国立感染症研究所

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米国で重症熱性疾患から分離された新種のフレボウイルス

(IASR Vol. 34 p. 41: 2013年2月号)

 

2009年に原因不明の高熱(39℃以上)、血小板減少、白血球減少、肝機能障害等を呈したミズーリ州の患者2名の検体から、2012年に米国CDCが新種のフレボウイルス(ブニヤウイルス科)を分離同定した。分離は患者の白血球をイヌマクロファージ由来DH82細胞と共培養により行われた。このウイルスはHeartlandウイルスと命名され、ウイルス遺伝子の解析から、2011年に中国CDCにより発熱を伴う血小板減少症候群(severe fever with thrombocytopenia syndrome, SFTS)の原因ウイルスとして同定されたSFTSウイルスと近縁なウイルスであることが分かった。血清学的にも両ウイルスは交差する。SFTSウイルスの宿主であるHaemaphysalis longicornis(フタトゲチマダニ)は米国には分布していない。米国で広く分布するAmblyomma americanum(キララマダニ属のダニ)を中心に調査されたが、Heartlandウイルスはこれまで検出されていない。患者の症状もSFTSに類似するが、2名とも回復しているため、一人の患者の骨髄生検の免疫組織学的解析のみ実施されている。骨髄の巨大単核球細胞の細胞質にウイルス抗原が検出されている。この2年間に発見された新種のフレボウイルスに近縁なダニ由来フレボウイルスが、米国・中国以外にも存在する可能性があることから、今後これらに近縁なウイルスによる新興感染症が発生する可能性がある。

 

参考文献
McMullan LK, et al., N Engl J Med 367: 834-841, 2012

 

国立感染症研究所獣医科学部 森川 茂

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