国立感染症研究所

更新日:2021年12月6日

 

本週報は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行状況を、時・人・場所の項目を用いて記述し、複数の指標を精査し、全国的な観点からまとめています。 「トレンド(傾向)」と「レベル(水準)」を明記し、疫学的な概念を用いて、状況把握の解釈を週ごとに行っています。 解釈については、注意事項にも記載していますが、特に直近の情報については、過小評価となりうる場合などがあるので十分にご注意下さい。 国や地方自治体のCOVID-19対策に従事する皆様とともに、広く国民の皆様にCOVID-19に関する情報を提供し、還元する事を目的としております。 COVID-19対策・対応の参考資料として活用していただければ幸いです。

PDF:2021年第47週(11月22日~11月28日; 11月30日現在)掲載日:2021年12月6日 

PDF:2021年第46週(11月15日~11月21日; 11月23日現在)掲載日:2021年11月29日 

PDF:2021年第45週(11月8日~11月14日; 11月16日現在)掲載日:2021年11月22日 

PDF:2021年第44週(11月1日~11月7日; 11月9日現在)掲載日:2021年11月15日 

PDF:2021年第43週(10月25日~10月31日; 11月2日現在)掲載日:2021年11月8日

PDF:2021年第42週(10月18日~10月24日; 10月26日現在)掲載日:2021年11月8日

PDF:2021年第41週(10月11日~10月17日; 10月19日現在)掲載日:2021年11月8日

 

 

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事例探知当初の情報からは濃厚接触者を選定することが困難であった2事例に関する検討

(IASR Vol. 42 p263-265: 2021年11月号)

 
背景・方法

 変異ウイルスの流行や, 患者の急増など, その原因は多岐にわたると考えられるが, 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の積極的疫学調査の現場では, 「新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領」(2021年1月8日暫定版)(実施要領)1)に定義された濃厚接触者の範囲外で陽性者を認めることがある。そこで, 現時点での実施要領の濃厚接触者の定義を評価することを目的とし, 実施要領に定義された濃厚接触者の範囲外で探知されたCOVID-19患者に関する情報を記述した。2021年4~5月の期間に発生したN501Y変異を有する新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株が検出された保育施設および事務所の集団発生事例2事例を対象とし, 厚木保健福祉事務所(保健所)が収集した5月末日時点の積極的疫学調査のデータを収集した。なお, これら事例に関して, 2021年4月1日以降, COVID-19と検査診断された者を「陽性者」, 陽性者の実施要領に基づく濃厚接触者の条件を満たした者を「濃厚接触者」, 陽性者の感染可能期間に陽性者と接触し濃厚接触者の条件を満たさない者を「接触者」と定義した。

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国内における新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)L452R変異株置き換わりに関する分析

(IASR Vol. 42 p265-267: 2021年11月号)

 
背 景

 L452R変異を有する新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)変異株(以下, L452R変異株)は感染性・伝播性の増加や宿主の中和活性の減少に影響を与える可能性があるとされている1-3)。B.1.617.2系統(デルタ株) はスパイクタンパク上にL452R変異を有しており, 世界保健機関や国内では懸念される変異株(variants of concern:VOC)に位置付けられている。デルタ株はインドでは2021年3月以降に急速な拡大を認め, 国内では2021年4月に国内の患者から, 国内例として初めて検出された4)。国内では一部の国から委託された民間検査会社で, 5月下旬からL452R変異株スクリーニング検査を先行的に開始し, その後, 自治体に対してはこれまで実施していたN501Y変異株から変わり, L452R変異株スクリーニング検査の検査数の報告が求められるようになった5)。以前に報告を行ったN501Y変異株の置き換わりに関する分析やその後の解析では, 5月中旬時点において, 国内の大多数の都道府県でN501Y変異株への90%以上の置き換わりがみられた6)。今回は以前の報告と同様の手法を用いて, 国内におけるL452R変異株への置き換わりについての検討を行った。

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国内流行初期のSARS-CoV-2デルタ株国内探知症例の疫学的, 分子疫学的特徴について

(IASR Vol. 42 p267-269: 2021年11月号)

 

 2020年にインドで報告された新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新規変異株であるB.1.617.2系統の変異株(デルタ株)は, 2021年3月下旬に検疫で初めて検出され1), 4月に日本国内で感染者が確認されて以降, 8月中には大都市圏でゲノムが解読された症例の約9割がデルタ株になるなど, 急速に置き換わりが進んだ。国立感染症研究所(感染研)はデルタ株流行初期に国外からの流入起点が少なくとも7つあることをハプロタイプネットワークから同定し, 7つのうち6つは終息したこと, 残る1つからその後全国に流行が拡大したことを報告した2)。今回, 自治体公表資料, SARS-CoV-2感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)への登録情報から疫学情報を収集し, 7つの起点における流入および感染拡大の要因について検討を行った。

国立感染症研究所
(掲載日:2021年11月15日)

