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2013/14シーズンにおけるインフルエンザウイルスの流行―沖縄県

(IASR Vol. 35 p. 262-263: 2014年11月号)

沖縄県では、近年、一年を通してインフルエンザ患者の発生が報告されている(IASR 33: 242, 2012)。2013/14シーズンは、冬季(1~3月)に警報レベルの流行が長期間継続し、過去10シーズンで初めてAH1pdm09、AH3亜型、B型ビクトリア系統および山形系統の4種類のインフルエンザウイルスによる混合流行が認められたことから、その概要を報告する。

患者発生状況
今シーズンの本県におけるインフルエンザ流行は、2014年第3週(1/13~1/19)に定点当たり患者報告数36.74人と警報レベルに達し、第5週(1/27~2/2)には定点当たり68.98人でピークとなった。その後、第14週(3/31~4/6)まで12週にわたって警報レベルが継続した(図1)。過去10シーズンにおいてピークは3番目に高く、警報レベルの流行はAH1pdm09が流行した2009/10シーズンの次に長期間継続した。その後、全国では第20週(5/12~5/18)に定点当たり1.0人を下回り、第32週(8/4~8/10)現在まで定点当たり0.02~0.83人の範囲で推移したのに対し、本県では第20~32週にかけて定点当たり0.72~8.05人と、全国よりも高い範囲で推移した(図1)。年齢階級別の患者報告数では、シーズン開始当初(9~12月)、1~4歳、5~9歳、10~14歳および20~30代がそれぞれ全体の12~15%とほぼ同じ割合を占め、幅広い世代で流行がみられた(図2)。冬季(1~3月)は、1~4歳と5~9歳が最も多く、それぞれ全体の19%を占め、その後4~8月は、5~9歳が最も多く全体の24%、次に10~14歳が多く全体の21%を占めており、時期によって流行の中心となる年齢群が異なっていた(図2)。一方、全国ではいずれの時期においても5~9歳が突出して多く、続いて1~4歳と10~14歳が多かった。

病原体検出状況
患者から採取された咽頭ぬぐい液を検査材料とし、リアルタイムPCR法によるインフルエンザウイルスの遺伝子検出およびMDCK細胞によるウイルス分離を実施した。

シーズン開始当初(9~12月)はAH3亜型が18例、B型山形系統が3例検出され、AH3亜型が主流であったが、冬季流行時(1~3月)にはAH3亜型が33例、AH1pdm09が30例、B型ビクトリア系統が5例、B型山形系統が4例検出され、混合流行が認められた(図1)。しかし、その後4~8月にはAH3亜型が1例、AH1pdm09が 1例、B型山形系統が16例検出され、B型山形系統が主流となった(図1)。今シーズンのビクトリア系統と山形系統の検出割合は1:4であった。

抗インフルエンザ薬耐性株サーベイランスにおいては、今シーズン検出された30例のAH1pdm09についてH275Yオセルタミビル耐性マーカーの有無を検索したところ、すべての株が感受性を示した。

まとめ
今シーズンは、AH1pdm09、AH3亜型、B型ビクトリア系統および山形系統の4種類のインフルエンザウイルスが検出され、警報レベルの流行が12週間継続したことが特徴であった(図1)。本県では過去10シーズンにおいて、AH1pdm09(2009年以前はAH1亜型)、AH3亜型、B型単一系統の3種類のインフルエンザウイルスによる混合流行の報告はあるが(IASR 29: 309-310, 200832: 169-170, 2011)、4種類の混合流行は今シーズンが初めてである。冬季に4種類のインフルエンザウイルスが入れ替わり流行したことが、警報レベルの流行を長期化させた要因のひとつと考えられた。

また、2010/11シーズン以前、B型は冬季流行後の春先から夏にかけて検出されることが多かったが(IASR 27: 304-305, 200628: 322-323, 200731: 297, 201032: 169-170, 2011)、近年は冬季流行時にも検出されており(IASR 33: 242, 2012)、今シーズンも同様の特徴を示した(図1)。

このように、近年は一年を通して複数のインフルエンザウイルスが同時に流行する傾向にあり、また、時期により流行の中心となる患者の年齢群も様々であることから(図2)、年間を通してウイルス検出状況および患者発生状況の変遷に注視することが重要である。

さらに、今シーズンは2010/11シーズン以来3シーズンぶりにAH1pdm09による流行が認められた。本県では、検出されたAH1pdm09について、H275Yオセルタミビル耐性株は検出されなかった。しかし、全国では8月11日時点でノイラミニダーゼ(NA)阻害剤耐性A(H1N1)pdm09ウイルスの検出率が4.2%と過去5シーズンで最も高く(http://www.niid.go.jp/niid/ja/influ-resist.html)、さらにH275Y耐性変異に加えI223R耐性変異をもつNA阻害剤耐性A(H1N1)pdm09ウイルスが検出されていることから(IASR 35: 176-177, 2014)、今後も引き続きウイルスの発生動向とともに、抗インフルエンザ薬耐性ウイルスの検出状況にも注視する必要がある。

 
沖縄県衛生環境研究所
  久場由真仁 喜屋武向子 髙良武俊 新垣絵理 加藤峰史 岡野 祥 久高 潤   
沖縄県感染症情報センター 新垣あや子   
沖縄県保健医療部健康長寿課 平良勝也 大野 惇
 

 

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