国立感染症研究所

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2013年上半期に手足口病、ヘルパンギーナ患者検体から検出されたエンテロウイルスについて―高知県

(IASR Vol. 34 p. 263-264: 2013年9月号)

 

患者発生状況:高知県における定点当たりの手足口病患者報告数は、全国よりやや遅れて第25週から増加し始め、第28週に高知県での警報値5.0を超えて増加中である。またヘルパンギーナ患者報告数も同様に第25週から増加し始め、全国での定点当たりの報告数を大きく上回っている(図1)。

材料および方法:ウイルス分離・同定は、病原体定点で採取された検体(咽頭ぬぐい液等)を、FL、Vero、RD-18S、LLC-MK2細胞に接種した。37℃2週間培養後に継代を行い、2代目まで観察した。また遺伝子検査は、検体から市販のキットを用いてRNAを抽出し、逆転写後にエンテロウイルススクリーニング検査用のプライマー1)でPCRを行った。スクリーニング検査陽性であった検体についてCODEHOP PCR法2)によりVP1領域の遺伝子を増幅した。増幅産物を精製後、ダイレクトシーケンス法により塩基配列を決定し、BLAST検索を行った。さらにエンテロウイルスの遺伝子配列による型別分類webサービス(http://www.rivm.nl/mpf/enterovirus/typingtool#/)により血清型およびsubgenogroupの同定を行った。またエンテロウイルス71型(EV71)については、過去に高知県で検出された株も含めて、VP1領域の塩基配列(268bp)を用いて近隣結合法による系統樹解析を行った。

結果と考察:2013年第1週~第29週までに感染症発生動向調査の病原体定点から、手足口病患者の検体28検体が搬入され、遺伝子検査で24検体(85.7%)からエンテロウイルスが検出された。その内訳はEV71が16検体、コクサッキーウイルスA6型(CA6)が4検体、CA8が2検体、コクサッキーウイルスB5型(CB5)が1検体検出された(表1)。EV71のsubgenogroupは、B5に属していた(図2)。また培養細胞によりエンテロウイルスが分離された検体はなかった。

一方、ヘルパンギーナ患者の検体は26検体搬入され、遺伝子検査で19検体(73.1%)からエンテロウイルスが検出された。その内訳はCA8が16検体、CA6、CB5とEV71 subgenogroup B5が1検体ずつであった(表1)。また培養細胞によりエンテロウイルスが分離された検体はなかった。

2013年上半期、高知県内で手足口病患者から検出されたウイルスはEV71が中心であった。高知県では2010年以来EV71は検出されておらず、2年ぶりである。全国的には手足口病患者からCA6が多く検出されているが、高知県や北陸、中部地方ではEV71が多い(IASR 2013年7月23日作成)。また2007、2009、2010年に高知県で検出されたEV71のsubgenogroupはC2であったが、今回検出された株はB5であった(図2)。EV71は数年おきに流行を繰り返すことが知られているが、今後subgenogroupの変化と流行との関連について詳細な解析を行いたい。一方、ヘルパンギーナ患者から検出されたエンテロウイルスは、大部分がCA8であった。この中には、保育所のヘルパンギーナ集団発生の疑われた患者も含まれており、また無菌性髄膜炎患者からもCA8が検出されている。

いまだエンテロウイルスの流行のシーズン中であり、今後の動向に注意していきたい。

 

参考文献
1)谷脇 妙ら, 高知県衛生研究所報 54: 29-34, 2008
2)Nix WA, et al., J Clin Microbiol 44: 2698-2704, 2006

 

高知県衛生研究所      
    森光俊晴 谷脇 妙 松本一繁 竹村佐智 松本道明 安藤 徹
高知県食肉衛生検査所 細見卓司

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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