2021年11月7日現在、国内ではファイザー製、武田/モデルナ製、アストラゼネカ製の新型コロナワクチン( 以下、ワクチン )が使用されています。ファイザー製と武田/モデルナ製の接種対象は12歳以上で、アストラゼネカ製の接種対象は原則40歳以上です。米国では11月2日に開催された予防接種の実施に関する諮問委員会(Advisory Committee on Immunization Practices:ACIP)で、5~11歳の小児に対するファイザー社製ワクチンの接種推奨が決まりましたが(1)、国内ではまだ12歳未満の小児に接種可能なワクチンはありません。

11月5日現在の国内での総接種回数は1億9,104万4,946回で、このうち高齢者( 65歳以上 )は6,525万152回、職域接種は1,907万8,083回でした。11月5日時点の1回以上接種率は全人口(1億2,664万5,025人)の77.8%、2回接種完了率は73.1%で、高齢者の1回以上接種率は、65歳以上人口(3,548万6,339 人)の91.6%、2回接種完了率は90.8%でした。11月1日公表時点の年代別接種回数別接種者数と接種率/完了率( 図1 )を示します。また、新規感染者数と累積接種割合についてまとめました( 図2 )。

covid19 vaccine 20211107_1

図1 年代別接種回数別被接種者数・接種率/接種完了率( 首相官邸ホームページ公表数値より作図 ): 2021年11月1日公表時点

注)接種率は、VRSへ報告された、一般接種(高齢者を含む)と先行接種対象者(接種券付き予診票で接種を行った優先接種者)の合計回数が使用されており、使用回数には、首相官邸HPで公表している総接種回数のうち、職域接種及び先行接種対象者のVRS未入力分である約1000万回分程度が含まれておらず、年齢が不明なものは計上されていません。また、年齢階級別人口は、総務省が公表している「令和3年住民基本台帳年齢階級別人口(市区町村別)」のうち、各市区町村の性別及び年代階級の数字を集計したものが利用されており、その際、12歳~14歳人口は10歳~14歳人口を5分の3したものが使用されています。

covid19 vaccine 20211107_2

図2 日本_新規感染者数と累積接種割合の推移 [データ範囲:2020年1月22日~2021年10月29日]下記データより作図.Roser M, Ritchie H, Ortiz-Ospina E and Hasell J. (2020) - "Coronavirus Pandemic (COVID-19)". Published online at OurWorldInData.org. Retrieved from: 'https://ourworldindata.org/coronavirus' [Online Resource](閲覧日2021年11月3日)

参考文献

  1. 米国Advisory Committee on Immunization Practices(ACIP): https://www.cdc.gov/vaccines/acip/index.html(閲覧日2021年11月7日)

  

今回は、下記の内容について、最近のトピックスをまとめました。

【本項の内容】
  • 海外のワクチン接種の進捗と感染状況の推移・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
  • ワクチン接種後の免疫力の低下について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
  • 懸念される変異株(VOCs)に対するワクチン有効性について・・・・・・・・・・・・・10
  • ワクチン接種後発症の心筋炎関連事象について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14
  • 様々なモダリティのワクチンについて~組換えタンパクワクチン・・・・・・・・・・・17

新型コロナワクチンについて(2021年11月7日現在)

 

2021年11月9日

端緒

新型コロナウイルス感染症のワクチン開発は未曾有のスピードで進み、ファイザー社製およびモデルナ社製のmRNAワクチンは大規模なランダム化比較試験で有効性(vaccine efficacy)が90%以上とされ、アストラゼネカ社製のウイルスベクターワクチン1種類も有効性が70%程度とされた1-3。国内外で緊急使用許可や製造販売承認を受け、実社会におけるワクチン導入初期の有効性(vaccine effectiveness)も海外で評価されており、ランダム化比較試験と同等の有効性を認めた4-5。国内においても、国立感染症研究所にて、複数の医療機関の協力のもとで、発熱外来等で新型コロナウイルスの検査を受ける者を対象として、症例対照研究(test-negative design)6を実施しており、この暫定報告の第一報では、国内においても高い有効性が示された7。しかし、前回報告では、B.1.1.7系統(アルファ株)からB.1.617.2系統(デルタ株)の置き換わり期であったため8、デルタ株に対する有効性については更なる検討が必要であった。そこで、今回は、関東において月初めにはデルタ株が9割以上を占め、月末にはほぼ全ての検出株がデルタ株であった8月の調査における暫定結果を報告する。

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新型コロナウイルスN501Y変異株感染入院患者が従来の退院基準を満たした日におけるCt値および抗原量に関する検討

(IASR Vol. 42 p233-234: 2021年10月号)

 
はじめに

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者は2020(令和2)年6月25日付の事務連絡1)に基づいて発症日から10日間経過し, かつ, 症状軽快後72時間経過した場合に退院が認められてきた。しかし, 世界的に流行しているN501Y変異株は科学的データが乏しいことから, 2020年12月25日付の事務連絡により退院基準として2回連続の核酸検出検査による陰性確認が必要となった2)。北海道でも2021(令和3)年2月頃から市中でN501Y変異株感染者が増加し, 入院病床がひっ迫する状況となった。2021年4月8日に国立感染症研究所より, 空港検疫所における軽症例および無症状例のウイルス量の経時的変化に関する調査が報告された3)。変異株症例と非変異株症例のウイルスRNAコピー数を比較すると, 診断後7日には明らかな違いはなく, 診断後10日には103copies/反応以下と少なくなっており, ウイルス分離試験でも陰性であった。この知見によりN501Y変異株感染者においても従来の退院基準に基づいて退院が可能となった4)。しかし, 中等症以上を含む入院患者における知見は乏しい。今回, N501Y変異株感染入院患者が従来の退院基準を満たした日におけるCt値および新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の抗原量について検討した。

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コールセンターにおけるCOVID-19クラスター事例:気流調査に基づく予防策の検討

(IASR Vol. 42 p234-236: 2021年10月号)

 
はじめに

 2021年5~6月, 東京都内のオフィスビルの1つのフロア(Aフロア)に所在する複数のコールセンター(事業所)で, 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症例が報告された。これら症例の集積を確認した管轄である池袋保健所が, 国立感染症研究所(厚生労働省クラスター対策班)に本事例の感染源・感染経路の検討を要請した。また, 気流・換気の調査に関しては北海道大学および熊本大学の協力を得た。本稿では, 調査結果と提言を簡潔に報告する。

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新型コロナウイルスN501Y変異株による接触場所別SARS-CoV-2 PCR検査陽性率の変化

(IASR Vol. 42 p236-237: 2021年10月号)

 
はじめに

 全国自治体が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者発生に際して実施する積極的疫学調査では, 患者および濃厚接触者に対して詳細な聞き取り調査が行われる。本解析の目的は, これまで収集された積極的疫学調査情報を集約し, 感染者と濃厚接触者の基本情報と接触場所から感染リスクの高い属性や感染場所の特徴を明らかにするとともに, 感染伝播性が高いといわれるN501Y変異を有する新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)変異株(N501Y変異株)の二次感染率を従来株と比較検討することである。

掲載日:2021年10月21日

 新型コロナウイルスに対するワクチン接種が進む中、その効果によって、感染者数(検査陽性者数)が多くとも必ずしも直ちに医療提供体制の逼迫につながるわけではなくなってきている。われわれは、今後の感染拡大の際に必要となる病床数(酸素投与を必要とする患者や重症者の数にもとづく)といった医療需要について、短期的(1から4週間後)あるいは中期的(1から2ヶ月後)に予測するためのツールを開発した。本ツールでは、任意の状況を想定して「新規陽性者数、ワクチン接種率、感染拡大スピード」を使用者が入力する。ワクチンの効果・年代別の重症化率・入院期間といったパラメータはあらかじめ入力されている。これらの初期値は、科学論文や複数の自治体からのデータをもとに設定したが、使用者が任意の値に変更することも可能である。

 本ツールによって、2021年の冬期の流行をそれぞれの自治体で想定しながら、必要とする病床の確保ならびに、どういう段階で地域での感染対策の強化などを呼びかける必要があるかの検討に用いることができる。また、今後リバウンドが起こった際には、その後に起こりうる状況の見える化にも用いることができる。

・短期的な予測

 短期的な予測において2週間~4週間後の状況が現在の確保病床数を越えるか否かを検討することで、警戒や感染対策の強化を行うべきか判断の参考として用いることができる。(なお、4週間にわたって同じ感染拡大スピードであり続けると仮定している。一方で、市民の行動の変化などがあった場合にはその想定は過大になる可能性があることに注意が必要である。)

・中期的な予測

 今後の流行で想定される感染の広がりとして、たとえば、ある時点での新規陽性者数・ワクチン接種率を入力し、「拡大シナリオ:横ばい(1.0→横ばい)」とすることで、現在の状態が続いた場合に医療需要がどの程度になるのかを検討することができる。また、今後、リバウンドが見られ始めたとき、「そのときの新規陽性者数」と「そのときのワクチン接種率」を入力し、「拡大シナリオ:増加(1.3~1.5→先月と同様)」と設定することで、第6波で起きうるその後2か月間の悲観的な予測を検討できる。さらに、「さまざまな新規陽性者数」と「今冬に想定されるワクチン接種率」を入力し、予測ツールによって算出される「酸素投与を要する人の数、重症者数、必要な確保病床数」を参照することで、【現在の確保病床ではどの程度の規模の感染状況に耐えられるのか】や【想定される感染規模に対して、どの程度の確保病床数が必要になるのか】を検討するためのデータを得ることができる。

 本ツールはインターネット上で公開されており、行政・医療機関・一般市民が自由に利用することができる。あくまでモデルであり絶対的なものではないことには留意されたい。1つの参考資料として、本ツールが今後の流行に対する備えや、更なる議論の発展に役立つことを期するものである。

本ツール、およびモデルの詳細や説明資料を入手できるURL:

https://github.com/yukifuruse1217/COVIDhealthBurden

 

予測ツール開発・検証チーム:

古瀬 祐気(京都大学)
和田 耕治(国際医療福祉大学)
押谷 仁(東北大学)
髙 勇羅(国立感染症研究所)
鈴木 基(国立感染症研究所)
脇田 隆字(国立感染症研究所)

 

 

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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