国立感染症研究所

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新潟県の感染症サーベイランスにおけるロタウイルスの検出状況、2011~2013年

(IASR Vol. 35 p. 70-71: 2014年3月号)

 

2005~2010年の間の、新潟県におけるA群ロタウイルス(RVA)の検出状況について、IASRに報告した(IASR 32: 73-74, 2011)。その後のロタウイルスの検出状況を追加して報告する。

2006~ 2013年までの年ごとのロタウイルスの検出状況を図1に示した。RVAのG型別では、2009年、2010年とG3の占める割合が多かったが、2011年に減少し、2012年には検出されなくなった。数年継続したG3型 RVAの流行の終息ともとれる。2012年はG3の減少に代わり、G9とG2が増加したが、2013年はG1が16検体中13検体(81.2%)を占め、医療機関との共同研究で実施している1地域における調査でもG1が多かった。このG1株の遺伝子11分節の型はG1-P[8]-I2-R2-C2-M2-A2-N2-T2-E2-H2とVP7遺伝子(G1)とVP4遺伝子(P[8])以外すべてDS-1株(G2P[4])類似の型となっており、Kuzuyaらの報告しているOH3625/2012株とVP6、VP7、NSP4遺伝子の塩基配列が一致した。VP7遺伝子とVP6遺伝子の系統樹の比較を例示した(図2)。このDS-1株類似のG1P[8]株は新潟県でも2012年から検出されている。

新潟県の感染症発生動向調査では、例年、第15~22週(4~5月)にかけて、12月のノロウイルスによる感染性胃腸炎流行のピークとは別の流行期があり、ロタウイルス胃腸炎の動向を反映していると考えられる。2013年は、第17週、第20週で定点当たり患者数が17を超え、例年よりピーク時の患者報告数が多かった。2013年の患者報告数の増加は、新しいDS-1様のG1P[8]株の影響も考えられることから、今後この株の動向に注目したい。

2012年と2013年の新潟県の病原体サーベイランスの検体中におけるロタウイルスワクチン接種の有無とロタウイルスの検出状況を、表1にまとめた。ロタウイルスワクチンの接種を受けていてロタウイルスが検出された胃腸炎患者は26人中1人(3.8%)であった。この患者は、単価ワクチンであるロタリックスを2011年12月26日に初回、2012年1月24日に2回目の接種を受けていた。2012年5月16日に胃腸炎症状を発症し、5月18日に採取された患者便からロタウイルスが検出された。ロタウイルスの遺伝子型は、G2-P[4]-I2であった。一方、ワクチン接種を受けておらずロタウイルスが検出された胃腸炎患者は154人中33人(21.4%)であった。このデータからも、ロタウイルスワクチンは感染予防に有効と考えられるが、接種者でも少数の感染事例があるようだ。

ロタウイルスの入院サーベイランスが始まり、今春が初めてのロタウイルスの流行期となる。提示した症例のように、ロタウイルスワクチン接種者や入院重症例から検出されるロタウイルスの遺伝子型は、ワクチンの評価のために重要となる。病原体検査票のワクチン接種歴の記録も今後徹底が望まれる。

 

参考文献
1) Kuzuya M, et al., J Med Virol, 2013 Sep 16. doi: 10.1002/jmv.23746 (Epub ahead of print)

 

新潟県保健環境科学研究所ウイルス科 田村 務 加藤美和子 広川智香 田澤 崇 渡部 香        
原こども医院 院長 原 錬太郎        
新潟大学医歯学総合病院小児科 助教 大石智洋

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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