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掲載日:2021年8月5日

第46回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年8月4日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第46回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

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感染状況について

全国の新規感染者数は、報告日別では、今週先週比が2.09と急速な増加が続き、直近の1週間では10万人あたり約59と過去最大の規模となっている。東京を中心とする首都圏だけでなく、全国の多くの地域で新規感染者数が急速に増加しており、これまでに経験したことのない感染拡大が継続している。また、感染者数の急速な増加に伴い、これまで低く抑えられていた重症者数も増加が続いている。

実効再生産数:
全国的には、直近(7/18時点)で1.35と1を上回る水準が続いており、首都圏では1.33、関西圏では1.30となっている。報告日別の新規感染者数の動きを見ると、さらに上昇することが見込まれる。 

感染状況の分析【地域の動向等】

 ※新規感染者数の数値は、報告日ベースの直近1週間合計の対人口10万人の値

首都圏(1都3県)
東京では、緊急事態措置が続いているが、新規感染者数は今週先週比が1.89と急速な増加が続き、約168。年末年始を越える過去最大の規模の感染拡大。20-40代が中心。入院者数では20-50代を中心に増加が継続。人工呼吸器又は人工心肺を使用している重症者数では、40-50代を中心として増加傾向が継続。いずれも5月の感染拡大時を越える水準となっている。感染者の急増に伴い、自宅待機を余儀なくされる者や調整中の者が急増。さらに、一般医療の制限も生じている。埼玉、千葉、神奈川でも新規感染者数は20-30代中心に急増が続き、それぞれ約86、80、103。3県とも今週先週比が2を越えており急速に増加。東京では夜間滞留人口は微減にとどまっており、先週後半には増加に転じた。一方、埼玉、千葉でも夜間滞留人口の大きな減少が見られておらず、首都圏では当面は感染拡大の継続が避けられない状況。
沖縄
緊急事態措置が続いているが、新規感染者数は今週先週比が2.17と急速な増加が続き、約179。20-30代が中心。入院者数は急速に増加しており、病床使用率及び重症病床使用率は厳しい状況となっている。4連休中に大幅に減少した夜間・昼間の滞留人口は再度増加に転じており、感染拡大が続くことが避けられない状況。
関西圏
大阪では、新規感染者数は今週先週比が1.90と急速な増加が続き、約69。20-30代が中心。入院者数は増加が続き、重症者数も増加に転じている。夜間滞留人口は、依然高い水準でありながら増加傾向がみられ、感染拡大が続くことが予測される。 京都、兵庫でも、新規感染者数の増加が続き、それぞれ、約46、38。いずれも、重症病床使用率は2割を切る水準が継続しているが、夜間滞留人口は依然高い水準が続いており、感染拡大が継続する可能性が非常に高い。
滋賀、奈良、和歌山でも新規感染者数が急速な増加がみられ、それぞれ、約26、31、27。
北海道/石川/福岡
まん延防止等重点措置(重点措置)が適用された北海道、石川、福岡では、新規感染者数の急増が続き、それぞれ約33(札幌市56)、56、60。いずれも、重症病床使用率は2割を切る水準が継続。いずれも夜間滞留人口の減少が見られるが、北海道では、依然高い水準であり、感染の拡大が継続する可能性が非常に高い。
上記以外
重点措置が解除された愛知では、新規感染者数は今週先週比が2.24と急速に増加し、約22。重症病症は2割を切る水準が継続。
その他の地域でもほぼすべての地域で急速な新規感染者数の増加が見られており、特に、福島、茨城、栃木、群馬、福井、山梨、鳥取、岡山、熊本では、それぞれ33、46、42、36、27、31、30、25、29と25を越え、今週先週比も2を超える水準で急速な感染拡大となっている。

変異株に関する分析

  • B.1.617.2系統の変異株(デルタ株)は、スクリーニング検査での陽性率(機械的な試算、7/19-7/25)が約45%。上昇が続いており、置き換わりが進んでいる。特に、東京では、5割を越えており、直近では約9割に達すると推計されている。

今後の見通しと必要な対策

  • デルタ株への置き換わりが進む中で、滞留人口の減少も限定的で、感染者数がこれまでにはないスピードで増大しているため重症者数も急速に増大している。比較的若い層の重症者だけでなく、高齢者でも絶対数として増えていることにも注意が必要。死亡者はまだ少ない状態で推移しているが、重症例が増加していること、死亡例の発生には遅れがあることなどから今後死亡例も増加に転じていく可能性がある。現下の急速な感染拡大を速やかに抑えることが必要であり、改めて、こうした危機感を行政と市民が共有して対応し、接触の機会を更に削減する方策を検討することが必要。
★ 最大限に効率的な医療資源活用の必要性

医療・公衆衛生体制への負荷に関し、特に、感染が急拡大している東京では20-50代を中心に入院者の増加が続き、またこれまでとは違い40‐50代の重症者が急激に増えており、既に一般医療の制限が生じている。熱中症などで救急搬送が増加するなど一般医療の負荷も増加する中で、通常であれば助かる命も助からない状況になることも強く懸念される。その他の感染が拡大している地域でも、東京と比べ医療体制が限られる中で、今後同様の状況が生じることが強く懸念される。一方、ワクチン接種の進展に伴い、患者像が変化してきている。こうした中で、感染が急拡大する地域では、それぞれの地域の状況を踏まえ、重症者や中等症でも重症化リスクの高い者が確実に入院できる体制を確保しつつ、自宅待機者への往診の強化、宿泊療養施設への医療の投入に加え、自宅療養・宿泊療養者での健康観察を促進する。さらに往診、訪問看護等の地域の医療資源を最大限活用して、重症化に迅速に対応できる体制を早急に整備することにより、必要な医療を確保することが求められる。

★夏休みに向けて基本的対策の徹底を

感染は商業施設を含む職場や学校など地域にも急速に広がっている。飲食の場面への対策は引き続き徹底し、飲食を介した家庭内や職場への伝播を徹底的に防ぐ必要がある。改めて、マスク、手指衛生、人との距離の確保、換気などの基本的感染防止対策のほか、業種別ガイドラインの再徹底、職場での感染防止策の強化とテレワーク推進、有症状者の出社の自粛などを徹底すべき。特にマスクについては、飛沫防止効果の高い不織布マスクなどの活用を推奨する。今後の3連休、夏休み、お盆休みにおいて普段会わない人と会う機会が感染リスクを高めるため、県境を越えた移動は控えること。さらに、少しでも体調が悪い場合、軽い症状でも早めの受診、積極的な検査、適切な療養に繋げることが必要。こうした取組をしっかり発信していくことが重要。

 

感染状況分析・評価グラフ等 

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan