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第19回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和2年12月22日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第19回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード資料4)。

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直近の感染状況等

感染状況について

・全国の新規感染者数は、増加が続き、過去最多の水準。首都圏では東京を中心に増加が続いており、関西圏、中部圏では、明らかな減少は見られない。また、大都市圏の感染拡大が波及することにより、新たな地域での感染拡大の動きも続き、全国的に感染が拡大している。
 実効再生産数:全国的には1を上回る水準となっている (12月6日時点)。東京等首都圏、愛知、京都、大阪、兵庫などで1週間平均で1を超える水準となっている(12月6日時点)。

・11月以降の対策にもかかわらず、関東圏、中部圏、関西圏では新規感染者数の明らかな減少が見られていない。これに伴い、入院者数、重症者数、死亡者数の増加が続いている。対応を続けている保健所や医療機関の職員はすでに相当に疲弊している。予定された手術や救急の受入等の制限や、病床を確保するための転院、認知症や透析の必要がある方など入院調整に困難をきたす事例など通常医療への影響も見られており、医療提供体制等が相対的に弱まる年末年始が迫る中、各地で迅速な発生時対応や新型コロナの診療と通常の医療との両立が困難な状況が懸念される。

・英国で、最近の流行の主な系統となった変異株については、ECDC等からは、重症化を示唆するデータは認めない一方、感染性が高いとの指摘がなされており、医療への負荷が危惧される。この変異株については、これまでのところ国内では確認されていないが、輸入リスクについて留意が必要である。

【感染拡大地域の動向】

①北海道 新規感染者数は減少傾向が見られる。新規感染の多くは病院・施設内の感染。旭川市の医療機関および福祉施設内の感染状況は引き続き注意が必要。 

②首都圏 東京都で新規感染者数の増加が継続し、直近の一週間では10万人あたり30人を超えている。医療提供体制も非常に厳しい状況が継続。重症者の受入が困難になりつつある。また、病床確保のため、通常の医療を行う病床を転用する必要性が生じてきている。感染者の抑制のための実効的な取組が求められる状況にあり、感染経路は不明者が多いが飲食を介した感染の拡大が推定される。首都圏全体でも、埼玉、神奈川、千葉でも新規感染者が増加しており、医療提供体制が厳しい状況。

③関西圏 大阪では新規感染者数に減少の動きが見られるが、依然高い水準。重症者数の増加も継続し、医療提供体制の厳しさが増大。院内感染と市中での感染が継続。感染経路不明割合は約6割。兵庫でも感染が継続。医療提供体制が厳しい状況。京都では新規感染者数の増加が継続。奈良でも感染が継続。

④中部圏 名古屋市とその周辺で感染が継続。名古屋市では新規感染者数が高止まりし、減少傾向が見られない。医療の提供体制が厳しい状況が継続。岐阜県でも感染が継続。 

※沖縄は、新規感染者数は減少傾向であるが、感染が継続。その他、宮城、群馬、岡山、広島、高知、福岡、熊本などこれまで大きな感染が見られなかった地域でも、新たな感染拡大や再拡大の動きが見られる。特に、広島では、広島市を中心に新規感染者数が大幅に増加し、医療提供体制が急速に厳しくなっている。

感染状況の分析

主に北海道、首都圏、愛知、大阪における11月からの対策による感染状況へのインパクトについて分析した。

  • 北海道では、飲食店の時短要請が早かった札幌では11月中旬から人流の減少がみられ、実効再生産数が1以下を継続している。北海道全体でも新規感染者数の減少が続いている。しかし、直近では実効再生産数が1に近づきつつあり、注意が必要。
  • 東京都では11月下旬に一時、実効再生産数が1以下となったが、その後1以上が継続している。時短要請が行われているものの、人流の低下は見られていない。東京の感染が継続することで周辺自治体にも拡大し、埼玉、千葉、神奈川とともに首都圏で新規感染者の増加が継続している。
  • 大阪府では、大阪市の11月下旬以降営業時短地域における人流の減少が見られ、実効再生産数が1近辺となった。大阪府でも12月中旬から新規感染者がやや減少傾向となった。しかし、関西圏で、京都は増加が継続、兵庫は高止まりの状況。
  • 愛知県では人流の減少は小さく、実効再生産数も1近辺が続いている。新規感染者数は高止まりの状況。
  • 人流の増減と実効再生産数の上下には一定の関係が見られる。

以上のように、北海道以外は新規感染者数の明らかな減少が見られていない。関東圏では増加が継続しているが、特に東京における感染の継続が周辺自治体の感染拡大にも影響している。大都市圏の感染拡大は、最近の地方における感染の発生にも影響していると考えられ、大都市における感染を抑制しなければ、地方での感染を抑えることも困難になる。

飲食などの社会活動が活発な20−50才台の世代の感染が多く、大都市圏も含め直近の感染拡大では、飲食をする場面が主な感染拡大の要因と考えられる。

必要な対策

感染が拡大・継続している地域、特に、ステージⅢ相当の対策が必要で、分科会の提言にあるシナリオ3および2相当と考えられる地域においては、取組の強化が必要である。特に東京をはじめとする首都圏では、新規感染者数の増加が続いているため早急に対策の強化が求められる。

これまで大きな感染が見られなかった地域でも感染の発生が見られており、医療機関、福祉施設における感染も頻発している。特に急速な感染拡大により、医療提供体制の急速な悪化が起こりうるため、年末に向けて、宿泊療養施設を含め医療提供体制の準備・確保等を直ちに進めることが必要である。感染拡大が見られる場合には、飲食店の時短要請等の対策も検討する必要がある。

感染拡大の抑制には、市民の皆様の協力が不可欠である。忘年会や新年会を避けるとともに、年末年始の買い物も混雑を避けるなど静かな年末年始を過ごしていただくよう、適切かつ強力なメッセージを発信していくことが求められる。

12月14日の政府対策本部で年明けまでを見据えた対策の強化策が示されたが、こうした取組の効果を注視し、感染状況の分析・評価を進めて行く必要がある。その上で、効果が不十分であれば必要な対応を検討することが求められる。

さらに、国内の厳しい感染状況の中で、英国等で見られる変異株の流入による感染拡大を防ぐことが必要である。このため、関係国との往来の在り方や検査・モニタリングの在り方について、適切な対応を速やかに行うべきである。

 

 感染状況分析・評価グラフ等 

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan