国立感染症研究所

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国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター第一室

 

全国地方衛生研究所

流行株抗原性解析
国立感染症研究所(感染研)では、国内で流行するインフルエンザウイルスの性状を把握し、インフルエンザ対策およびワクチン株選定に役立てるため、全国地方衛生研究所(地研)で分離・同定されたウイルス株総数の約10%を無作為に抽出し、解析を行っている。
流行株とワクチン株の抗原性を比較する目的で、フェレット感染血清を用いた赤血球凝集阻止(HI)試験または中和試験による抗原性解析を実施した。

現行の季節性インフルエンザワクチンは、ワクチン原株として選ばれたウイルスを鶏卵で継代して製造している。そのため、継代の間に、ウイルスが鶏卵に馴化することでアミノ酸置換が起こり、抗原性が変化(抗原変異)することがある。その結果、流行株とワクチン製造株の抗原性が一致しなくなる場合があり、世界的に問題となっている。

 抗原性解析試験:結果の見方
2016/2017シーズン(データ更新日:2017年6月26日)NEW
表1. 抗原性解析結果:A(H1N1)pdm09
表2. 抗原性解析結果:A(H3N2)
表3. 抗原性解析結果:B(ビクトリア系統)
表4. 抗原性解析結果:B(山形系統)

 

遺伝子系統樹
国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター第一室が解析した季節性インフルエンザウイルスの遺伝子配列を用いて、HA遺伝子系統樹を作成した。国内外で流行しているウイルスと比較するため、各地方衛生研究所にて分離された株の遺伝子配列だけではなく、海外で分離された株の遺伝子配列も解析に加えている。なお、海外の研究機関で解析された遺伝子配列はインフルエンザウイルス遺伝子データベースGISAID(Global Initiative on Sharing All Influenza Data:http://platform.gisaid.org/epi3/frontend)から入手している。 
2016/2017シーズン(データ更新日:2017年6月26日)NEW

A(H1N1)pdm09:解析した株は全てHA遺伝子系統樹上のクレード6B.1(共通アミノ酸置換:S84N, S162N, I216T)に属していた(図1)。サブクレード6B.1内で集団はさらに分岐し、A215G群および共通アミノ酸置換を持たない群を形成した。6B.2クレード(V152T, V173I, E491G, D501E)に属する株は検出されていない。

 

A(H3N2):最近の流行株はHA遺伝子系統樹上でクレード3Cに属しており、さらにその中にサブクレード3C.2および3C.3が形成されている。3C.2内にはさらに、2016/17シーズンのワクチン株A/Hong Kong/4801/2014株に代表されるサブクレード3C.2a(L3I, N144S, F159Y, K160T, Q311H, D489N)が形成されており、今シーズンの流行株は全てこの3C.2aに属している(図2)。また解析株の66.7%は、3C.2a内のサブクレード3C.2a1(N171K, I406V, G484E)に属した。3C.2a内には、N121K, S144K群、T131K, R142K群、N31S, D53N, R142G, S144R, N171K, I192T, Q197H群が、3C.2a1内にはR142G群が出現しさらにこの中にN121K, G142R, G479E群およびN121K, G142R, K92R, H311Q群が出現している。また3C.2a1内には他にY94H, F193S, I230V, A372S群などが出現しており、遺伝子的に多様化が進んでいる。

 

B (ビクトリア系統):遺伝子解析を実施した株は全て、HA遺伝子系統樹上のクレード1A(共通アミノ酸置換N75L、N165K, S172P、代表株:B/Brisbane/60/2008株、B/Texsas/02/2013株)に属しており、さらに共通アミノ酸置換N129D, V146I, I117Vを有していた(図3)。

*系統樹内のアミノ酸番号を訂正致しました。(2017年6月30日)

 

B (山形系統):遺伝子解析を実施した株は全て、HA遺伝子系統樹上のクレード3(共通アミノ酸置換S150I, N165Y, N202S, S229D、代表株: B/Wisconsin/1/2010株、B/Phuket/3073/2013株)に属し、さらに共通アミノ酸置換N116K, K298E, E312K, L172Q, M251Vを有していた(図4)。クレード2(共通アミノ酸置換R48K, P108A, T181A, S229G、代表株:B/Massachusetts/2/2012株)に属する株は検出されなかった。

 

参考として、各NA遺伝子系統樹も掲載した。
A(H1N1)pdm09
A(H3N2)
B(ビクトリア系統)
B(山形系統)

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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