(第11号)*2月報含む
(3月11日~3月17日) 発生動向総覧/感染症関連情報〔病原体情報(速報記事)/海外感染症情報/その他〕〔2024年3月29日発行〕
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IASR Vol. 45, No.3
(No. 529) March 2024
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の病原因子には毒素, 付着因子および免疫回避因子等があり, その遺伝子の多くは外来性に獲得され, その機能により多様な疾患の病態形成にかかわることが知られている1)。この稿では, 臨床との関連性で病態形成に重要と考えられる主な病原因子について述べる。
MRSAの遺伝学的分類法で主に用いられるのは, multi-locus sequence typing(MLST), staphylococcal cassette chromosome mec(SCCmec)typingおよびspa typingである。これらに病原因子や薬剤耐性因子を加えて菌株の遺伝学的特徴を表現する。SCCmecは現時点で15種類が国際ワーキンググループ(IWG-SCC)により認められている1)。日本の臨床検体から検出されるMRSAはSCCmecⅠ-Ⅴまでがほとんどである。
厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業(Japan Nosocomial Infections Surveillance: JANIS)には, 検査部門, 全入院患者部門, 手術部位感染部門, 集中治療室部門, および新生児集中治療室部門の5部門があり, 検査部門と全入院患者部門は薬剤耐性菌のサーベイランスである。
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus: MRSA)は, 院内感染を起こす代表的な耐性菌である。厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業(JANIS)検査部門2020年年報のデータでは, 依然としてMRSAは院内で分離される耐性菌として最も分離頻度が高い1)。