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掲載日:2021年6月11日

第38回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年6月9日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第38回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

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感染状況について

全国の新規感染者数は、報告日別では、減少が続いており、直近の1週間では10万人あたり約13人となっている。感染拡大が見られていた地域では概ね減少傾向となっている。しかし人流の増加が見られ減少速度が鈍化する地域もあり、今後リバウンドの可能性も考えられる。

新規感染者数の減少に伴い、重症者数は減少に転じ、死亡者数も減少の動きが見られる。

実効再生産数:
全国的には、低下傾向で、直近(5/16時点)で0.82と1を下回る水準が継続。

感染状況の分析【地域の動向等】

 ※新規感染者数の数値は、報告日ベースの直近1週間合計の対人口10万人の値。

①沖縄
  • 緊急事態措置の開始から2週間経過。那覇市や南部・中部と宮古・八重山地域で20-30代を中心に現役世代で新規感染数者の急増傾向が続いてきた。6月に入り、減少に転じたものの、約103と依然として100を超える水準。病床使用率も高水準が継続し、入院率は低下、自宅療養が増加している。重症者数が今後も増加することも懸念され、更なる医療提供体制への負荷の増大が予想される。高齢者に感染が波及することにより、更なる重症者の増加が懸念される。
  • 緊急事態措置開始後、夜間滞留人口・昼間滞留人口ともに減少が続いており、今後も新規感染者数の減少が見込まれるが、こうした傾向が継続するか注視が必要。自宅療養者、宿泊療養者に関し、急変時への備えも含め対応が必要。
②北海道
  • 新規感染者数は減少が継続しているが、約29と25を超える水準。感染の中心である札幌市でも減少が見られるものの、約49とより高い水準。福祉施設等でのクラスターも継続している。緊急事態措置後に夜間滞留人口の減少が続いており、今後も新規感染者数の減少が見込まれるが、こうした傾向が継続するか注視が必要。札幌では病床使用率が高い状況。 また、札幌以外の地方部でも福祉施設等でクラスターが発生している。
③関西圏
  • 大阪、兵庫、京都では、新規感染者数の減少傾向が続き、それぞれ約14、9、12。新規感染者数の減少に伴い、入院者数、重症者数も減少するなど改善が見られるが、高齢者施設等でのクラスターも継続。大阪では、夜間滞留人口・昼間滞留人口とも増加が見られるが、2回目の宣言中最低値より約10%低い水準は維持。兵庫も夜間滞留人口は2回目の宣言中最低値より低い水準を維持。今後も新規感染者の減少が見込まれるが、京都では夜間滞留人口の増加が見られており、感染状況の改善による滞留人口の動向とともに注視が必要。
  • 滋賀、奈良も減少傾向で、それぞれ約14、8。
④首都圏(1都3県) 
  • 東京、埼玉、千葉、神奈川では、新規感染者数の減少傾向が続き、それぞれ約21、9、11、16。先週今週比は5月中旬以降1以下となっているが、関西圏と比べると高い水準で、減少速度が遅い。特に千葉、神奈川では横ばいに近くなっている。また、重症者数は明らかな減少傾向にはない。
  • 東京では、夜間滞留人口・昼間滞留人口ともに4週間連続で増加傾向が継続。特に緊急事態宣言延長前後からの増加が目立つ。埼玉、千葉、神奈川では横ばい傾向。対策への協力が得られにくくなっていることが懸念され、特に、東京でこのまま増加傾向が続くとリバウンドの可能性があり、警戒が必要。
⑤中京圏
  • 愛知では、新規感染者数の減少が続き、約20。重症者数の減少は見られるものの、医療への負荷が続いており、病床使用率も高い水準で医療提供体制が厳しい状況。今後も新規感染者数の減少が見込まれるが、夜間滞留人口・昼間滞留人口ともに微増しており、新規感染者数の減少傾向が継続するか注視が必要。
  • 岐阜では、新規感染者数の減少傾向が続き、約15。夜間滞留人口・昼間滞留人口は低い水準を維持、今後も新規感染者数の減少が見込まれる。三重では減少傾向が続き、約8。夜間滞留人口が増加しており、リバウンドが危惧される。静岡も減少傾向で約7。
⑥九州
  • 福岡では、新規感染者数の減少が続いており、約11。入院者数、重症者数の減少が見られるものの、医療提供体制への負荷は大きい状態。夜間滞留人口は、低い水準を維持。今後も、新規感染者数の減少が見込まれるが、こうした傾向が継続するか注視が必要。
  • 熊本では、新規感染者数は減少が続いており、約5。新規感染者数の減少に伴い、病床使用率、重症病床使用率とも低下傾向で、入院率は5割を上回っている。その他の九州各県でも概ね減少傾向が継続。
⑦その他の緊急事態措置地域/まん延防止等重点措置地域(岡山、広島/群馬、石川)
  • 岡山、広島では、新規感染者数の減少が続き、それぞれ約7、12。両県とも重症者数の減少は見られるものの、病床使用率が高い水準。両県とも夜間滞留人口は低い水準を維持、今後も新規感染者数の減少が見込まれるが、新規感染者数の減少傾向が継続するか注視が必要。
  • 群馬、石川では、新規感染者数の減少が続き、それぞれ約5、7。両県とも、新規感染者の減少に伴い、病床使用率、重症病床使用率とも低下傾向で、入院率は5割を上回っている。
⑧上記以外の地域
  • 山梨、高知では新規感染者数がそれぞれ約21、18と15を超えている。高知では減少に転じているが、山梨ではクラスターの発生による増加がみられ、留意が必要。

今後の見通しと必要な対策

全国的に新規感染者数の減少傾向が続く可能性があるが、 B.1.1.7系統の変異株(アルファ株)へほぼ置き換わり、感染性が高くなっていると想定されることから、人流の増加の動きに留意が必要。すでに人流が増加傾向に転じた地域もあり、そうした地域では、新規感染者数が下げ止まる可能性もある。

緊急事態措置区域及びまん延防止等重点措置(重点措置)区域では、市民や事業者の協力により、減少傾向が見られており、その効果は着実に現れている。ただし、沖縄、北海道では、依然としてステージⅣ相当の新規感染者数が発生している。新規感染者数、療養者数の減少に伴い、負荷の低下は見られるものの、医療提供体制の厳しい状況が続いている地域もある。このため、今後のリバウンドを防止するためにできるだけ新規感染者数を下げることと、下げ止まった場合も上昇の抑制を継続することが求められる。5月28日の政府対策本部でとりまとめられた「6月以降の緊急事態宣言期間における取組」に基づく対策の徹底が必要。

特に、東京においては人流の増加が継続している。この傾向が継続すると感染者数の下げ止まりからリバウンドが予測される。ワクチンの接種が高齢者中心に進んでおり、高齢者の重症化が抑えられることが期待されるものの、リバウンド後に感染者数の急速な増加が続けば、結果的に重症者数も増加し、医療のひっ迫につながる可能性もある。医療機関にはワクチン接種に伴う負荷もある。そうした点も踏まえ、感染の拡大を抑制するための必要な取組を今後も継続すべきである。

その他の地域や重点措置が解除された地域でも、アルファ株及びB.1.617系統の変異株(デルタ株等)により、これまでより感染拡大が速く進む可能性も踏まえ、各自治体において、地域の専門家の入った会議体などで人流や感染状況・医療提供体制などを分析し、必要な対策をタイムリーに実施していくことが求められる。

今回の感染拡大の大きさや進み方、減少の経過については、地域で違いが見られた。こうした違いには、変異株の置き換わり、対策の内容や開始・終了のタイミング、年度代わりやGWなどの連休による人の移動や普段会わない人が集まること、感染の中心となった年齢層など様々な要因が考えられるが、さらに検討が必要である。

ワクチン接種回数は全国ですでに1,900万回を越え、約1,450万人が1回目の接種を受けた。感染拡大を抑制するためにも、職域接種なども含め、できる限り速やかに、多くの方への接種を全国で円滑に進めることが必要。

一部の地域を除き、従来株から アルファ株へ概ね置き換わったと推定される中で、新たな変異株への対応も強化するため、ウイルスゲノムサーベイランスによる実態把握に重点をおいて対応を行うことが必要。特に、デルタ株等については、ゲノムサーベイランスやL452R変異株スクリーニングにより全国的な監視体制を強化するとともに、地域における検査も強化し、積極的疫学調査等により、感染拡大を可能な限り抑えていくことが必要。また、水際対策についても、引き続き迅速に対応することが必要。

 

感染状況分析・評価グラフ等 

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan