国立感染症研究所

成田空港内勤務者からのD8型麻疹ウイルスの検出と家族内感染―千葉県

 
(Vol. 33 p. 32-33: 2012年2月号)

2011年12月末に成田空港内勤務の患者からD8型麻疹ウイルス遺伝子を検出し、続いて2012年1月に症例の妹が発症し、同様にD8型麻疹ウイルス遺伝子を検出したので報告する。

患者は、成田空港内に勤務する22歳の女性であり、発症前1カ月間に海外渡航歴は無い。12月16日、鼻水、くしゃみ等がみられ、18日には38℃の発熱があり、19日に医療機関を受診した。初診時、麻疹は否定的であったが、いったん解熱後の20日夜に発疹が顔に出現し22日には全身に広がった。最高体温は39℃になり、その後も発熱は持続し、コプリック斑も確認されたことから24日に麻疹と診断された。患者に麻疹の既往は無く、ワクチン接種も第1期接種時に体調不良であったため接種していなかった。また、高校3年時の第4期も未接種であった。

検体は、26日に咽頭ぬぐい液、血液、尿が採取され、すべての検体から麻疹ウイルス遺伝子が検出された。

続いて発症した妹は、17歳の高校2年生で、第1期のワクチン接種済みであったが、第4期ワクチンを次年度に控え、2回目のワクチン未接種であった。1月3日に38.2℃の発熱、いったん解熱後、5日に額および腕に発疹が出現し6日に首に広がった。コプリック斑、咳、鼻水等なく軽症で経過した。

検体は、6日に咽頭ぬぐい液、血液、尿が採取され、すべての検体から麻疹ウイルス遺伝子が検出された。

検査は千葉県衛生研究所で実施した。NおよびH遺伝子に対するRT-nested PCRを実施し、検出されたN遺伝子の増幅産物について、ダイレクトシークエンスにより塩基配列を決定した。2名の塩基配列(492bp)は同一であり、決定した塩基配列の一部(456bp)について系統樹解析を実施したところ、遺伝子型D8に分類された(図1)。また、DDBJのBLAST検索の結果、MVs/Alberta.CAN/34.11/[D8]、 MVs/Dartford.GBR/4.11/[D8]等と100%の相同性を示した。

患者発生に伴う、家族および勤務先、学校に対する対応は、管轄健康福祉センターにおいて速やかに行われ、1月20日現在、2名の他に患者の発生は確認されていない。特に、妹の通う高校では、部活動で発疹出現直前に接触した4名について、接触後3日以内の緊急接種ということで、第4期の麻疹ワクチン接種の前倒しが行われ、3名が接種している。

今回の感染例は、姉については、麻疹未罹患およびワクチン未接種であったこと、成田空港という海外に開かれた場所での感染であること、妹については、高校3年時の第4期2回目のワクチン接種を次年度に控えての感染・発症というワクチン接種計画の隙間をついての患者発生であった。改めて予防接種の重要性を強調する事例であった。

千葉県衛生研究所 小川知子 堀田千恵美 小倉 惇 福嶋得忍
千葉県香取健康福祉センター 久保木知子
千葉県印旛健康福祉センター 小山早苗

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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