国立感染症研究所

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風疹含有ワクチン接種率調査
(2011年度最終結果と2012年度12月末の中間結果)

(IASR Vol. 34 p. 103-105: 2013年4月号)

 

2007年12月28日に告示された「麻しんに関する特定感染症予防指針」に基づき、麻疹とともに風疹についても対策を強化するため、2008年4月から、中学1年生(第3期)と高校3年生相当年齢の者(第4期)への2回目の麻疹および風疹含有ワクチンの接種が定期接種に導入された。期間は2008~2012年度の5年間で、2011年度は、高校3年生相当年齢に加えて高校2年生相当年齢も、学校から修学旅行等で海外に出かける場合には、前倒しで第4期の定期接種を受けられることになった。接種するワクチンは、風疹単抗原ワクチン、麻疹単抗原ワクチンのいずれも選択可能であるが、麻疹風疹混合ワクチン(以下、MRワクチン)の接種が原則である。

2012年12月14日に改訂告示され、2013年4月1日から施行の「麻しんに関する特定感染症予防指針」によると、第3期と第4期の定期接種は2012年度をもって終了する。特に第4期の接種率が低いため、現在の国内の風疹流行により、10代後半から20代前半の者も多く風疹を発症している。

麻疹対策の一環として、厚生労働省健康局結核感染症課では毎年3回、接種率調査を実施し、国立感染症研究所感染症疫学センターで集計・解析を行っている。2008~2011年度の接種率と、最終年度となる2012年度は中間評価である12月末の結果を集計した。

1)第1期(1歳児):2011年度、全国の接種率は95.3%であり、2010年度に続いて目標の95%以上を達成した。接種率95%以上を達成した都道府県の数は、2011年度は24都県となった。福島県は2011年に発生した東日本大震災の影響により、接種率の把握が困難であり、本結果は暫定値である(表1)。

2)第2期(小学校入学前1年間の幼児):導入6年目に当たる2011年度の第2期全国接種率は92.8%であり、前年度の92.2%より 0.6ポイント増加した。95%以上の接種率を達成していたのは12県であり(表1)、日本海側の県に多かった。80%台であったのは福島県、東京都、鹿児島県の3都県のみであった。第2期は保育所や幼稚園、入学予定の小学校で個別に接種を勧奨するなど、きめ細やかな啓発が重要と考える。

3)第3期(中学1年生):導入4年目である2011年度の第3期の全国接種率は88.2%であり、初年度の2008年度と比較して 3.0ポイント上昇した。95%以上を達成したのは、茨城県、栃木県、富山県の3県のみであった(表1)。また、茨城県と富山県は4年連続95%以上を達成した。第3期は自治体と学校の連携が極めて重要であり、未接種者への個別の積極的な接種勧奨が95%の目標達成には重要と考える。

4)第4期(高校3年生相当年齢の者、2011年度の高校2年生相当年齢を含む):導入4年目である2011年度の第4期の全国接種率は、4つの期の中では最も低い81.5%であったが、2008年度以降で初めて80%以上となった。95%以上を達成した都道府県はなかったが、秋田県、岩手県、山形県、新潟県、富山県、福井県、島根県で90%以上となった(表1)。東京都、神奈川県、大阪府では接種率が75%未満と低く、この3都府県は4年連続75%未満であり、感受性者が蓄積しており、現在の流行に繋がっていると考えられる。保健行政と教育部門が連携した上で、“顔の見える”接種勧奨をさらに強化することが必要不可欠であり、そのためには各学校におけるクラス担任や養護教諭の役割がなににも増して重要であると考える。

5)2008~2011年度の定期接種未接種者数:この4年間で、定期接種期間中に未接種であった者は年々減少傾向にあるものの、合計 2,247,786人であり、第4期が1,033,354人と最も多かった(図1)。期間内に未接種であった者は、気付いた時点ですぐに必要回数である2回の接種を受けることが重要である。この場合、定期接種として受けることはできない。

6)2012年度12月末の結果:2012年度12月末時点で、第2期は73.6%、第3期は73.0%、第4期は64.3%で、妊娠までの期間が最も短い第4期の接種率が極めて低かった。特に神奈川県は46.5%と低く、風疹の流行規模の大きい東京都も54.0%の低い接種率であった。埼玉県、大阪府、兵庫県、京都府、福岡県でも50%台の低い接種率であり、2013年3月末までに未接種者の多くが接種を完了していることが望まれる(表2)。

(1)年齢が高くなるにつれて接種率が低下する、(2)大都市圏において特に第4期の接種率が低い、(3)接種率の高い都道府県と低い都道府県が固定化されつつある、という3つの傾向は2011年度も変わらずみられていたが、2008年度と比較すると、全体的に接種率は上昇している。12月末の中間評価では第2期の接種率が最も高かった。2012年度で第3期・第4期は終了するが、未接種者が蓄積したままだと、この年齢層での風疹の発症者は減少しない。2012~2013年の風疹流行では第4期対象者から多くの患者が報告されている。第4期は近い将来の妊娠も視野に入れた麻疹と風疹の予防啓発が必要である。

厚生労働省のホームページ(2013年3月現在URL :http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou21/hashika.html)には、厚生労働科学研究費(岡部班)で実施した2007年度の第2期の接種率調査を含めて、2012年度12月末までの接種率が公表されているので、各市区町村における接種率向上に向けた取り組みに活用して欲しい。

 

国立感染症研究所感染症疫学センター 多屋馨子 佐藤 弘 大石和徳

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