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高い累積罹患率を認めた札幌市内コールセンターでの新型コロナウイルス感染症アウトブレイク(2021年5月)―健康管理, 感染管理, 換気を確認する重要性について

(IASR Vol. 42 p206-207: 2021年9月号)

 

 2021年4月から新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第4波を迎えていた札幌市で, 市内コールセンターAでCOVID-19アウトブレイクが確認された。コールセンターは, 比較的密な環境で時に大声を出して勤務していることから, 海外でもアウトブレイクが報告されており1), 安全な勤務体制の構築が課題である。今回, 調査で判明した課題を整理し, 改善点を検討した。

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精神科病院における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)クラスター事例と対応

(IASR Vol. 42 p207-209: 2021年9月号)

 
はじめに

 精神疾患を有する患者の場合, マスク着用や手指衛生, 身体的距離の確保といった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染予防対策を十分に行うことが困難であり, COVID-19患者が発生した場合の感染拡大リスクは高いと考えられる。このため, 精神科病院においては, こうした患者の特性をふまえたうえで, あらかじめCOVID-19患者発生に備えた体制を整備し, 対策を実施することが求められる。

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単科精神科病院の療養病棟で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)集団感染事例の血清疫学調査(第1報)

(IASR Vol. 42 p210-211: 2021年9月号)

 
はじめに

 2020年9月, 県内の単科精神科病院(以下, 病院)の1閉鎖療養病棟(病床数60)において新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の集団感染事例が発生した(本号31ページ参照)。事例探知時の入院者数は58名であった。同年4月より面会は制限されていたが, 認知機能障害など基礎疾患の特性から棟内の標準感染予防策の実施は難しかった。積極的疫学調査の結果, 感染源は特定されなかったが, 地域の流行状況や流行曲線などからウイルスが1つの侵入経路で持ち込まれたものと考えられた。最終的に, PCR検査で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陽性と判定されたCOVID-19の確定症例は70例(患者55例, 職員15例)となった。

IDWRchumoku 注目すべき感染症 ※PDF版よりピックアップして掲載しています。

◆直近の新型コロナウイルス感染症の状況

 

 2019年12月、中華人民共和国湖北省武漢市において確認され、2020年1月30日、世界保健機関(WHO)により「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を宣言され、3月11日にはパンデミック(世界的な大流行)の状態にあると表明された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2021年9月17日15時現在、感染者数(死亡者数)は、世界で227,019,077例(4,669,912例)、196カ国・地域(集計方法変更:海外領土を本国分に計上)に広がった(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21157.html)。

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全国高等学校選抜アイスホッケー大会における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)事例

(速報掲載日 2021/9/27) (IASR Vol. 42 p227-228: 2021年10月号)
 

 北海道苫小牧市で2021年8月4~8日に全国高等学校選抜アイスホッケー大会(以下、大会)が開催された。7月31日~8月3日まで同市で行われた事前合宿と公式練習、および8月9日のU-18代表合宿に参加した15都道府県26チーム中16チームで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)症例の集団発生を認めた。合宿を伴う部活動やアイスホッケー競技のCOVID-19対策に役立つと考えられる知見や課題が得られたのでそれらを報告する。

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沖縄県におけるCOVID-19推定感染場所に基づく患者数の傾向の把握

(速報掲載日 2021/9/17)(IASR Vol. 42 p225-227: 2021年10月号)
 

 国内の保健所は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)症例の感染場所を丁寧な疫学調査により把握しており、得られる情報からどのようなリスク行動が感染伝播に寄与したかを分析し、市民への注意喚起に結び付けることは重要である。これまで、流行の拡大から縮小に至るまで、主となる感染場所は会食、家庭、医療・介護の順に推移していることが考えられている1)

IDWRchumoku 注目すべき感染症 ※PDF版よりピックアップして掲載しています。

◆直近の新型コロナウイルス感染症の状況

 

