国立感染症研究所

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 1.はじめに

 生物は,どのようにしてそのダイナミックな秩序を生み出して維持しているのでしょうか?そのためには少なくとも、あるべき物を,あるべき時に、あるべき場所へ配置するシステムが備わっていなければならないはずです。このシステムの成り立ちを分子レベルで明らかにすることこそが現代生物学の主流であると私は思っています。

 物質代謝という古典的とみなされがちな研究分野でさえ、上に提起した問題はじゅうぶん解き明かされているわけではありません。とくに「場所」の問題は,細胞内のようなミクロな場に対しての良い解析手段が限られていることもあり、多くのことが未解明です。

 

 ヒトからカビにいたるまで、よく目にする生物のほとんどは、染色体chromosomeをしまっている核nucleusとよばれる構造をもつので、真核生物eukaryotesに分類されます。真核生物の細胞には、核以外にも膜で囲まれたさまざまな細胞内小器官(オルガネラorganelle)が存在します。真核細胞においては、小胞体endoplasmic reticulumが脂質合成の最重要拠点であり、小胞体で合成されたさまざまな脂質は、それぞれにことなるオルガネラへと移動しています。膜タンパク質が小胞体から別のオルガネラへ移動するときには、もっぱら輸送小胞transport vesiclesとよばれる小さな膜の包みに乗って動くことがよく知られている一方で、小胞体で合成された脂質は、輸送小胞を利用せずに目的地へと移動しているらしいことが指摘されていました。しかし、その実態はなかなかわからずにいました。

 

私たちは、この生物の基本的な問題に、独自のアプローチをもちいて長いあいだ取り組んできました。その成果として、脂質セラミドceramideが小胞体からゴルジ体Golgi apparatusへと選ばれて輸送されるときに重要な働きをする遺伝子とそのタンパク質産物を2003年に発見しました。これらの発見などが突破口となって、オルガネラ間の脂質選別輸送interorganelle lipid traffickingの研究もようやく分子メカニズムに迫れる時代に突入してきています。以下、私たちが行っている脂質選別輸送に関する研究のあゆみを詳しくご紹介します。 

 

2.細胞内の脂質選別輸送

 真核細胞における膜脂質の生合成では、ことなるオルガネラの膜でおきる複数の代謝ステップを経ることがしばしば必要となります。たとえば、小胞体で合成されるリン脂質phospholipidのひとつであるホスファチジルセリンphosphatidylserineは、ミトコンドリアmitochondriaへと移動し、そこで脱炭酸反応を受けて、もうひとつの主要な膜リン脂質であるホスファチジルエタノールアミンphosphatidylethanolamineへ変換されます(図1)[1]。

 

図1

 

また、生合成的には最終産物となっても、生産の場からほかの膜系へと移動することが、それぞれの脂質の働きに必要な場合もあります。たとえば、コレステロールcholesterolは、小胞体で合成されたのちに、おもに形質膜plasma membrane(細胞膜cell membraneともいう)へと速やかに移動して形質膜の機能をコントロールする役割をはたしています(図1)[1, 2]。

 

核という細胞内構造をもたない原核生物prokaryotesすなわち細菌は、細胞の表面にしか膜系がありません。細菌の表層envelopeは、通常、内膜と外膜とよばれる二つのリン脂質膜系から成り立っています。細菌では、脂質の生合成はもっぱら内膜でおきていますので、外膜形成のためには、内膜で合成された脂質が外膜に移らねばなりません。グラム陰性細菌Gram-negative bacteriaの表層構成因子であるリポ多糖lipopolysaccharidesも内膜で生合成されたのちに、最終目的地である外膜へと移動しています[3, 4]。

 

 では、どのようにして、特定のオルガネラ膜にあるさまざまな脂質のなかから特定の脂質を選びだしてほかのオルガネラ膜へと運んでいるのでしょうか?その様式として、図1の挿入図にあるような五つのメカニズムが推定されていましたが、実際にどのような様式で運ばれているのかは、どの種類の脂質をとってみても、また、どの種類の細胞をとってみてもほとんどわからないままでした。

 

