国立感染症研究所

台湾における初の鳥インフルエンザA(H7N9)確定輸入症例について

2013年4月24日
邦文要約:国立感染症研究所感染症疫学センター

 

 

2013年4月24日の夕方、中央疾病対策センター(CECC)は、発症前に中国江蘇省蘇州で働いていた台湾市民の53歳男性を、台湾初のH7N9鳥インフルエンザの輸入症例と確定した。患者は台湾に戻った3日後に発症した。鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスの感染は2013年4月24日に確定診断された。患者は現在重篤な状態にあり、陰圧隔離室で治療を受けている。

 

 

この症例は高血圧の既往歴のあるB型肝炎のキャリアであり、発病の前に江蘇省蘇州で働いており、以前より蘇州と台湾との間を定期的に行き来していた。3月28日から4月9日の間、症例は蘇州に渡航しており、4月9日に、上海から台湾に戻った。蘇州に滞在中、鳥や家禽への曝露はなく、加熱不十分な鶏肉や卵は食べていなかったとのことである。4月12日に、発熱、発汗、疲労にて発症したが、呼吸器症状や消化器症状はなかった。4月16日に、患者は高熱を呈し診療所を受診したところ、病院に転送となり、個室病室に入院した。4月16日にタミフルが投与された。4月18日に胸部X線で右下肺に間質性浸潤影を示した。4月19日夜に状態が悪化し、4月20日にはさらなる治療のために医療センターに移送された。その後呼吸不全により挿管され、集中治療室の陰圧隔離室に入室した。入院中、咽頭スワブ2検体が採取され、いずれも、リアルタイムRT-PCRで鳥インフルエンザ(H7N9)ウイルス陰性であった。4月22日、医療センターは、患者から喀痰検体を採取し、検体はインフルエンザA陽性となった。4月24日の朝、リアルタイムRT-PCRで、喀痰検体から鳥インフルエンザ(H7N9)ウイルスが検出された。4月24日の夕方、台湾の国立インフルエンザセンターは、その結果を確認し、ウイルスゲノムのシークエンスを完了した。

 

本稿執筆時点で、CECCは、調査とフォローアップのために、濃厚接触者3人、通常の接触者26人(7日間の潜伏期間を過ぎている)、医療従事者110人を含む、患者と接触した139人のリストを入手した。110人の医療従事者のうち、4人は7日間の潜伏期間を過ぎており、症状を示さなかった。3人のみについては、患者との接触時に適切な個人保護具を使用していなかった。これまでのところ、その3人に症状は出ていないが、2013年4月27日まで経過観察が行われる。一方、医療サービスを提供している間、適切な個人用保護具を使用していた3人の医療従事者が上気道感染症の症状を呈した。公衆衛生当局は全員の接触者に対し徹底した健康教育を行い、「H7N9インフルエンザに対する自己健康管理のアドバイス」を配布した。公衆衛生当局は、自発的な接触者追跡の期間が解除されるまで綿密にフォローアップする。接触者が発熱や咳などのインフルエンザ様症状を呈した時は、公衆衛生当局は、医療機関に受診するよう支援する。

 

CECCは、中国、特に、上海市、江蘇省、浙江省、安徽省、北京市、河南省、山東省を含む、鳥インフルエンザ(H7N9)のヒトへの感染の継続なアウトブレイクが起きている地域からの旅行者のサーベイランスと発熱スクリーニングの強化を続けている。医師に対し、関係規則に従って、疑われる症例を発見した場合24時間以内に衛生当局に報告するようリマインドしている。確定診断がなされる前の、患者の管理は以下のとおりである。

  • 重度の呼吸器感染症のある疑い症例の患者は、治療のため隔離して入院させる。
  • 症状の軽い疑い症例の患者は自己健康管理を行い、外科用マスクを付け、徹底した衛生教育を受けるよう要請する。
  • さらに、検査診断のため患者から検体を採取し、抗ウイルス薬の投与について検討する。

もし、鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスのヒトへの感染が後に確認された場合には、隔離と治療のために適切な病院がCECCの地域担当者によって決定される。

 

CECCは、再度、中国を訪れる旅行者に、頻繁な手洗い、マスクの着用、家禽や鳥やその排泄物への直接な接触を避ける、生きた家禽を扱う伝統的な市場を訪れることを避ける、完全に調理された家禽や卵を消費するなどの予防策を取るなどの良好な個人衛生を実践することを要請している。もし台湾に戻ってから発熱や咳などの症状が認められる場合は、外科用マスクを装着し、速やかに医師の診察を受けること、また、診断と治療を容易に促進するため、最近の渡航歴を医師に伝えることの必要性を広報している。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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