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掲載日:2021年3月4日

第26回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年3月3日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第26回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

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直近の感染状況等

全国の新規感染者数は、報告日ベースでは、1月中旬以降(発症日ベースでは、1月上旬以降)減少が継続、直近の1週間では10万人あたり約5人となっているが、2月中旬以降減少スピードが鈍化しており、下げ止まる可能性やリバウンドに留意が必要。

実効再生産数:
全国的には、1月上旬以降1を下回っており、直近で0.84となっている(2月14日時点)。1都3県、大阪・兵庫・京都、愛知・岐阜、福岡では、1を下回る水準が継続(2月15日時点)。

入院者数、重症者数、死亡者数、療養者数も減少傾向が継続。一方で、60歳以上の新規感染者数の割合が3割を超えており、重症者数や死亡者数の減少は新規感染者数や入院者数の減少と比べ時間を要する見込み。

地域の動向

※新規感染者数の数値は、報告日ベースの直近1週間合計の対人口10万人の値

①首都圏
東京では、新規感染者数は減少傾向が続き、約13人と、ステージⅢの指標となっている15人を下回った。神奈川、埼玉、千葉でも新規感染者数の減少傾向が続き、それぞれ、約8人、約9人、約14人となっている。一都3県全体でも減少傾向であるが、感染者数の減少スピードが鈍化し、東京、千葉では依然として15人に近い水準となっている。いずれも新規感染者数、療養者数の減少に伴い、自治体での入院等の調整も改善が続き、ステージⅣの指標を下回るなど負荷の軽減が見られるが、病床使用率が高い地域もあるなど医療提供体制に厳しさが見られる。
②関西圏・中京圏・九州
いずれも新規感染者数の減少が継続し、大阪を除き、5人を下回る水準となっている。いずれも医療提供体制に厳しさは見られるが、新規感染者数、療養者数の減少に伴い負荷の軽減が見られる。一方、大阪などでは、高齢者施設等でのクラスターは継続。高齢者の入院に伴う負荷の増加には留意が必要。
③上記以外の地域
概ね新規感染者数の減少傾向が続いている。一方で、一部の地域でクラスターが発生しており注意が必要。

変異株

英国、南アフリカ等で確認されその影響が懸念される変異株は、現状より急速に拡大するリスクが高い。国内では変異株感染例が継続的に確認され、自治体による積極的疫学調査も受けて、感染者とクラスター報告数の増加傾向が見られる。

感染状況の分析

緊急事態措置区域の4都県では、実効再生産数は、0.9程度の水準で、新規感染者数の減少傾向は継続しているものの、減少スピードが鈍化。首都圏では、感染源やクラスターの発生場所が不明な例が多く、夜間の人流の再上昇の動きも見られており、リバウンドを起こさず、減少傾向を続けることが重要。

クラスターは、高齢者施設での発生が継続し、地域により飲食店でも引き続き発生している。また、各地で若年層の感染者数の下げ止まりの傾向や感染が縮小した地域でのクラスターの発生も見られ留意が必要。

新規感染者数の減少は、周辺地域に比べ都市部で遅れている。変異株のリスクもある中で、減少傾向を維持できる取組が必要。緊急事態宣言下でも変異株感染者の増加傾向がみられ、今後社会における接触機会の増加や、感染対策の緩みが生まれることで、既存株から置き換わっていく可能性もあり、これまでよりそのリスクが拡大する懸念がある。

必要な対策

新規感染者数の減少を継続することにより、医療提供体制の負荷を軽減し、ワクチンを安定して接種できる体制の確保、変異株拡大等のリスクを低減させることが重要。そうした中で、緊急事態宣言の解除がリバウンドを誘発することへの懸念に留意が必要である。特に、首都圏では、他地域と比べると感染者数が多く、感染が継続した場合の他地域への影響も大きい。感染の再拡大を防ぐためには、できるだけ低い水準を長く維持することが必要であり、そのため、地域の感染状況等に応じ、積極的疫学調査を踏まえ、その情報・評価を踏まえた対応などさらに感染を減少させるために必要な取組を行っていくことが必要。既に緊急事態措置が解除された地域も同様の取組が必要。

感染を減少させるための取組に協力が必要なことについて、国、自治体が一致したメッセージを出していくことが必要。

会食における感染リスクを低減させるために、事業者の取組とともに、利用者の会食のあり方を周知することが重要。

また、年度末から年度初めの恒例行事(卒業式、歓送迎会、お花見)などに伴う宴会・旅行はなるべく避けていただくように効果的なメッセージの発信が必要。

今後、再拡大の防止とともに次の波に備えた対応を行うことが重要。具体的には、①ワクチン接種の着実な推進、②変異株対策の強化、③感染リスクに応じた積極的な検査による早期探知や積極的疫学調査の再強化、飲食店及び高齢者施設対策の継続などの感染拡大防止策の推進、④新型コロナに対する医療を機動的に提供するための医療提供体制等の充実などの取組が必要。

変異株

今後、変異株の影響がより大きくなってくることを踏まえ、その影響を抑えるための対応が必要。このため、先日示された変異株対策パッケージに基づき、①水際措置の強化の継続、②国内の変異株のサーベイランス体制の早急な強化(民間検査機関や大学等とも連携。国は自治体の検査数等を定期的に把握)、③変異株感染者の早期検知、積極的疫学調査による濃厚接触者および感染源の特定や速やかな拡大防止策、④変異株の感染性や病原性等の疫学情報についての評価・分析(N501Y変異以外のE484Kなどの変異を有する変異株についても実態把握を継続)と正確な情報の発信、⑤検体や臨床情報等の一体的収集・解析等の研究開発等の推進が必要。

 

感染状況分析・評価グラフ等

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan