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掲載日:2021年9月2日

第50回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年9月1日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第50回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

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感染状況について

全国の新規感染者数は、減少の動きが見られるが、報告日別では、直近の1週間では10万人あたり約116と過去最大の水準となり、ほぼ全ての地域でこれまでに経験したことのない規模の感染者数の発生が継続している。首都圏を中心に減少の動きがみられるが、中京圏では依然として高い水準で増加傾向となっており、お盆の影響などから感染者数の減少につながっていない地域もある。 年齢別に10万人あたりの感染者数をみると、20代が依然最多だが、10代の感染者数が増加し、30代に並んできており地域によっては30代を超えている。

これまでの感染者数の急速な増加に伴い、重症者数も急激な増加が継続し、過去最大の規模となり、死亡者数も増加が続いている。公衆衛生体制・医療提供体制が全国各地で非常に厳しくなっており、災害時の状況に近い局面が継続している。

実効再生産数:
全国的には、直近(8/15時点)で1.06と1を上回る水準が続いており、首都圏では0.97、関西圏では1.15となっている。

感染状況の分析【地域の動向等】

 ※新規感染者数の数値は、報告日ベースの直近1週間合計の対人口10万人の値。

首都圏(1都3県)
東京では 、新規感染者数は減少に転じているが、依然として約177で非常に高い水準となっている。入院者数は20-50代を中心に増加が継続。60代以上でも増加が継続。人工呼吸器又は人工心肺を使用している重症者数では、40-60代を中心に高止まりだが、70代以上の増加が継続している。入院者数と重症者数は共に過去最高の水準で、夜間をはじめ新規の入院受け入れ・調整が困難な事例が生じている。さらに、救急医療や集中治療室等の受け入れなど一般医療の制限も生じている。 埼玉、千葉、神奈川でも、新規感染者数は減少に転じ、それぞれ、約136、152、170。いずれも10-50代が中心。病床、重症病床の使用率は高止まりしており、特に、神奈川では、重症病床使用率が8割を超える厳しい状況が続いている。埼玉、神奈川の夜間滞留人口は低い水準を維持しているが、東京、千葉の夜間滞留人口は、お盆明けから増加に転じており、首都圏では再度感染拡大に転じることが危惧される。
沖縄
新規感染者数は約287と全国で最も高い水準だが、今週先週比が0.91で、減少の動き。20-30代が中心。病床使用率及び重症病床使用率は9割前後を継続し、厳しい状況が続いている。夜間滞留人口は、足下で増加に転じており、新規感染者数の動向に注視が必要。
関西圏

大阪では、新規感染者数は今週先週比が1.09で増加傾向が続き、約198。20-30代が中心。入院者数は増加が続き、重症者数も増加。夜間滞留人口はお盆明けから増加に転じており、感染の拡大が継続する可能性もある。京都、兵庫では、新規感染者数の上げ止まりの動きがみられ、それぞれ、約134、120。いずれも、入院者数が急速に増加。京都では、重症病症使用率は高止まりしており、厳しい状況となっている。重点措置から緊急事態措置に移行した滋賀では、新規感染者数の減少の動きが見られ、約88。京都では、夜間滞留人口が増加に転じており、注視が必要。

その他、奈良では新規感染者数の増加傾向が続き、約103。和歌山では減少の動きが見られ、約47。

中京・東海
重点措置から緊急事態措置に移行した愛知では、今週先週比が1.39と新規感染者数の急速な増加傾向が続き、約168。一方、岐阜では上げ止まりの動きが見られ、約111、三重、静岡では減少の動きが見られ、それぞれ、約143、100。いずれも、入院者数、重症者数の増加傾向が継続。夜間滞留人口は岐阜、愛知、静岡では低い水準で推移。三重では減少に転じており、新規感染者数の減少につながるか注視が必要。
北海道
重点措置から緊急事態措置に移行。新規感染者数は今週先週比が0.78で、減少の動きが見られ、約54(札幌市約79)。重症病床使用率は2割を切る水準が継続。夜間滞留人口の減少は見られるが、依然高い水準であり、今後の感染状況への影響が懸念。
九州

福岡では、新規感染者数は、今週先週比が0.83で、減少の動きが見られるが、約123と依然100を超える水準。入院者数は高止まりし、厳しい状況となっている。重症病床使用率は2割を切る水準。夜間滞留人口はお盆明けから増加に転じており、今後の感染状況への影響が懸念。熊本、鹿児島では、新規感染者数は減少の動きが見られ、それぞれ約87、62。新たに重点措置とされた佐賀、長崎、宮崎では、減少の動きが見られ、それぞれ、約71、31、62。

その他、大分では、減少の動きが見られるが、約90と依然として高い水準となっている。

その他緊急事態措置対象地域
重点措置から緊急事態措置に移行した宮城、岡山、広島では、新規感染者数は減少の動きが見られ、それぞれ、約54、76、79。いずれも病床使用率が5割を超え、厳しい状況となっている。夜間滞留人口は、宮城では減少に転じ、岡山、広島は下げ止まり。新規感染者数の減少が続くか注視が必要。 茨城、栃木、群馬では、新規感染者数は減少の動きが見られ、それぞれ約62、61、83。特に、群馬では、病床使用率が7割を超える水準が継続し、厳しい状況が続いている。夜間滞留人口は茨城、栃木では低い水準を維持しており、新規感染者数の減少が続くか注視が必要。一方、群馬では、増加に転じており、今後の感染状況への影響が懸念。
その他重点措置対象地域

新たに重点措置に追加された高知では、新規感染者数が減少に転じる動きが見られ、約83。福島、石川では、新規感染者数は減少が続き、それぞれ、約30、33。

富山、山梨、香川、愛媛では、新規感染者数が減少し、それぞれ、約48、59、52、28。

上記以外
青森、福井、鳥取、島根、徳島では、それぞれ約52、37、31、31、52と25を超えて、増加傾向が続いており、今後の状況に注視が必要。

変異株に関する分析

B.1.617.2系統の変異株(デルタ株)は、スクリーニング検査での陽性率(機械的な試算、8/16-8/22)が約89%で、ほぼ全ての都道府県で8割を超えている。直近では各地で10割に近い状況と推計されており、B.1.1.7系統の変異株(アルファ株)からほぼ置き換わったと考えられる。

ワクチンの効果

国内でのワクチンの有効性(発症予防効果等)について、アルファ株からデルタ株の置き換わり期において、約9割との報告があるが、年代等により幅があり、デルタ株や免疫減衰の影響も鑑み、引き続き分析していくことが必要。

今後の見通しと必要な対策

  • 首都圏を中心に感染者数の減少の動きが見られている。これまでの7月、8月の連休、お盆、夏休みの影響が弱まっていくこと、今後の気候状況やワクチン接種がさらに進むなどの減少要因もあるが、大学などの学校再開や社会活動の活発化、滞留人口の増加の動向などもあり、再度感染者数の増加に繋がることも懸念される。これまでの感染の急拡大を受け、重症者数は過去最大規模となり死亡者数も過去の感染拡大期と比べれば低い水準であるものの増加が続いている。高齢の感染者や高齢者施設のクラスターも増加しており、今後さらに死亡者数が増加することが懸念される。
  • 依然として高水準の感染者数が続いており、引き続き、これまでにない災害レベルの状況にあるとの認識での対応が必要。 特に、医療・公衆衛生体制は非常に厳しい状況にあり、中等症や重症患者の入院調整対応が困難となり、手術など一般医療の制限や救急での搬送が困難な事例も生じている。現下の感染拡大を抑えるための対策を継続するとともに、医療体制の強化、保健所業務の重点化や支援の強化などが引き続き必要である。
  • 多くの市民の協力により、感染者数の減少の動きが見られている。今後も、着実な感染の抑制につながるよう、引き続き取組を継続することが必要。
★ 自分や家族の命を守るために必要な行動を

既にワクチンを接種した方も含め、市民は、自分や家族を守るためにも、外出はなるべく避けて(最低でもこれまでの半分以下の頻度に)、家庭で過ごしていただくことが必要。外出せざるを得ない場合も遠出をさけ、混雑した場所や時間など感染リスクが高い場面を避けること。引き続き、ワクチン接種を積極的に進めるとともに、少しでも体調が悪ければ検査・受診を行うこと。

★ 基本的な感染対策の徹底を

マスクの着用を含め基本的感染防止策のほか、業種別ガイドラインの再徹底、職場での感染防止策の強化、従業員がワクチンを受けやすい環境(ワクチン休暇など)の提供、会議の原則オンライン化とテレワーク推進(特に基礎疾患を有する方や妊婦など)、有症状者は出社させず休ませることなどを徹底すること。特にマスクについては、飛沫防止効果の高い不織布マスクなどの活用を推奨する。

★ 学校の再開において適切な対応を

感染拡大に繋がらないよう、ガイドライン等に基づき、保育施設・教育機関ごとに適切な対応を講じることが必要。

★ 最大限に効率的な医療資源の活用を

特例承認された中和抗体薬の活用や、重症化に迅速に対応できる体制の早急な整備を進め、地域の医療資源を最大限活用して、必要な医療を確保することが求められる。さらに、全国的に厳しい感染状況が少なくとも当面は続くという前提で、臨時の医療施設などの整備を含め、早急に対策を進める必要がある。

 

感染状況分析・評価グラフ等 

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan