国立感染症研究所

 

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2016年9~11月のノロウイルス感染集団発生事例について―千葉市

(掲載日 2016/12/21) (IASR Vol. 38 p.18-19: 2017年1月号)

千葉市では2016年9~11月にノロウイルス(NoV)GII.2による感染性胃腸炎の集団発生事例が多発したので、その概要について報告する。

2016年9~11月、千葉市で発生したヒト-ヒト伝播(疑い)による感染性胃腸炎の集団発生(発症者がおおむね10名以上の事例)は22事例であり、例年の同時期に比較し、本疾患の集団発生が多発している(過去3シーズンは各1事例ずつのみ)。22事例の月別発生状況は、9月に2事例、10月に5事例、11月に15事例であり、症状は嘔吐、下痢が主体であった。発生場所は保育所が最も多く16事例、次いで小学校5事例、老人施設1事例であった。これらの施設は千葉市内全6区にわたり、各区2~6事例発生しており、時期的な偏りはなかった。

当市保健所が胃腸炎集団発生の状況を調査し、その原因究明のために当所でウイルス検査を実施した。各事例の発症者2~5名について、リアルタイムRT-PCR法によるウイルス遺伝子検査を実施したところ、すべての事例からNoV GIIが検出された。また、NoV GIIが不検出であった発症者6名(保育所3事例)からサポウイルスが検出された。

さらに、NoV GIIが検出された検体のうち各事例1~2検体について、COG2F/G2-SKRプライマーによるPCR産物(Capsid領域278塩基)をダイレクトシークエンス法により塩基配列を決定し、近隣結合法による系統樹解析を実施した。その結果、NoVの遺伝子型は21事例がGII.2、保育所1事例がGII.3であった(図1)。21事例のGII.2の解析部位の塩基配列は類似しており、99.2~100%一致した。このことから、今シーズン(2016/17)9~11月の感染性胃腸炎の集団発生の増加は、保育所を中心としたGII.2の流行によることが判明した。

過去3シーズンの感染性胃腸炎集団発生において、GII.2は2014/15シーズンに1事例から検出された。このGII.2株についても併せて近隣結合法による系統樹解析を実施したところ、今シーズンのGII.2株とクラスターは分かれ、系統が異なることが確認された(図1)。

今シーズンの9~11月は、病原体定点の感染性胃腸炎患者および有症苦情事例からもGII.2が検出されている。これらの株も今回の集団発生事例のGII.2と同じクラスターであることから、当市内において遺伝学的に類似したGII.2の流行が生じていたことが示唆された。

NoV感染集団発生は、例年、12月頃にピークを迎える1)。今回のGII.2株はその前に短期間で保育所間に感染が広がり集団発生が多発したことから、本格的な流行時期に入ってからのさらなる感染拡大が懸念される。また、今シーズンのGII.2の流行については宮城県からも報告されている2)。したがって、2016/17シーズンはGII.2がNoVの流行の主流になることが予想され、今後のGII.2の発生動向に注視する必要がある。

謝辞:本稿を作成するにあたり、資料の提供をいただいた千葉市保健所感染症対策課の方々に深謝いたします。

 

参考文献
  1. IASR ノロウイルス等検出状況  
    http://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-noro.html
  2. IASR 宮城県内で流行しているノロウイルス(NoV)の遺伝子型について 
    http://www.niid.go.jp/niid/ja/norovirus-m/ norovirus-iasrs/6921-443p03.html

千葉市環境保健研究所
 坂本美砂子 山﨑恵美 西川和佳子 三枝真奈美 都竹豊茂 山本一重

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