国立感染症研究所

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麻疹の流行調査におけるウイルス遺伝子型の重要な役割、2011年―ノルウェー

(IASR Vol. 34 p. 45: 2013年2月号)

 

麻疹の排除を達成しつつある国では特に、麻疹の流行に際して、遺伝子型を調べて実験室で感染経路を同定することが有用である。

ノルウェーでは麻疹の流行(アウトブレイク)は2例以上の感染が18日以内に発生し、疫学的に関連し、かつ同じウイルスによって引き起こされたものを指す。検体はノルウェー公衆衛生研究所(NIPH)でELISAで抗麻疹IgMとIgGを検査するか、EIAでIgMを検査する。IgM陽性で感染と診断され、判定不能例ではseroconversionを確認するため追加で検体を得る。IgGの親和性はWHOのレファレンスラボであるドイツのロベルト・コッホ研究所で行い、40%以下で低値、40~60%で境界型、65%以上で高値と判断する。ウイルスRNAはPCR陽性の場合に配列を同定し、最尤法で系統樹を作成する。

2011年にノルウェーで報告された39人の麻疹のうち33人が検査陽性(7カ月~10歳の小児でほとんどはワクチン未接種)だった。時系列に沿った遺伝子型ごとの発生状況は図1の通り。これらは8件の輸入事例であり、4件のアウトブレイク事例と4件の単発事例であったことが分かった。二次感染を起こしてアウトブレイクとなった遺伝子型はB3、D4、D9であり、単発例はB3(二つの変異型)とD8であった。もっとも規模が大きかった流行は18例を巻き込んだ事例で、2011年1月19日に最初の症例が報告されてから第12週まで流行した。最初の確定例は2歳未満のワクチン未接種のソマリア系移民の児で、インデックスケースはその親戚でエチオピアからの訪問者と考えられたが、調査の対象には含まれていない。流行の最初の週に、オスロ市内の同じ地域に住むソマリア移民のワクチン未接種の子供の間で麻疹が広がっていった。対策として、症例と接触し、ワクチンが未接種の者にはMMRワクチンが無償で提供され、ソマリアの現地語でも口頭および書面での説明が行われた。ソマリア移民の感染例は8人だったのに対し、ノルウェー人は10人感染し(小児6、成人4)、いずれも医療機関内での感染だった。待合室でノルウェー人の小児5人が感染し、成人は全員が医療従事者だった。対策として、小児病棟のすべての医療従事者にブースターのためのMMRワクチン接種が行われた。成人のうち2人は十分なワクチン接種歴があり、Vaccine Failureと考えられた。

(Euro Surveill. 2012; 17(50): pii=20340)

 

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