国立感染症研究所

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三重県で発生したクドアを原因とする集団食中毒事例

(IASR Vol. 33 p. 150: 2012年6月号)

 

2011(平成23)年6月17日付け食安発0617第3号厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知で、Kudoa seputempunctata を食中毒の原因寄生虫として取り扱うこととなったが、平成23年9月にこれを原因とする中規模の一過性食中毒事例を経験したので、その概要を報告する。

概 要
9月9日に市内消防本部から、市内の企業研修会に出席した複数名が食中毒様症状を呈し、医療機関に搬送した旨の連絡を受けた。調査を進めたところ、8日の夕食である仕出し弁当を食べた358名中94名が同様の症状を呈していることが判明した。

患者の状況および症状は表1のとおりである。潜伏時間は0.5~27時間(平均6.0時間)で、4~8時間をピークとする一峰性であった(図1)。また、喫食状況分析からは原因食品と考えられるものは特定できなかった。

原 因
仕出し弁当の保存食や研修会で提供された飲料、飲食店でのふきとり、飲食店従業員便や患者便について、原因と考えられる食中毒細菌やウイルスは検出されなかった。

一方、K. seputempunctata については、当初保存食のヒラメの刺身を鏡検で検索したが検出できなかった。さらにリアルタイムPCR検査でDNAが検出されたものの、増幅曲線から算出した数は定量限界以下であった。改めて鏡検したところ、6~7個の極嚢を有するクドア属の粘液胞子虫が確認されたため、国立医薬品食品衛生研究所へ問い合わせて陽性との判断をし、原因食品および原因物質を確定した。

遡り調査他
原因となったヒラメは韓国済州島で養殖され、輸入業者を通して、冷蔵の鮮魚状態で市内の卸業者から提供前日に飲食店が購入したものである。飲食店では3℃の冷蔵庫で保管した後、提供前日に調理後冷蔵保管し、当日に盛り付けて提供している。

このため、K. seputempunctata には養殖段階で既に汚染されていた可能性が最も高いと考えられる。

今回の事件において、通常の喫食状況分析(相対危険度、オッズ比、補正を含むχ2検定、Fisher直接法)からは、ヒラメについても原因食品とは特定できないものとなっている。1尾のヒラメからは6~8人前程度の刺身しか取れないこと、養殖期間中はヒラメ間でクドアの水平感染は生じにくいと考えられていることから、感染している個体を喫食した者のみから発症者が生じた可能性が高く、クドア食中毒において通常の喫食状況分析が原因食品の判断基準とならないことはむしろ妥当であると考えられる。

 

三重県健康福祉部津保健福祉事務所

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