注目すべき感染症
◆ 麻しん 2013年第48~52週の輸入例の増加
麻しんの2013年第1~52週(2012年12月31日~2013年12月29日に診断されたもの)の累積報告数は232例であり(麻しん速報グラフ第52週:https://www0.niid.go.jp/niid/idsc/idwr/diseases/measles/2013measles/meas13-52.pdf )、昨年同時期の約80%である。2013年の麻しんウイルスの遺伝子型は42例で報告されている。詳細は「麻疹ウイルス分離・検出状況:http://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-measles.html」などを参考にしていただきたい。
2013年第48~52週(11月25日~12月29日)に診断された麻しん(2014年1月9日現在)は21例であり、前年同時期の12例よりも増加した。男性12例、女性9例であり、平均年齢は19.9歳(中央値17歳、0~55歳)であった。遺伝子型別が判明したものが6例含まれ、いずれもB3型であった(図)。
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図. 麻しんの感染地域別・遺伝子型別・発症日別報告数(2013年11月16日~12月31日) |
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この間の都道府県別の報告数は京都府5例、東京都4例、神奈川県2例、愛知県2例、岡山県2例、岐阜県、静岡県、三重県、兵庫県、広島県、福岡県がそれぞれ1例であった。感染地域は国内が13例(62%)であり、国外が8例(38%:フィリピン3例、スリランカ2例、グアム1例、インド1例、オーストラリア1例)と報告された。ワクチン接種歴別報告数では、21例中接種歴のない、または不明の症例が14例(67%)と過半数を占めた。
2013年末の発生動向で特記すべきこととして、輸入例の増加が挙げられる。感染地として海外が推定されていた症例の、2013年第1~47週の週当たり平均報告数は0.32例であったが、第48~52週では1.6例に増加した。
麻しんは、年齢にかかわらず命に関わる重篤な感染症である。また、特異的な治療法はないものの、予防接種で予防可能な感染症である。我が国は2012年までの麻しん排除を国としての目標に掲げ、2007~2008年頃の10代を中心とする患者発生の状況から約97%の減少を達成し、2015年の麻しん排除認定の取得を次の目標としている。今後も輸入例の動向を注意深く監視すると共に、輸入例からの国内二次感染等に対する警戒が重要である。そのためには、「一例出たらすぐ対応」の原則に則った迅速な疫学調査の実施が鍵であるとともに、感受性者、特に定期接種(1歳、小学校就学前1年間)対象者における麻しん含有ワクチン(原則として麻しん風しん混合ワクチン)接種の徹底が必要である。
麻しんのこれまでの発生状況や疾患の説明は、http://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ma/measles.html をご参照ください。
国立感染症研究所感染症疫学センター 高橋琢理 砂川富正 木下一美 加納和彦 伊東宏明 中島一敏 新井 智 佐藤 弘 多屋馨子 大石和徳
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