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掲載日:2021年8月26日

第49回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年8月25日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第49回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

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感染状況について

感染拡大の歯止めがかからず、全国の新規感染者数は、報告日別では、1か月近く過去最大の水準を更新し続けており、直近の1週間では10万人あたり約128となっている。首都圏に比べその他の地域、特に中部圏の今週先週比が高く、 全国的にほぼ全ての地域でこれまでに経験したことのない感染拡大が継続している。

感染者数の急速な増加に伴い、重症者数も急激に増加し、過去最大の規模となり、死亡者数も増加傾向となっている。また、療養者数の増加に伴い、入院等調整中の者の数も急速に増加している。公衆衛生体制・医療提供体制が首都圏だけではなく他の地域でも非常に厳しくなっており、災害時の状況に近い局面が継続している。

実効再生産数:
全国的には、直近(8/8時点)で1.10と1を上回る水準が続いており、首都圏では1.04、関西圏では1.13となっている。

感染状況の分析【地域の動向等】

 ※新規感染者数の数値は、報告日ベースの直近1週間合計の対人口10万人の値。

首都圏(1都3県)
東京では 、新規感染者数の増加スピードはやや鈍化しているが、なお増加傾向は継続しており、新規感染者数は約234で過去最大規模の感染拡大が継続している。20-40代が中心だが、高齢者や20代未満の感染者数も増加傾向。入院者数は20-50代を中心に増加が継続。60代以上でも増加が継続。人工呼吸器又は人工心肺を使用している重症者数では、40-60代を中心に高止まり。入院者数と重症者数は共に過去最高の水準で、夜間をはじめ新規の入院受け入れ・調整が困難な事例が生じている。自宅療養や入院調整中の者も急激な増加が継続し、過去最高の水準を更新し続けている。さらに、救急医療や集中治療室等の受け入れなど一般医療の制限も生じている。埼玉、千葉、神奈川では、新規感染者数は、それぞれ、約159、168、185。東京同様、増加スピードはやや鈍化しているが、過去最大規模の感染拡大が継続している。いずれも20-50代が中心だが、10代以下の感染者数も増加傾向。病床、重症病床の使用率が急速に上昇している。特に、神奈川では、ともに8割を超える厳しい状況が続いている。東京、千葉の夜間滞留人口は、お盆明けから増加に転じている。一方、埼玉、神奈川の夜間滞留人口は低い水準で横ばい。首都圏の今後の感染者数の推移に注視が必要。
沖縄
新規感染者数の増加スピードはやや鈍化しているが、なお増加傾向は継続しており、新規感染者数は約314と全国で最も高く、過去に例のない水準が継続しているが、上げ止まり傾向も見られる。20-30代が中心。病床使用率及び重症病床使用率は9割に届く勢いであり、厳しい状況が続き、入院調整中の者も増加している。夜間滞留人口はお盆明けから減少に転じており、新規感染者数の減少につながるか注視が必要。
関西圏

大阪では、新規感染者数は今週先週比が1.44で急速な増加が続き、約182。20-30代が中心。入院者数は増加が続き、重症者数も増加。夜間滞留人口はお盆明けで下げ止まり、感染の拡大は継続する可能性。重点措置から緊急事態措置に移行した京都、兵庫では、新規感染者数の増加傾向が続き、それぞれ、約132、124。いずれも、入院者数が急速に増加。重症病症使用率が急速に上昇し、厳しい状況となっている。滋賀では、新規感染者数の急速な増加が続いており、約102。夜間滞留人口は、滋賀では減少継続、京都では緩やかに減少。兵庫では下げ止まり。減少している地域で新規感染者数の減少につながるか注視が必要。

その他、奈良でも新規感染者数が急速な増加傾向が続き、約96。和歌山でも新規感染者数が増加に転じており、約60。

北海道
新規感染者数は今週先週比が1.26で増加が続き、約69(札幌市約103)。重症病床使用率は2割を切る水準が継続。夜間滞留人口の減少は見られるが、依然高い水準であり、感染の拡大が継続する可能性。
北関東
重点措置から緊急事態措置に移行した茨城、栃木、群馬では、新規感染者数は、増加傾向が続き、それぞれ約78、78、102。いずれも、入院者数、重症者数が増加傾向で、病床使用率は厳しい状況となっている。夜間滞留人口は、いずれも低い水準を維持。新規感染者の減少につながるか注視が必要。
中京・東海

愛知では、新規感染者数は、今週先週比が1.94で急速な増加が続き、約121。静岡でも、新規感染者数は、今週先週比が1.60で急速な増加が続き、約106。いずれも、入院者数、重症者数の増加が継続。夜間滞留人口は愛知では、お盆明けから再び増加、静岡では下げ止まりつつあり、感染拡大の継続の可能性が懸念。新たに重点措置地域とされた岐阜、三重でも新規感染者数の急速な増加がみられ、それぞれ、約108、137。いずれも、今週先週比が2を超える水準となっている。

九州

重点措置から緊急事態措置に移行した福岡では、新規感染者数は、今週先週比が1.33で増加が続き、約148。入院者数は増加が継続し、厳しい状況となっている。重症病床使用率は2割を切る水準。夜間滞留人口はお盆明けから増加に転じており、感染拡大が継続する可能性。熊本では、新規感染者数の増加傾向が続き、約97。新たに重点措置とされた鹿児島では、今週先週比が1.27で増加傾向が続き、約89。病床使用率が7割を超える厳しい状況となっている。

その他の各県でも急速な新規感染者数の増加が見られており、佐賀、長崎、大分、宮崎では、それぞれ、約108、44、115、78と25を超えており、特に、大分、宮崎では、今週先週比が1.5を超える水準となっている。

その他重点措置対象地域

福島、石川では、新規感染者数は、上げ止まりの動きが見られ、それぞれ、約38、45。夜間滞留人口は低い水準で推移、新規感染者の減少につながるか注視が必要。

宮城、富山、山梨、岡山、広島、香川、愛媛でも、新規感染者数の増加傾向が続いており、それぞれ、約69、73、74、88、83、64、40。特に、富山、広島では、今週先週比が1.5を超える水準で急速に増加している。宮城、山梨では病床使用率が8割を超え、香川では7割を超える厳しい状況となっている。

上記以外

その他の地域でも多くの地域で急速な新規感染者数の増加が見られており、特に、青森、山形、新潟、福井、長野、山口、徳島、高知では、それぞれ約37、31、34、30、43、44、44、75と25を越え、急速な感染拡大となっている。

※首都圏や沖縄県などにおける新規感染者数について、感染者数の急増や検査陽性率が上昇している状況下では、実際の感染者数が過小に評価されているとの指摘もあるため、トレンドの分析には注意が必要である。

変異株に関する分析

  • B.1.617.2系統の変異株(デルタ株)は、スクリーニング検査での陽性率(機械的な試算、8/2-8/8)が約85%。直近では各地で9割を超える状況と推計されており、一部の地域を除き、B.1.1.7系統の変異株(アルファ株)からほぼ置き換わったと考えられる。

今後の見通しと必要な対策

  • 緊急事態措置や重点措置の継続や拡大にも関わらず、お盆明けには滞留人口の増加の動きも見られ、デルタ株への置き換わりが進み、感染者数がこれまでにはない規模で全国的に増加しているが、今後お盆やお盆明けの社会活動の増加の影響もあり、更に感染者数が増加してくる可能性もある。こうした中で、重症者数も過去最大規模となり、死亡者数も増加傾向となっているが、高齢の感染者や高齢者施設のクラスターも増加しており、今後さらに死亡者が大きく増加することが懸念される。これまでにない災害レベルの状況にあるとの認識での対応が必要。また、20才未満の感染者が増加している。今後夏休み明けで学校が再開するが、感染が拡大しないよう対策が必要。ただし、小中高大学などの教育機関によって影響や対応法も異なることに注意が必要。
  • 中等症や重症患者の入院調整対応が困難となり、手術など一般医療の制限や救急での搬送が困難な事例も生じており、今後、コロナ対応の更なる強化に伴い、更なる制限も予想される。一刻も早く、現下の感染拡大を速やかに抑えるとともに、医療体制の強化、保健所業務の重点化や支援の強化などが必要である。
  • 感染力が高いデルタ株はこれまでとは違うレベルのウイルスであるという危機感を行政と市民が共有し、今一層の取組が必要。国や自治体においては、これまでの対策のより一層の強化やきめ細やかな呼びかけを行う。
★ 命を守るために必要な行動を

普段会わない人と会う機会が感染リスクを高めることが示されており、そのような感染の機会をできるだけ減らすことが必要。

既にワクチンを接種した方も含め、市民は、自分や家族を守るためにも、外出はなるべく避けて(最低でもこれまでの半分以下の頻度に)、家庭で過ごしていただくことが必要。外出せざるを得ない場合も遠出をさけ、混雑した場所や時間など感染リスクが高い場面を避けること。引き続き、ワクチン接種を積極的に進めるとともに、少しでも体調が悪ければ検査・受診を行うこと。

★ 学校などでの感染対策の徹底を

デルタ株の流行以降、10代以下の感染者数は増加傾向にある。保育所などの福祉施設や小中高大学などの教育機関においては、国立感染症研究所実地疫学センターから示された対策に関する提案を参考にした感染対策の強化が求められる。

★ 基本的な感染対策の徹底を

基本的感染防止策のほか、業種別ガイドラインの再徹底、職場での感染防止策の強化、会議の原則オンライン化とテレワーク推進(特に基礎疾患を有する方や妊婦など)、有症状者は出社させず休ませることなどを徹底すべき。

★ 最大限に効率的な医療資源の活用を

都道府県が主体となって地域の医療資源を最大限活用して、新たに特例承認された中和抗体薬の活用や、重症化に迅速に対応できる体制を早急に整備することにより、必要な医療を確保することが求められる。さらに、全国的に厳しい感染状況が少なくとも当面は続くという前提で、改正された感染症法第16条の2の活用や臨時の医療施設などの整備を含め、早急に対策を進める必要がある。

 

感染状況分析・評価グラフ等 

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan