国立感染症研究所

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デング熱報告例に関する記述疫学(更新)(2014年1~12月)

(掲載日 2015/2/13)

感染症発生動向調査システム(NESID)に報告されたデング熱症例について、2014年1月~9月までの報告例に関しては、2014年11月号(IASR 35: 276-278, 2014)で報告したところである。今回は、2014年1月~12月(疫学週第1週~第52週)の1年分の報告例について、データの更新情報としてまとめた。

デング熱症例は計340例、うち国内感染例(以下、国内例)は162例(前回より+13例)、国外感染例(以下、国外例)は178例(同+35例)であった。

2014年第1~52週に診断され報告された340例のうち、発症日不明の14例を除いた326例の発症日は2014年1週~2014年52週であり、発症週別の流行曲線(図1)では、国内例で最も早い症例は第32週に発症しており、最も多い症例が発症した週は第35週(44例)、続いて第36週(41例)であった。最も遅い発症は第43週(10月下旬)であった。国外例は1年を通じて報告されているが、最も多い週は第37週(9例)、続いて第34週(8例)、第39週(8例)であった。

感染推定地域は、国内例162例中、東京都が159例(98%)で、千葉県1例、兵庫県1例、都道府県不明1例であった。報告自治体については、前回の報告から1つ増え19都道府県となったが、報告例の多い自治体に関しては、前回と同様であった。一方、国外例の推定感染国は、178例の92%にあたる164例においてアジアの国が報告されており、報告例の多い順にインドネシア53例(30%)、フィリピン32例(18%)、マレーシア28例(16%)、タイ22例(12%)であった。

年齢・性別は前回の報告と大きな変化はなく、国内例の年齢中央値は27歳〔四分位範囲(IQR)20-44.3〕、男性が95例(59%)。国外例では年齢中央値は32.5歳(IQR 22-44)、男性が111例(62%)で、10代以下を除いたすべての年代で男性が多い傾向があった。

報告された臨床・検査所見を表1に示す。病型は国内例ではデング熱161例(99%)、デング出血熱1例(1%)で、国外例ではデング熱170例(96%)、デング出血熱8例(4%)であった。臨床所見は国内・国外例ともにほぼ全例に発熱を認め、頭痛、発疹の頻度も高かった。国内例のデング出血熱はショック症状がなく、2009年WHOガイドラインにある重症デングではなかった。これに対し、国外例のデング出血熱8例のうちには、ショックを伴う重症デング症例が2例認められた。両群において届出時点での死亡例はなかった。

診断方法に関しては、国内例では多くの症例で非構造蛋白抗原(NS1)の検出(75%)で診断されており、国外例では、52%がPCR法による遺伝子の検出、50%がNS1で診断されていた(重複あり)。血清型が報告された症例は、国内例73例で、全例が1型、国外例は76例で、うち1型が34例、2型が21例、3型が14例、4型が7例であった。

感染推定日から発病までの日数(潜伏期間)は、国外例、国内例ともに中央値は6日(IQRはそれぞれ、4-9、5-7)であった。最長の日数は、国外例、国内例でそれぞれ13日、14日であった。発症から初診までの日数の中央値(IQR)は、国外例、国内例それぞれ3日(2-5)、3日(1-5)、初診から診断までの日数の中央値(IQR)はそれぞれ2日(0-7)、2日(0-4)であった。

謝辞:感染症発生動向調査にご協力いただいている地方感染症情報センター、保健所、衛生研究所、医療機関に感謝申し上げます。

 
国立感染症研究所感染症疫学センター
  実地疫学専門家養成コース(FETP)
  ウイルス第一部
 

 

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