国立感染症研究所

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無菌性髄膜炎患者からのエコーウイルス30型の検出状況(2013年)―滋賀県

(IASR Vol. 34 p. 309-310: 2013年10月号)

 

2013年5~6月に無菌性髄膜炎患者(疑い含む)16名の検査をしたところ、12名からエコーウイルス30型(以下E30)が検出された。その12名由来の検体は、2カ所の病原体定点医療機関で採取されたものであった。E30が検出された患者の性別は男性6名、女性4名で、2名は不明であった。年齢分布は4歳が4名と最も多く、次いで5歳と6歳が各2名、8歳が1名であったが、残り3名は不明であった。記載のあった11名の主な症状は、発熱(11名)、頭痛(4名)、嘔吐(3名)および上気道炎(3名)であった。発熱は37.4℃~39.4℃で、平均は38.7℃であった。

エンテロウイルスの検査は、PCR法による遺伝子検出と培養細胞によるウイルス分離/同定を実施した。遺伝子検査には、EVP2/OL-68-1およびEVP4/OL-68-1のプライマーを用いてRT-semi nested PCR後、バンドが得られたものについてダイレクトシークエンスを行いGenBank中の登録株と系統解析を行った。クラスターを形成した株のうち代表株につきCODEHOP-snPCR法によるVP1シークエンス、および分離株すべてについて中和試験により血清型を決定した。なおウイルス分離には、RD-18S、Vero-E6およびHEp-2の各細胞を用いている。その他ウイルスの遺伝子検査についても、症状に応じて実施した。

E30が検出された症例一覧を表1に示す。E30は、遺伝子検査により12名由来の検体から検出され、材料別では髄液11件中11件および咽頭ぬぐい液3件中3件から検出された。

また、ウイルス分離は検体量不足のため2名については実施できなかったが、9名から分離株を得、材料別では髄液9件中8件および咽頭ぬぐい液3件中3件から分離された。

E30が検出された12名中3名では、髄液からアデノウイルス(以下AD)も同時に検出されている。

VP1領域275bpの系統解析の結果、滋賀分離株-20130140CはBastianii株(標準株)と約80%一致しており、2008~2010年に検出された国内分離株とは約7%異なっていた()。

2013年3~7月に採取された無菌性髄膜炎患者(疑い含む)からのウイルス検出状況を表2に示す。3月にコクサッキーウイルスB群3型(以下CB3)およびエコーウイルス18型(以下E18)が検出されている。

滋賀県感染症発生動向調査における無菌性髄膜炎の定点当たりの患者数は、2013年第16週に0.14人/定点を示し、第22週は0.28人/定点であった。

管轄保健所でこれら無菌性髄膜炎患者(疑い含む)の調査を行ったところ、疫学的な関連性は認められなかった。

E30は、滋賀県では1990~1991年、1997~1998年および2003年に多く分離されている。現在も検体搬入が続いており、前回の流行から感受性個体が蓄積しているため、今後のE30の動向について注視していきたい。

 

滋賀県衛生科学センター  児玉弘美 小菅裕也 山田香織 鈴木智之 小嶋美穂子 石川和彦 井上剛彦  
滋賀県長浜保健所 谷口秀美  
国立感染症研究所 吉田 弘

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