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掲載日:2021年6月17日

第39回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年6月16日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第39回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

英語版(準備中)

感染状況について

全国の新規感染者数は、報告日別では、減少が続いており、直近の1週間では10万人あたり約9となっている。感染拡大が見られていた地域では減少傾向となっている。しかし、人流の増加が見られ減少速度が鈍化する地域もあり、そうした地域では、今後リバウンドが懸念される。

新規感染者数の減少に伴い、重症者数も減少が続いており、死亡者数も減少に転じている。

実効再生産数:
全国的には、低下傾向で、直近(5/30時点)で0.78と1を下回る水準が継続。

感染状況の分析【地域の動向等】

 ※新規感染者数の数値は、報告日ベースの直近1週間合計の対人口10万人の値。

①沖縄
  • 新規感染者数は約62と依然として非常に高い水準であるが、減少が継続している。20-30代が中心だが、未成年の割合も高くなっている。病床使用率は高水準となっているが、新規感染者数の減少に伴い、自宅療養や入院等調整中は減少に転じ、入院率は上昇している。また、19才以下の感染者数増加により学校が休校となった。緊急事態措置開始後、夜間滞留人口・昼間滞留人口ともに減少が続いており、今後も新規感染者数の減少が見込まれるが、こうした傾向が継続するか注視が必要。
②北海道
  • 新規感染者数は減少が続き、約17。感染の中心である札幌市でも減少が見られるものの、約29とより高い水準。今後も新規感染者数の減少が見込まれるが、減少が続いていた夜間滞留人口が増加に転じており、新規感染者数の減少傾向が継続するか注視が必要。札幌では病床使用率が高い状況。
③関西圏
  • 大阪、兵庫、京都では、新規感染者数の減少傾向が続き、それぞれ約9、5、8。新規感染者数の減少に伴い、入院者数、重症者数も減少するなど改善が見られるが、高齢者施設等でのクラスターは継続して発生。大阪では、夜間滞留人口・昼間滞留人口とも増加が見られるが、2回目の宣言中最低値の水準は維持。兵庫も夜間滞留人口は2回目の宣言中最低値より低い水準を維持。京都では直近の1週間は微減。今後も新規感染者の減少が見込まれるが、滞留人口の動向とともに注視が必要。
④首都圏(1都3県) 
  • 東京、埼玉、千葉、神奈川では、新規感染者数の減少傾向が続き、それぞれ約19、8、11、14。先週今週比は概ね1以下となっているが、関西圏と比べると高い水準で減少速度が遅い。特に千葉、神奈川では横ばいに近くなっている。東京では、夜間滞留人口・昼間滞留人口ともに5週間連続で増加傾向が継続。緊急事態措置開始前の水準まで戻りつつある。埼玉では横ばいだが、千葉、神奈川では夜間滞留人口・昼間滞留人口とも前週より増加。対策への協力が得られにくくなっていることが懸念され、特に、東京でこのまま増加傾向が続くと、リバウンドに向かうことが強く懸念され、警戒が必要。
⑤中京圏
  • 愛知では、新規感染者数の減少が続き、約12。新規感染者数の減少に伴い、入院者数、重症者数の減少が見られ、病床使用率、重症病床使用率は低下傾向。夜間滞留人口は微増傾向ではあるが、低い水準に抑えられており、今後も新規感染者数の減少が見込まれるが、こうした傾向が継続するか注視が必要。
  • 岐阜では、新規感染者数の減少傾向が続き、約7。夜間滞留人口・昼間滞留人口は低い水準を維持、今後も新規感染者数の減少が見込まれる。三重では減少傾向が続き、約5。夜間滞留人口の増加傾向が続いており、リバウンドが危惧される。
⑥その他の緊急事態措置地域(福岡、岡山、広島)
  • 福岡では、新規感染者数の減少が続いており、約6。新規感染者数の減少に伴い、入院者数、重症者数の減少が見られ、病床使用率、重症病床使用率は低下傾向。夜間滞留人口は、低い水準を維持。今後も、新規感染者数の減少が見込まれるが、こうした傾向が継続するか注視が必要。
  • 岡山、広島では、新規感染者数の減少が続き、それぞれ約3、7。新規感染者数の減少に伴い、入院者数、重症者数の減少が見られ、病床使用率、重症病床使用率は低下傾向、岡山県では、入院率が50%を超えている。両県とも夜間滞留人口は低い水準を維持、今後も新規感染者数の減少が見込まれるが、新規感染者数の減少傾向が継続するか注視が必要。
⑦上記以外の地域
  • 山梨では新規感染者数が約17。クラスターの発生による増加がみられ、その後、減少に転じているが、留意が必要。

変異株に関する分析

  • B.1.1.7系統の変異株(アルファ株)の割合が、スクリーニング検査では、全国計で約8割となり、一部の地域を除き、従来株からほぼ置き換わったと推定される。また、B.1.617.2系統の変異株(デルタ株)については、報告数が増加しつつある。
  • 併せて、デルタ株等については、海外で置き換わりが進んでいるという報告もあり、また、アルファ株よりも更に感染・伝播性が強い可能性も示唆されており、引き続き、分析を進めていくことが必要。

今後の見通しと必要な対策

全国的に新規感染者数の減少傾向が続く可能性があるが、アルファ株及びデルタ株により、これまでより感染拡大が速く進むことが想定されることから、人流の増加の動きに留意が必要。すでに人流が増加傾向に転じた地域もあり、そうした地域では、新規感染者数の下げ止まりや、リバウンドが生じる可能性もある。

緊急事態措置区域及びまん延防止等重点措置(重点措置)区域では、市民や事業者の協力により、減少傾向が見られており、その効果は着実に現れている。ただし、沖縄では、依然としてステージⅣ相当の新規感染者数が発生している。医療提供体制は、病床使用率が高水準となっている地域もあるが、新規感染者数、療養者数の減少に伴い、全般的に負荷の低下は見られている。

リバウンドを防止するためにできるだけ新規感染者数を下げることと、下げ止まった場合も上昇の抑制を継続することが求められる。特に、東京では、依然として新規感染者数が15人を超える水準である中で、人流の増加が5週間継続しており、今後、特に若年層から新規感染者数のリバウンドが起こることが強く懸念される。また、今般の感染拡大を踏まえると、こうしたリバウンドを高齢者の感染に繋げないことが重要。

ワクチンの接種が高齢者中心に進んでおり、高齢者の重症化が抑えられることが期待されるものの、デルタ株への置き換わりが進む可能性もあり、リバウンド後に感染者数の急速な増加が続けば、結果的に重症者数も増加し、医療のひっ迫につながる可能性もある。医療機関にはワクチン接種に伴う負荷もある。こうした点も踏まえ、職域接種なども含めワクチン接種の促進を図るとともに、感染の拡大を抑制するための必要な取組を今後も継続すべきである。

緊急事態措置や重点措置を解除していく場合には、これまで解除後速やかに人流の増加やリバウンドが起こった経験も踏まえ、対策の緩和は段階的に進めることが求められる。また、今後強化を含め、機動的な対処が重要。その際には、緊急事態措置及び重点措置の効果の分析も踏まえ、対応を検討していくことが求められる。さらに、各自治体で、地域の専門家の入った会議体などで人流や感染状況・医療提供体制などを分析し、感染拡大の予兆があれば、必要な対策をタイムリーに実施していくことが求められる。

一部の地域を除き、従来株から アルファ株へ概ね置き換わったと推定される中で、新たな変異株への対応も強化するため、ウイルスゲノムサーベイランスによる実態把握に重点をおいて対応を行うことが必要。特に、デルタ株等については、ゲノムサーベイランスやL452R変異株スクリーニングにより全国的な監視体制を強化するとともに、地域における検査も強化し、積極的疫学調査等により、感染拡大を可能な限り抑えていくことが必要。また、水際対策についても、引き続き迅速に対応することが必要。

感染後に遷延する症状(いわゆる後遺症)に関する研究の中間報告により、わが国においても一部の症状が遷延する場合があることが示されており、引き続き研究を進めるとともに、適時正確な情報を提供していくことが必要。

 

感染状況分析・評価グラフ等 

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan