更新日:2024年4月19日
2023年5月8日より新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律上5類感染症に位置付けられました(過去のサーベイランス週報はこちら)。引き続き、COVID-19の流行状況を複数の指標を用いて精査し、解釈を行っています。
注意事項にも記載していますが、報告数は暫定値であり、変更の可能性があるので十分にご注意ください。
インフルエンザ/COVID-19定点に報告された患者数とともに、2023年9月25日より基幹定点からのCOVID-19の入院患者の届出が開始されたことをうけ、基幹定点に報告された入院患者数の集計、並びにゲノムサーベイランスの結果を用いて解釈をおこなっています。週1回の更新を予定しています。
2023年19週から38週までのサーベイランス週報はこちら
Figures from the latest COVID-19 weekly surveillance update
Fig.1 Number of cases reported per sentinel nationwide
Fig.2 Number of new admissions reported from designated sentinel nationwide
Fig.3 Number of cases reported per sentinel by prefecture
Fig.4 Number of new admissions reported from designated sentinel by region
全国の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行状況について複数の指標を用いてまとめています。週ごとに「傾向(トレンド)」と「水準(レベル)」を明記し、感染の流行の状況について、解釈を行っています。広くCOVID-19に関する疫学情報を提供・還元することを目的としており、COVID-19対策の参考として活用していただければ幸いです。
なお、週報で用いている定点当たり報告数及び基幹定点からの入院患者数の詳細は、感染症発生動向調査 週報(IDWR)をご参照ください。また、2023年第38週まで用いていたG-MISの詳細は、医療機関等情報支援システム(G-MIS)をご参照ください。
小児血清疫学調査は検体採取に困難も多く, 国内のみならず国外においても新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に関する小児抗体保有状況の報告は少ない。今回, 小学4年生対象の生活習慣病予防健診(以下, 健診)が毎年行われている香川県市町のご協力のもと, 2020年度から3年間, 同一地域においてSARS-CoV-2感染診断歴(以下, 診断歴), 新型コロナワクチン(以下, ワクチン)接種歴等とともに抗SARS-CoV-2抗体保有状況の変化を追跡し, 小児における感染拡大状況, 感染およびワクチン接種による抗体獲得状況を検討した。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は2023年5月8日から感染症法上の2類相当全数報告疾患から5類定点報告疾患に変更され, 感染症発生動向調査上は流行のトレンドとレベルの把握が中心となった。沖縄県では2023年4月後半から定点医療機関当たり報告数の増加がみられ, 5月には10人を超え, 第26週(6月26日~7月2日)には48.39人に達した。一方, 同週の日本全体の定点当たり報告数では7.24人と, 大きな隔たりがあり, 沖縄県は定点化変更後, 最も早くCOVID-19の大きな流行を認めた自治体であった。県内医療施設ではひっ迫状況を来しており, その背景情報の収集解析は保健行政・医療機関がCOVID-19対策を構築するうえで重要と考えられた。なお本報告は2023年7月末時点の情報に基づく。
国立感染症研究所感染症疫学センター第六室
新型コロナウイルス感染症対策本部
(掲載日:2023年9月26日)
【背景】
日本ではこれまでに3380万例以上の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)症例と、74,694例の死亡例が報告されている(2023年5月9日時点)。新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理システム(HER-SYS)はCOVID-19のサーベイランスとして活用されてきた。届出時点の重症度については届出に必須であり把握されている一方で、最終的な転帰や重症度の入力は必須ではなく、網羅的な把握が困難であった。このため、それまでの流行と比べて大きく報告数が増加したオミクロン流行期に重症例や死亡例を把握するため、厚生労働省より自治体に対して検査陽性となった重症例および死亡例に関する自治体における把握情報の提供依頼が発出された。本検討は、厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部の依頼で実施され、これまで中間解析結果を厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードで報告を行ってきた。今回、感染症法上の位置づけが5類感染症に変更され、HER-SYSによるサーベイランスの運用が停止されたのを受けて、2023年5月31日までに自治体から情報提供されたCOVID-19重症例および死亡例について記述する。死亡例に関する分析は、IASR 2023年7月号にて公表している。
なお、報告された症例は必ずしも各自治体の当該報告期間に確認された全ての重症例・死亡例ではないこと、COVID-19が死亡に直接関係した死因であるかは検討できなかったことに注意が必要である。
続きを読む:新型コロナウイルス感染症重症例および死亡例の疫学像と死因、重症化に関連する因子
厚生労働省
国立感染症研究所
(掲載日:2023年8月 9日)
(更新日:2023年 8月15日)
【背景・目的】
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2023年4月時点において世界で6億人以上が感染し約600万人以上が死亡している公衆衛生上、極めて脅威の大きい感染症である。新型コロナウイルスに対する我が国の一般住民における抗体保有状況の継続的な検討は、今後のCOVID-19対策に重要である。2020年度、2021年度と厚生労働省および国立感染症研究所が主体となって大規模な血清疫学調査が実施された。本調査は、昨年度までの調査を引き継ぎ、我が国における新型コロナウイルス感染症の疾病負荷の把握と新型コロナワクチン接種で誘導された抗体の保有状況を検討することを目的として、昨年度までの調査と同様に5都府県をおいて実施された。国内の検査陽性者数は2023年4月30日時点において、3372万人が確認されているが実際の感染者数は把握されている数よりも高いことが推測され、信頼性の高い結果を得るために抗体検査の実施が求められている。そこで、2022年度は先般の調査に準拠し、被験者の年齢・性別、職業、ワクチン接種状況や新型コロナウイルス感染症の診断歴等を聴取するとともに抗体保有状況を調査した。本調査により、様々な属性の集団における既感染者割合を推定することが可能となり、今後の感染症対策にとって有用な知見が得られることが期待できる。本報告書では、2022年12月および2023年2月に実施された第5回・第6回の血清疫学調査の結果を示す。
続きを読む:2022年度新型コロナウイルス感染症に対する血清疫学調査報告
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因ウイルスである重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は, コロナウイルス科ベータコロナウイルス属に分類され, 約30,000塩基からなる1本鎖・プラス鎖RNAゲノムを持つ。
2022年1月以降, オミクロンの流行により新型コロナウイルス感染症(COVID-19)症例は, 以前に比してその流行規模が大きくなった1)。死亡者の多くは高齢者だが, 高齢者以外の死亡も認められた。死亡リスクが比較的低いとされている年代の死亡者の背景や発症から死亡に至るまでの経過を把握することは, 公衆衛生対策を検討するうえで重要である。本調査はオミクロン流行にともなう長崎県内の75歳未満のCOVID-19罹患後死亡者の特徴の把握を目的に積極的疫学調査を行った。
続きを読む: 長崎県内における75歳未満の新型コロナウイルス感染症罹患後の死亡例に関する実地疫学調査, 2022年1月~2023年1月
2023年5月29日
厚生労働省
国立感染症研究所
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)においては、無症状病原体保有者の存在などから全ての感染者の診断は困難であるため、これまでに診断された症例の累積報告数よりも実際の累積感染者数が多い可能性が指摘されている。これまでに厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部と国立感染症研究所では、我が国における新型コロナウイルス感染症の疾病負荷の把握と新型コロナワクチン接種で誘導された抗体の保有状況を検討することを目的として、5都府県をおいて住民調査をベースにした大規模な血清疫学調査を計6回(2020年6月、2020年12月、2021年12月、2022年2月-3月、2023年11月-12月、2023年2月-3月)[1]、および献血検体を用いて全国47都道府県において1回(2022年11月)[2]、抗体保有状況の把握を行ってきた。2022年11月における全国を対象とした血清疫学調査では感染によって誘導されるSARS-CoV-2抗ヌクレオカプシド抗体(抗N抗体)保有割合は概ね29%程度であったが、その後も2022年から2023年にかけての冬の流行(いわゆる第八波)が生じたことから、血清疫学調査により市中感染状況の推移を把握する必要があった。そこで、本調査では日本赤十字社による協力のもと、再度、全都道府県を対象に、献血時の検査用検体の残余血液を用いて、2023年2月19日〜27日における献血者における抗N抗体保有割合を調査した。本報告書ではその結果を示す。
調査対象者
本調査は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)第15条第2項に基づき実施した。調査対象者は2023年2月19日〜27日に日本赤十字社の献血ルーム等を訪れ、全血献血又は成分献血の基準を満たし(対象年齢は16〜69歳)、以下のいずれにも該当しない者とした。
上記の対象者から献血時に採血された検査用検体の残余血清のなかから、血清学的検査の対象となる検体を以下の方法で抽出した。抽出数を定めるために、全都道府県を対象として、人口動態調査に基づく令和3年10月1日時点の推計人口、令和5年1月17日時点の累積罹患割合を想定される有病率として、有意水準0.05、許容誤差範囲5%、無作為抽出を前提とし、抽出する検体数(以下「検査検体数」という。)を設定した。都道府県毎に決められた検査検体数に従い、系統的抽出法又は無作為抽出法により、統計学的に偏りが生じないよう収集した。抽出にあたっては、各都道府県内で地理的な差異が出ないように各都道府県の実情に応じて適切な方法が選択された。
血清学的検査
抽出された残余血清(1.0mL程度)を用いて本業務委託先の民間検査機関において抗N抗体を測定した。抗体の測定はロシュ・ダイアグノスティックス社Elecsys® Anti-SARS-CoV-2を用いて実施した。陽性判定については、メーカーの規定したカットオフ値(抗N抗体カットオフインデックス(COI)≥1.0)に従った。なお、現在、国内で使用されているワクチン(mRNAワクチンおよびウイルスベクターワクチン、組換えタンパク質ワクチン)は、いずれもスパイク(S)抗原をコードする配列以外のウイルスゲノム配列またはS抗原以外の抗原を有していないことから、抗N抗体はウイルス感染のみで誘導される。よって、抗N抗体陽性であることは、既感染であることを意味する。残余検体については、委託業者において適切に廃棄された。当該残余血液に係る付帯情報(検体と突合可能な検体ID、年齢、性別、採取した血液センターID及び当該血液センターの所在都道府県及び市町村名)が厚生労働省に提供された。
統計解析
血清疫学調査から得られたデータに対して、都道府県ごとの年齢分布や性別の人口構成比を反映するために都道府県、性別、年齢階級ごとにウェイトを計算し集計した。ベースラインの人口は2021年10月1日現在の人口推計(都道府県、年齢(5歳階級)、男女別人口)データを利用した。本調査結果の数値や比率(%)は全てウェイトバック後の数値を四捨五入したものであるため、単純な合計とは異なる。割合の95%信頼区間(CI: Confidence Interval)に関しては、binomial exact法を用いて算出した。なお、比較のために、2022年11月に行われた血清疫学調査から得られた抗N抗体陽性割合も掲載している。
研究対象期間(2023年2月19日〜27日)において、13,121検体を収集した。本調査では日本全体の人口の42.0% (95%CI: 41.2-42.9%)が抗N抗体陽性であることが判明した(表1)。以下に、
のウェイトバック後の推定された抗N抗体陽性割合とその95%CIを示す。
本調査では、我が国における新型コロナウイルス感染症の抗体保有状況を検討することを目的として、2023年2月に47都道府県において献血時の検査用検体の残余血液を用いて抗N抗体保有割合を調査した。
調査対象期間において推定された抗N抗体保有割合を都道府県別にみると、全て都道府県で抗N抗体陽性割合の点推定値が増加しており、これは前回調査の2022年11月以降のいわゆる第八波の影響を捉えているものと考えられる。一方でその増加の程度には地域差がみられた。宮城、東京、愛知、大阪、福岡においては、39.8% (95%CI: 33.8-46.0%)、44.4% (95%CI: 38.9-50.0%)、56.5% (95%CI: 50.7-62.2%)、54.1% (95%CI: 48.4-59.7%)、57.2% (95%CI: 51.6-62.7%)であった (表2)。比較対象として、これまでに厚生労働省と国立感染症研究所により実施された、2022年11月の血清疫学調査の結果も同時に示す。この調査においては宮城、東京、愛知、大阪、福岡においてそれぞれ17.3% (95%CI: 11.3-24.8%)、34.5% (95%CI: 28.7-40.7%)、28.5% (95%CI: 22.5-35.2%)、43.0% (95%CI: 36.9-49.3%)、35.8% (95%CI: 29.8-42.3%)であった。なお、いくつかの都道府県では推定された95%CIは両調査で重なっており、増加については必ずしも統計的に有意であるとは限らない点に注意する。
同様に、性年齢階級別に抗N抗体保有割合をみると、2022年11月調査同様、同一年齢階級の中では性差はみられなかった。また、抗N抗体保有割合を年齢階級ごとにみると、(30代で多少の上昇は見られるものの)若年層で高く、年齢が高くなるにしたがって割合が減っていく傾向が観察された。この傾向も前回の2022年11月の調査の結果と合致する。
最後に、同時期の海外における献血データを用いた血清疫学調査の結果としては、以下のものが挙げられる。カナダは2023年2月1日から28日まで計31,755サンプルの血清疫学調査を行い[3]、抗N抗体保有割合を77.6% (95%CI: 77.1.-78.6%)としており、同年1月の調査の76.7% (95%CI: 76.3-77.2%)から微増としていることを報告した。また、17-24歳の年齢群が88.4% (95%CI: 87.4-89.4%)と最も高い抗N抗体保有割合を示しているとしている。同様に英国では2023年1月25日から3月17日までに収集された14,575サンプルの血清疫学調査により、抗N抗体保有割合を86.1% (95%CI: 85.4-86.7%)としている[4]。
本調査は日本における2022年11月以降の抗N抗体保有割合の推移を、47都道府県で献血検体を用いて検証した初めての大規模な血清疫学調査である。既感染の指標として使用されるワクチンでは誘導されない抗N抗体保有割合は日本全体としては42.0% (95%CI: 41.2-42.9%)であり、前回の2022年11月調査時点が28.6%(95%CI: 27.6-29.6%)であることを考えると(表1)、本調査での増分は主にいわゆる第八波での自然感染をした人口の割合を推定している可能性を示唆している。今後も継続的に既感染者割合を評価していくことにより、本感染症の流行動態の把握と評価の一助とすることが重要と考えられた。
更新日:2023年5月16日
本週報は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行状況を、時・人・場所の項目を用いて記述し、複数の指標を精査し、全国的な観点からまとめています。 「トレンド(傾向)」と「レベル(水準)」を明記し、疫学的な概念を用いて、状況把握の解釈を週ごとに行っています。 解釈については、注意事項にも記載していますが、特に直近の情報については、過小評価となりうる場合などがあるので十分にご注意下さい。 国や地方自治体のCOVID-19対策に従事する皆様とともに、広く国民の皆様にCOVID-19に関する情報を提供し、還元する事を目的としております。 COVID-19対策・対応の参考資料として活用していただければ幸いです。
2022年第43週以降の週報において、1.1全国の新規症例報告数と2.1地域別の新規症例報告数の出典に不備があったこと、2.1地域別の新規症例報告数の図の集計方法が凡例と異なっていたために、再集計のうえ差し替えてあります。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。
PDF:2023年第18週(5月1日~5月7日; 5月8日現在)掲載日:2023年5月16日
PDF:2023年第17週(4月24日~4月30日; 5月1日現在)掲載日:2023年5月8日
PDF:2023年第16週(4月17日~4月23日; 4月24日現在)掲載日:2023年5月1日
PDF:2023年第15週(4月10日~4月16日; 4月17日現在)掲載日:2023年4月24日
PDF:2023年第14週(4月3日~4月9日; 4月10日現在)掲載日:2023年4月17日
PDF:2023年第13週(3月27日~4月2日; 4月3日現在)掲載日:2023年4月10日
PDF:2023年第12週(3月20日~3月26日; 3月27日現在)掲載日:2023年4月3日
PDF:2023年第11週(3月13日~3月19日; 3月20日現在)掲載日:2023年3月27日
PDF:2023年第10週(3月6日~3月12日; 3月13日現在)掲載日:2023年3月20日
PDF:2023年第9週(2月27日~3月5日; 3月6日現在)掲載日:2023年3月13日
PDF:2023年第8週(2月20日~2月26日; 2月27日現在)掲載日:2023年3月5日
PDF:2023年第7週(2月13日~2月19日; 2月20日現在)掲載日:2023年2月27日
PDF:2023年第6週(2月6日~2月12日; 2月13日現在)掲載日:2023年2月20日
PDF:2023年第5週(1月30日~2月5日; 2月6日現在)掲載日:2023年2月14日
PDF:2023年第4週(1月23日~1月29日; 1月30日現在)掲載日:2023年2月6日
PDF:2023年第3週(1月16日~1月22日; 1月23日現在)掲載日:2023年1月30日
PDF:2023年第2週(1月9日~1月15日; 1月16日現在)掲載日:2023年1月23日
PDF:2023年第1週(1月2日~1月8日; 1月9日現在)掲載日:2023年1月16日
PDF:2022年第52週(12月26日~1月1日; 1月2日現在)掲載日:2023年1月15日
PDF:2022年第51週(12月19日~12月25日; 12月26日現在)掲載日:2023年1月13日
PDF:2022年第50週(12月12日~12月18日; 12月19日現在)掲載日:2022年12月26日
PDF:2022年第49週(12月5日~12月11日; 12月12日現在)掲載日:2022年12月19日
PDF:2022年第48週(11月28日~12月4日; 12月5日現在)掲載日:2022年12月12日
PDF:2022年第47週(11月21日~11月27日; 11月28日現在)掲載日:2022年12月05日
PDF:2022年第46週(11月14日~11月20日; 11月21日現在)掲載日:2022年11月28日
PDF:2022年第45週(11月7日~11月13日; 11月14日現在)掲載日:2022年11月21日
PDF:2022年第44週(10月31日~11月6日; 11月7日現在)掲載日:2022年11月14日
PDF:2022年第43週(10月24日~10月30日; 10月31日現在)掲載日:2022年11月17日
PDF:2022年第42週(10月17日~10月23日; 10月24日現在)掲載日:2022年11月8日
PDF:2022年第41週(10月10日~10月16日; 10月18日現在)掲載日:2022年10月24日
PDF:2022年第40週(10月3日~10月9日; 10月11日現在)掲載日:2022年10月18日
PDF:2022年第39週(9月26日~10月2日; 10月4日現在)掲載日:2022年10月13日
PDF:2022年第38週(9月19日~9月25日; 9月27日現在)掲載日:2022年10月3日
PDF:2022年第37週(9月12日~9月18日; 9月20日現在)掲載日:2022年9月26日
PDF:2022年第36週(9月5日~9月11日; 9月13日現在)掲載日:2022年9月20日
PDF:2022年第35週(8月29日~9月4日; 9月6日現在)掲載日:2022年9月12日
PDF:2022年第34週(8月22日~8月28日; 8月30日現在)掲載日:2022年9月5日
PDF:2022年第33週(8月15日~8月21日; 8月23日現在)掲載日:2022年8月29日
PDF:2022年第32週(8月8日~8月14日; 8月16日現在)掲載日:2022年8月22日
PDF:2022年第31週(8月1日~8月7日; 8月9日現在)掲載日:2022年8月15日
PDF:2022年第30週(7月25日~7月31日; 8月2日現在)掲載日:2022年8月8日
PDF:2022年第29週(7月18日~7月24日; 7月26日現在)掲載日:2022年8月1日
PDF:2022年第28週(7月11日~7月17日; 7月19日現在)掲載日:2022年7月25日
PDF:2022年第27週(7月4日~7月10日; 7月12日現在)掲載日:2022年7月18日
PDF:2022年第26週(6月27日~7月3日; 7月5日現在)掲載日:2022年7月11日
PDF:2022年第25週(6月20日~6月26日; 6月28日現在)掲載日:2022年7月4日
PDF:2022年第24週(6月13日~6月19日; 6月21日現在)掲載日:2022年6月27日
PDF:2022年第23週(6月6日~6月12日; 6月14日現在)掲載日:2022年6月20日
PDF:2022年第22週(5月30日~6月5日; 6月7日現在)掲載日:2022年6月13日
PDF:2022年第21週(5月23日~5月29日; 5月31日現在)掲載日:2022年6月6日
PDF:2022年第20週(5月16日~5月22日; 5月24日現在)掲載日:2022年5月30日
PDF:2022年第19週(5月9日~5月15日; 5月17日現在)掲載日:2022年5月23日
PDF:2022年第18週(5月2日~5月8日; 5月10日現在)掲載日:2022年5月16日
PDF:2022年第16週(4月18日~4月24日; 4月26日現在)掲載日:2022年5月2日
PDF:2022年第15週(4月11日~4月17日; 4月19日現在)掲載日:2022年4月25日
PDF:2022年第14週(4月4日~4月10日; 4月12日現在)掲載日:2022年4月18日
PDF:2022年第13週(3月28日~4月3日; 4月5日現在)掲載日:2022年4月11日
PDF:2022年第12週(3月21日~3月27日; 3月29日現在)掲載日:2022年4月4日
PDF:2022年第11週(3月14日~3月20日; 3月22日現在)掲載日:2022年3月28日
PDF:2022年第10週(3月7日~3月13日; 3月15日現在)掲載日:2022年3月22日
PDF:2022年第9週(2月28日~3月6日; 3月8日現在)掲載日:2022年3月14日
PDF:2022年第8週(2月21日~2月27日; 3月1日現在)掲載日:2022年3月7日
PDF:2022年第7週(2月14日~2月20日; 2月22日現在)掲載日:2022年2月28日
PDF:2022年第6週(2月7日~2月13日; 2月15日現在)掲載日:2022年2月21日
PDF:2022年第5週(1月31日~2月6日; 2月8日現在)掲載日:2022年2月14日
PDF:2022年第4週(1月24日~1月30日; 2月1日現在)掲載日:2022年2月7日
PDF:2022年第3週(1月17日~1月23日; 1月25日現在)掲載日:2022年1月31日
PDF:2022年第2週(1月10日~1月16日; 1月18日現在)掲載日:2022年1月24日
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PDF:2021年第49週(12月6日~12月12日; 12月14日現在)掲載日:2021年12月20日
PDF:2021年第48週(11月29日~12月5日; 12月7日現在)掲載日:2021年12月13日
PDF:2021年第47週(11月22日~11月28日; 11月30日現在)掲載日:2021年12月6日
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2023年4月28日
国立感染症研究所
NPO法人 日本ECMOnet
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチンの開発は未曾有のスピードで進み、ファイザー社製およびモデルナ社製のmRNAワクチンは大規模なランダム化比較試験で高い有効性(vaccine efficacy)が示された1-3。国内においても、国立感染症研究所にて、複数の医療機関や民間検査会社の協力のもとで、発熱外来等で新型コロナウイルスの検査を受ける者を対象として、症例対照研究(test-negative design)を実施し、実社会における有効性(vaccine effectiveness)として、主に軽症の発症予防効果を検討してきた4-11。しかし、新型コロナワクチンの重要な効果の一つとしての重症肺炎の予防効果については国内の知見は非常に乏しかった。今回、国立感染症研究所と日本ECMOnet が共同で、デルタ流行期〜オミクロン流行初期(BA.1/BA.2流行期)における呼吸不全を伴うCOVID-19肺炎発症(中等症Ⅱ以上相当)および人工呼吸器を要するCOVID-19肺炎発症(重症相当)に対する予防効果を、症例対照研究を実施して検討することとした。
2021年8月1日から2022年6月30日までに複数の急性期病院に呼吸不全で入院した者(診断が酸素を必要とするCOVID-19肺炎、COVID-19以外の肺炎、心不全、その他呼吸器疾患等)で、16歳以上の者を対象とした。PCR、抗原検査等の検査の種類を問わず、検査陽性者を症例群(ケース)、検査陰性者を対照群(コントロール)と分類した。同一患者は初回の入院のみが組み入れられ、本解析においては、以下の者は除外して解析した:(1)発症日が不明の者、(2)発症15日以降に入院した者、(3)入院中に発症した者、(4)発症8日以上前または発症15日以降に検査された者、(5)入院15日以上前または入院15日以降に検査された者、(6)在宅酸素療法中または在宅人工呼吸器使用中の者、(7)入院15日以上前または15日以降に酸素使用を開始された者、(8)入院15日以上前または20日以降に人工呼吸器を使用開始された者、(9)3ヶ月以上前の新型コロナウイルス感染症診断歴のある者、(10)免疫不全の者または免疫抑制剤を使用している者。補足として、発症7日前以降に検査された者を組み入れ、発症8日以上前に検査された者を除外した理由は、例えば無症状スクリーニングで陽性になり、その後発症して重症化した者も含めるために発症前に検査された者も組み入れることとしたが、発症から8日以上遡ると陽性となる可能性が低くなるためである。また、入院14日前以降に検査された者を組み入れ、入院15日以上前に検査された者を除外した理由は、COVID-19においては発症後数日〜最大2週間後に重症化するため、発症直後に検査陽性となり、その後COVID-19肺炎として入院した者を含めるためである。
期間としては、2021年8月1日から2021年11月31日をデルタ流行期、2022年1月1日から2022年6月30日をオミクロン流行初期(BA.1/BA.2流行期)とした。なお、2021年12月1日から2021年12月31日に入院した症例は非流行期/置き換わり期として予防効果の推定には含めなかった。
ワクチン接種歴については、(1)未接種、(2)1回接種から13日以内、(3)1回接種から14日以降または2回接種から13日以内、(4)2回接種から14日-6ヶ月(14-181日)、(5)2回接種から6ヶ月以降(181日以降)、(6)3回接種から13日以内、(7)3回接種から14日-6ヶ月(14-181日)、(8)3回接種から6ヶ月以降(181日以降)、の8つのカテゴリーに分けた。いずれも1価ワクチン(従来株ワクチン)のみを受けた者であり、デルタ流行期は、国内において3回接種が未実施であったことからカテゴリー1-5のみとした。なお、ワクチンの最終接種日が不明の者は本解析では除外した。この影響をみるために、最終接種日不明症例も含む接種回数別の解析も行った。
ロジスティック回帰モデルを用いて、オッズ比と95%信頼区間(CI)を算出した。多変量解析における調整変数としては、先行研究等を参照し、入院時年齢群、性別、独自の重症化リスクスコア(0, 1, 2, 3, 4, 5, 6+)*、過去1年間の入院有無(自院または他院)、喫煙歴、入院医療機関の所在都府県、入院日のカレンダー週(2週ごと)をモデルに組み込んだ。ワクチン有効率は(1-調整オッズ比)×100%で推定した。
人工呼吸器を要するCOVID-19肺炎(重症相当)に対する予防効果を検討するために、症例群を、人工呼吸器を要するCOVID-19患者に限定した解析も行った(対照群については全ての呼吸不全の患者を含んでいる)。本調査は国立感染症研究所および協力医療機関において、ヒトを対象とする医学研究倫理審査で承認され、実施された(国立感染症研究所における審査の受付番号1454、1527)。
9都府県の21医療機関において、2021年8月1日から2022年6月30日までに複数医療機関に急性呼吸不全で入院した者で解析可能であった2,244名が組み入れられた。発症日が不明の者10名、発症15日以降に入院した者11名、入院中に発症した者20名、発症8日以上前または発症15日以降に検査された者41名、入院15日以上前または入院15日以降に検査された者46名、在宅酸素療法中または在宅人工呼吸器使用中の者60名、入院15日以上前または15日以降に酸素使用を開始された者10名、入院15日以上前または20日以降に人工呼吸器を使用開始された者8名、3ヶ月以上前の新型コロナウイルス感染症診断歴のある者9名、免疫不全または免疫抑制剤を使用している者42名が除外され、1987名が解析に含まれた。期間別では、デルタ流行期1025名、オミクロン流行初期(BA.1/BA.2流行期)909名、2021年12月の非流行期53名であった。解析に含まれた1,987名(うち陽性1,511名(76.0%))においては、年齢中央値(範囲)68(52-82)歳、男性1,329名(66.9%)、女性658名(33.1%)であった(表1)。ワクチンの種類(製造会社)は、全ての回で判明している者において、ファイザー社製が86.8%、モデルナ社製が7.5%、mRNAワクチンの交互接種が5.0%、その他のワクチンが0.7%であった。ワクチンの最終接種日が不明の者は217名(10.9%)であった。
ワクチン接種歴を接種回数および接種後の期間別で8つのカテゴリーに分け、検査陽性者(症例群)と検査陰性者(対照群)とで比較した(表2、表3)。
呼吸不全患者において、未接種者を参照項とする調整オッズ比は、デルタ流行期における2回接種後14日-6ヶ月では0.040 (95%CI 0.016-0.099)(表2A)、オミクロン流行初期における2回接種後6ヶ月以降では0.578 (95%CI 0.280-1.193)、ブースター(3回目)接種後14日-6ヶ月では0.144 (95%CI 0.065-0.319)であった(表2B)。
人工呼吸器を要するCOVID-19患者と呼吸不全の対照群において、未接種者を参照項とする調整オッズ比は、デルタ流行期における2回接種後14日-6ヶ月では0.001 (95%CI 0.000-0.015) (表3A)、オミクロン流行初期における2回接種後6ヶ月以降では0.084 (95%CI 0.011-0.627)、3回接種後14日-6ヶ月では0.004 (95%CI 0.000-0.069)であった(表3B)。なお、サンプルサイズの制約から、sparse data bias等モデルによるバイアスの影響もあり得るので解釈に注意が必要である。
最終接種日不明症例も含む接種回数別の解析でも類似の結果であった。
調整オッズ比を元にワクチン有効率を算出したところ、デルタ流行期において、呼吸不全を伴うCOVID-19肺炎に対する2回接種後14日-6ヶ月の有効性は96.0% (95%CI 90.1-98.4%)、人工呼吸器を要するCOVID-19肺炎に対する2回接種後14日-6ヶ月の有効性は99.9% (95%CI 98.5-100.0%)であった(表4)。また、オミクロン流行初期においては、呼吸不全を伴うCOVID-19肺炎に対する2回接種後6ヶ月以降の有効性は42.2% (95%CI -19.3-72.0%)、3回接種後14日-6ヶ月の有効性は85.6% (95%CI 68.1-93.5%)であり、人工呼吸器を要するCOVID-19肺炎に対する2回接種後6ヶ月以降の有効性は91.6% (95%CI 37.3-98.9%)、3回接種後14日-6ヶ月の有効性は99.6% (95%CI 93.1-100.0%)であった(表4)。
本報告では、デルタ流行期〜オミクロン流行初期(BA.1/BA.2流行期)における呼吸不全を伴うCOVID-19肺炎および人工呼吸器を要するCOVID-19肺炎に対する予防効果を検討した。デルタ流行期においては、呼吸不全を伴うCOVID-19肺炎および人工呼吸器を要するCOVID-19肺炎に対して、ともに非常に高い有効性(点推定値:それぞれ96%、>99%)を示した。
オミクロン流行初期においては、2回接種後6ヶ月以降で、呼吸不全を伴うCOVID-19肺炎に対しては低下したが(点推定値:42%)、人工呼吸器を要するCOVID-19肺炎に対しては高い有効性(点推定値:92%)であった(ともに信頼区間が広く解釈に注意が必要)。また、ブースター(3回目)接種により、呼吸不全を伴うCOVID-19肺炎および人工呼吸器を要するCOVID-19肺炎に対して、ともに有効性が高まった(点推定値:それぞれ86%、>99%)。
諸外国においては、入院予防効果を検討した研究結果が数多く報告されている14-15。国内で承認されているワクチンにおいて、デルタ流行期には、一貫して高い重症化予防効果が示されてきた14。しかし、オミクロン流行期においては、2回接種およびブースター接種において、50-100%と幅のある重症化予防効果が報告されている15。本報告においては、COVID-19重症肺炎により特異的なアウトカム(転帰)である酸素需要を伴う症例や人工呼吸器を要する症例に限定して解析を行うことで、より確度の高い推定を目指した16。オミクロン流行期においては、入院患者で偶発的に新型コロナウイルス感染者が増えており、入院予防効果では有効性を過小評価しうるため、この考慮は特に重要となる。
本報告では、デルタ流行期における2回接種の高い重症化予防効果、オミクロン流行初期における3回接種の高い重症化予防効果が示された。2023年5月からCOVID-19の感染症法上の位置づけは5類感染症へ移行するが、今後も、有効性や安全性等のエビデンスに基づいて新型コロナワクチンの接種戦略を検討することが重要となる。
本調査および報告においては少なくとも以下の制限がある。まず、1つ目に交絡因子、誤分類等の観察研究の通常のバイアスの影響を否定できない。2つ目の制限として、上述の通り、ワクチンの最終接種日が不明の者(10.9%)は本解析では除外している。ただし、最終接種日不明症例も含む接種回数別の解析を行ったところ、類似の結果であった。3つ目の制限として、今回の調査では、ワクチンの製造会社ごとの有効性は評価していない。4つ目の制限として、本研究では陽性例についてウイルスゲノム解析を実施していない。ただし、デルタ流行期、オミクロン流行初期における解析であり大部分はそれぞれデルタ、BA.1/BA.2への感染であったとの想定のもとで実施している。5つ目の制限として、サンプルサイズの制約から、一部の推定では有効率の信頼区間が広いため、点推定値の解釈には注意が必要である。なお、人工呼吸器を要する症例と呼吸不全の対照群を比較した調整オッズ比は、点推計値が過大評価されている可能性(sparse data bias)があるが、この二群におけるワクチン接種歴の分布は大きく異なっていた。6つ目の制限として、3回接種の中長期的な重症化予防効果、4回接種およびオミクロン対応2価ワクチンの重症化予防効果は検討しておらず、これらは今後の検討課題である。
本調査および報告は以下の研究資金を利用して行われた:
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