当研究部では、哺乳動物細胞におけるスフィンゴ脂質sphingolipidの代謝と機能の研究を突然変異細胞株mutant cell linesを利用して進めています。そのなかで、セラミドが小胞体膜からゴルジ体膜へと選択的に運ばれる際に中心的な役割をするタンパク質をみいだしました。小胞体膜からゴルジ体へのセラミド輸送は、細胞内の脂質選別輸送のモデル系として、その研究成果が少しずつほかの研究分野へも波及するようになってきています。

 

3.スフィンゴ脂質の生合成経路とオルガネラ間の移動

 スフィンゴ脂質の生合成では、セリンパルミトイル転移酵素(serine palmitoyltransferase;SPT)が触媒するセリンとパルミトイル palmitoyl CoAとの縮合反応からはじまり、いくつかの反応を経てセラミドとなります(図2)[5, 6]。哺乳動物細胞においては、セラミドはさらにスフィンゴミエリンsphingomyelinもしくはグルコシルセラミドglucosylceramideへと変換され、グルコシルセラミドはさらに複雑なスフィンゴ糖脂質へと変換されます(図2)。この際、セラミド合成までは小胞体膜上の細胞質側の表面でおこりますが、 スフィンゴミエリンやスフィンゴ糖脂質の合成はゴルジ体でおこると考えられています。したがって、スフィンゴミエリン合成の際には、セラミドは小胞体からゴルジ体に移動しなければならないはずです(図1)。

 

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 図2

 

 なお、グルコシルセラミド合成でもセラミドのゴルジ体への移行が必要と考えられておりますが、グルコシルセラミド合成酵素glucosylceramide synthaseの一部分は小胞体にも分布しているという報告もあり[7, 8]、グルコシルセラミドの新合成が小胞体上でおこっている可能性もあります。その場合、グルコシルセラミドがさらに複雑なスフィンゴ糖脂質へと変換するために、グルコシルセラミド分子はゴルジ体に移動するはずです。グルコシルセラミドのおもな合成の場所、そこへのセラミドの分配やグルコシルセラミド分子が次の代謝の場へ移動するメカニズムは本稿を書いている2013年の時点でもよくわかっておりません。

 

4.細胞内セラミド輸送が欠損している突然変異細胞株

縞ミミズEisenia foetida(釣り餌やミミズコンポストの用途で使われる細いミミズです)の体腔液からもともとは血管収縮を誘導する作用のある物質として分離され、そののちに、細胞表面上のスフィンゴミエリンに結合して膜に孔をあける細胞溶解活性のあることが判明したタンパク質がライセニンlyseninです。ライセニンは、その精製と遺伝子クローニングから蛍光プローブをつけた誘導体作製にいたるまでおもな研究成果を日本の研究グループが挙げ世界に広がっています[9-12]。

1996年のはじめころ、梅田真郷先生(当時の所属は東京都臨床研、現在は京大院・教授)から、「スフィンゴミエリン結合能と細胞溶解活性があるタンパク質(その当時はeiseninという名でよばれていた)をみつけたが、スフィンゴミエリン分解活性があるかどうかを測定してほしい」との依頼をうけました。私たちにはスフィンゴミエリン分解酵素の活性測定系がありましたので、いただいたサンプルで測定したところ、そのような活性はありませんでした。このタンパクにさらすと、正常細胞は速やかに死滅しましたが、私たちで分離したスフィンゴ脂質全般の合成を失った変異細胞はすべて生き残ることを観察しました[13]。さらに、正常細胞であっても、精製したスフィンゴミエリン分解酵素で処理すれば、ライセニンに耐性となることもみつけました[13]。これらの観察から、ライセニンはスフィンゴミエリンを分解して細胞を殺すのではなく、膜に孔を開けて細胞を溶解させるpore-forming cytolysinの一種であり、膜に結合するにはスフィンゴミエリンが必要なのだということが確認できました。

そこで、「ライセニンで処理をしても生き残る」という簡便な選択方法によってスフィンゴミエリン代謝に異常がある新しい変異株を得られるのではなかろうかと期待し、チャイニーズハムスター卵巣から樹立された培養細胞であるCHO-K1細胞を親株として、ライセニン耐性を示す変異株を40 株ほど分離しました。その際に得た変異株の一つが、LY-A株と名付けた変異株です[13]。(章末の余談1も参照)

 

LY-A細胞では、 スフィンゴミエリンの新合成de novo synthesisの速度および含有量がともに低下しているものの、スフィンゴミエリン代謝に関する酵素活性には異常は認められず、脂質輸送の段階に欠損があるのではないかと疑われました。当時、小胞体からゴルジ体へとセラミドを輸送する活性を検出する実験手法はなかったため、以下のように自分たちで模索した検証方法によって、この疑問に答えました。

 ブレフェルジンA (brefeldin A, BFA)という薬剤で細胞を処理すると、小胞体とゴルジ体とが融合することが知られています。もし、小胞体とゴルジ体のあいだのセラミド輸送の異常によりスフィンゴミエリン合成が低下しているのなら、BFA処理で小胞体とゴルジ体を融合させてしまえば、スフィンゴミエリン合成の低下はもはやみられなくなるであろうと予測されます。実際にやってみるとこの予想とおりになり、BFA 処理後のスフィンゴミエリン合成はLY-A細胞と親株CHO-K1細胞とのあいだでほぼ等しくなりました[14]。この観察により、私たちは、LY-A細胞でもスフィンゴミエリンを合成する酵素はちゃんと機能しており、小胞体で合成されたセラミドがスフィンゴミエリンへ変換するゴルジ体へ移動するプロセスに異常がおきているらしいことを知ることができたわけです。このことをさらに別の実験でも検証しました。

 C5-DMB-セラミドは、蛍光団をもった人工のセラミド類似化合物です(図3)。細胞を低温でC5-DMB-セラミドにさらすと、この化合物は形質膜を通過し、細胞中のオルガネラ膜を蛍光標識します。この標識細胞を生理的な温度にもどすと、蛍光がゴルジ体領域に集まってくることが知られており、この現象は小胞体で合成された天然型セラミドがゴルジ体へと移動することを反映したものであろうと推定されていました[15]。親株とLY-A株でC5-DMB-セラミドをもちいたそのような実験を行うと、ゴルジ体領域への蛍光の集積がLY-A株では遅くなっていることが観察されました(図3)[14]。

 

図3

 

 これらの結果から、私たちは、セラミドの小胞体からゴルジ体への移行がLY-A株では欠損していると結論しました[14]。

 

5.セラミド選別輸送の再構成実験系の樹立

 ものごとをいちど分解してからそれを再構築してみることは、ものごとの仕組みを知るうえでとても有効です。細胞のなかでおきている脂質輸送という仕組みを知りたいのであれば、細胞を分解しつつも生細胞のなかでおきているその事象のすべてではないにせよその重要な一部分を再現できる実験系を編み出すことは、研究を飛躍させるためには是非とも越したい大きな関門であります。 

 

私たちは、小胞体からゴルジ体へのセラミド輸送を生細胞以外で観察できるようにすることに挑戦しました。そして、セラミド→スフィンゴミエリン変換の速度、温度依存性、そして親株CHO-K1細胞と変異株LY-A細胞との差といったさまざまな点において無傷の細胞で観察される事象をよく再現する再構成系reconstitution systemを樹立することができました[16]。

この実験系では、形質膜に小孔をあけて細胞質cytosolを抜いてしまった開孔細胞中で放射性同位体で標識された[3H]セラミドを合成させたのち、細胞質画分やATPを加えて、37℃で保温します(図4)。37℃で保温時の[3H]セラミドから[3H]スフィンゴミエリンへの変換が、小胞体-ゴルジ体間セラミド輸送の指標となります。

この再構成実験系において、セラミド→スフィンゴミエリン変換は細胞質の添加を必要としました。さらに、LY-A細胞の再構成では欠損しているセラミド→スフィンゴミエリン変換は、細胞質画分だけでも親株由来のものに交換すると回復することから(図4)、セラミド輸送にかかわる細胞質因子がLY-A細胞では欠損していることがわかりました[16]。スフィンゴミエリン合成酵素sphingomyelin synthase活性には、細胞質依存性はありませんでしたし、タンパク質の小胞体からゴルジ体への輸送はLY-A細胞でも正常であったので、LY-A細胞で欠損しているのは、セラミド輸送に特別に必要な遺伝子産物であると考えられました[14]。

 

 図4

 

自分たちで分離していた変異株LY-Aの存在が、この再構成実験系を樹立するうえでとても重要でした。私たちはもともと、「親株CKO-K1細胞と変異株LY-A細胞との差が再現できる」ということを再構成が成功したと判断する一番目の基準としておりました。よって、なにかしらのシグナルは検出できても、この基準に合わずに捨て去られた試作系もあります。そもそも、分子メカニズムがわかっていない生物学的事象の再構成などという不遜な企ては、適切な評価系がなければすぐにでも間違った道に迷い込んでしまうものなのです。私たちは、LY-A細胞のおかげで、自分たちが試作した実験系をそのつどに評価しながら信頼のおける再構成系へと到達することができたといえます。このセラミド選別輸送の再構成系は、そののちもいろいろな場面で活躍しています。

 

次いで、 LY-A株の欠損因子の同定を試みました(本当は、「次いで」ではありません。遺伝子クローニングは変異株がとれてまもない1998年中にはすでに挑戦しはじめており、再構成系の作製などと一緒に同時並行的に試行錯誤していたのが実状です)。

 

6.LY-A株を回復させる遺伝子cDNAのクローニング

6−1.回復株を選択するための条件さがし

 LY-A株と親株CHO-K1細胞との融合させた細胞におけるスフィンゴミエリン合成は、CHO-K1細胞のそれとほぼおなじでした。この観察の意味するところは、「LY-A細胞におきている遺伝子変異は正常な遺伝子とおなじ細胞中で共存した場合には、細胞が正常な性質を表すような変異である(このような変異を「劣性変異」とよびます)」ということです。であるのならば、LY-A細胞に正常型の遺伝子すべてをひとつずつLY-A細胞に発現させていけばどこかでLY-A細胞の欠損を回復させる遺伝子に行きつくはずです。それには、数万種類以上の遺伝子を導入したLY-A細胞集団から回復細胞をうまく選びだせるかどうかがキーポイントになります。しかし、ライセニン感受性にもどった細胞をライセニン処理したのちに選択するというやりかたでは、選択したい回復細胞をライセニン処理中に殺してしてしまい細胞を回収できないため使えません。私たちが前に進むには、「LY-A細胞は死滅させるが回復株は生き残る」という選択条件をあらたにみいだす必要がありました。

スフィンゴミエリンとコレステロールは、ともに形質膜におもに分布しています。そして、人工脂質膜をもちいた実験から、コレステロールはグリセロリン脂質glycerophospholipidsに比べてスフィンゴミエリンとより強い物理的相互作用をすることが知られていました。私たちは、コレステロール結合試薬・メチルシクロデキストリンmethyl-beta-cyclodextrinに細胞をさらした場合、LY-A細胞のようなスフィンゴミエリン含有量の低い細胞ほどコレステロールが速やかに失われて死滅することをみいだしました[17]。これで、LY-A細胞に外来遺伝子を導入したあとにメチルシクロデキストリン処理し、生き残った細胞から外来遺伝子を回収するという方向性でLY-A細胞で欠損している遺伝子を探しだす道が開けました。

 

実際には、効率的なレトロウイルスベクター系を利用するなどのさらなる工夫が必要でした。安定かつ効率的な遺伝子導入に使うことができるマウス欠損レトロウイルスにCHO細胞は感染しません。その受容体がないからです。そこで、当該ウイルスの受容体であるマウス・カチオニック・アミノ酸トランスポーター1(mouse cationic amino acid transporter 1; mCAT-1)をLY-A株に安定発現させたLY-A亜株を作製し、それにレトロウイルスベクター上に構築したヒトcDNAライブラリー(これは市販のものを利用しました)から調製したウイルス粒子を感染させるという方法へと切りかえるまで目的遺伝子にはたどり着けませんでした。このとき、東京大学医科学研究所の北村教授らによって開発されたレトロウイルス粒子生産用パッケージ細胞Plat-Eを使わせていただけたことは幸いでした。

 

6−2.LY-A株で欠損している遺伝子の同定

遺伝子導入の工夫とみいだした選択条件をもちいて、私たちはLY-A株の欠損を補う遺伝子cDNAをクローニングすることに成功しました[18]。本cDNAをLY-A株に導入すると、しらべた範囲内ですべての性質が親株CHO-K1細胞のレベルに回復しましたので、この遺伝子cDNAがコードするタンパク質はceramide traffickingにちなんでCERTと命名することにしました[18]。

LY-A細胞のCERT遺伝子にはアミノ酸変異をともなう一塩基置換変異が起こっており、この変異型CERT cDNAの導入ではLY-A細胞はちゃんと回復できないこともわかりました[18]。

 

LY-A細胞を見かけ上でも回復させるようなCERT以外の分子を見つけられないかと、上記のスクリーニングをCERT発見のあとも繰り返したのですが、もう一度CERT cDNAがクローニングされただけに終わりました。はからずもこのスクリーニング系の「再現性」を確認してしまったことになります。

 

6−3.CERTとおなじ遺伝子産物GPBPΔ26

CERTとアミノ酸配列がおなじ遺伝子産物は、Goodpasture-antigen binding protein (GPBP)のスプライス異性体splice variantであるGPBPΔ26という名ですでに知られていました。

グッドパスチャー症候群Goodpasture’s syndromeというのは腎臓や肺の基底膜に対する自己抗体ができて死にもいたる重篤な自己免疫疾患です。この自己免疫疾患の抗原すなわちグッドパスチャー抗原Goodpasture antigenは、ヒト・4型コラーゲン・アルファ第3アイソフォーム(Type 4, collagen alfa3; COL4A3)のカルボキシル末端にある非コラーゲン部分であることが知られています。このCOL4A3の非コラーゲン部分に結合してこれをリン酸化するタンパク質キナーゼとしてGPBPおよびGPBPΔ26(GPBPのエキソン一つ分の26アミノ酸がないスプライス異性体)をスペインのSaus博士らの研究グループが報告していたのです[19, 20]。(章末の余談2も参照)

 GPBPおよびGPBPΔ26は、グッドパスチャー症候群という病的な状態に関わるかもしれない細胞外キナーゼとして報告されていますが、通常のタンパク質キナーゼならもつようなキナーゼドメインがみあたりません[19, 20]。また、これらのタンパク質は、明瞭な分泌シグナル配列がなくて細胞質に多く分布するというのにもかかわらず、細胞外マトリックスであるコラーゲンに結合するということも不思議な観察であり、健常なヒトにおいては細胞内での役割が本業である可能性もありました。

私たちは、次の項で説明するように、このタンパク質の本来の役割は細胞内のセラミド輸送であることをみいだしたので、名が体をあらわすべくCERTという新しい名前をGPBPΔ26に与えました。GPBP(CERTのlarge variantということでCERTLと私たちはよんでいます)も、セラミド転移活性はCERTとおなじように観察されています[18]。(章末の余談3も参照)

 

なお、ヒトゲノム遺伝子として最初に登録された名称は、Collagen type 4 alfa 3-binding proteinとしてみつかったGPBPに由来するCOL4A3BPですので、CERT配列を各種生物ゲノムでホモロジー検索するとヒトCOL4A3BPホモログとして表示されます。セラミド輸送も注釈としてついておりますが。

その後、本遺伝子は、コラーゲン結合因子というよりもセラミド輸送タンパク質として様々な研究者に引用されました。その事情を察知したHuman Genome Organization (HUGO)のGene Momenclature Committee (HGNC)は、このヒト遺伝子の正式なシンボルをCERT1 に変更すると2019年6月に決定しました。それ以降、NBCI上での正式命名表示(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene?Db=gene&Cmd=DetailsSearch&Term=10087)も含めてCERT1へと変更されてきています。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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