 2019年12月、中華人民共和国湖北省武漢市において確認され、2020年1月30日、世界保健機関(WHO)により「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を宣言され、3月11日にはパンデミック(世界的な大流行)の状態にあると表明された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2021年9月3日15時現在、感染者数(死亡者数)は、世界で219,011,542例(4,541,016例)、196カ国・地域(集計方法変更:海外領土を本国分に計上)に広がった(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_20893.html)。

国立感染症研究所
(掲載日:2021年9月10日)

2021年9月1日現在、国内ではファイザー製、武田/モデルナ製、アストラゼネカ製の新型コロナワクチン( 以下、ワクチン )が使用されています。ファイザー製と武田/モデルナ製はmRNAワクチンで接種対象は12歳以上です。アストラゼネカ製のワクチンはウイルスベクタ―ワクチンで接種対象は原則40歳以上です。

9月3日現在の接種回数は1億3,305万8,203回で、このうち高齢者( 65歳以上 )は6,302万3,172回、職域接種は1,322万5,021回でした。9月3日時点の1回以上接種率は58.0%、2回接種完了率は47.1%で、高齢者については1回以上接種率89.1%、2回接種完了率87.1%でした( 図1 )。

covid19 vaccine 20210905

図1 公表日別接種回数( 首相官邸ホームページ公表数値より作図 ):2021年6月21日~9月2日 ( 公表日別の接種回数は翌日の総接種回数から当日の総接種回数の差として計算、6月21日までの合計接種回数は3,159万2,030回。金曜日の接種回数は金曜日~日曜日の合計、医療従事者等は7月30日で集計終了、8月3日から職域接種を含む、なお、職域接種は各公表日の直前の日曜日までの回数 )

今回は、下記の内容について、最近のトピックスをまとめました。

【本項の内容】
  • 日本で使用中のワクチンの種類について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
  • 海外のワクチン接種の進捗と感染状況の推移・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
  • 懸念される変異株(VOCs)に対するワクチン有効性について・・・・・・・・・・・・・13
  • 異なる製造販売企業のワクチンを組み合わせて接種することに関する知見・・・・・・・ 16
  • ワクチンの追加接種について
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18
  • ワクチン接種後の血小板減少症を伴う血栓症について・・・・・・・・・・・・・・・・ 22

新型コロナワクチンについて(2021年9月5日現在)

 

国立感染症研究所
2021年8月28日12:00時点

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【B.1.617.2系統の変異株(デルタ株)】

デルタ株の分類について
  • B.1.617.2系統は、Pango系統でさらに細かく分類するためにAY系統が新たに作られ、現時点でAY.1~AY.28に分類されているが、ウイルスの生物学的な特徴の変化と関連して分類されているわけではない。これらの系統も現時点では“デルタ株”と分類されている(1)。
ブレイクスルー感染者(ワクチン既接種における感染者)からの感染伝播性について
  • デルタ株に対しては、重症化予防の効果は変わらないものの、感染及び発症予防効果については従来株と比較して若干減弱している可能性が指摘されている()。ただし、ワクチンの導入が先行した欧米やイスラエルにおける知見であることから、免疫の減衰や感染対策の緩和などウイルスの持つ特徴以外の複合的な要因もあると考えられる。さらに、デルタ株については、ワクチン既接種者が感染した際に排出するウイルス量に関する複数の報告があり、下記の通り、ワクチン既接種者の感染者も二次感染の原因となりうることが指摘されている。
    • 米国マサチューセッツ州のアウトブレイク報告において、感染者について、規定回数のワクチン接種完了後14日以上経過した者とそれ以外の者でCt値が同程度であったことが報告されている(2)。このアウトブレイクでは、ゲノム解析を行なった検体の中でのデルタ株の割合が90%だった。
    • デルタ株の割合が69%から95%に上昇していた米国ウィスコンシン州での感染者について、PCR診断検体中のCt値を、ワクチン既接種者と未接種者で比較したところ、Ct値25以下の割合は同程度だった。また、ワクチン既接種者と未接種者いずれにおいても低Ct値のサンプルから感染性ウイルスが分離されたことが報告されている(3)。
    • 米国テキサス州の調査でも、デルタ株感染者において、ワクチン既接種者と未接種者で同等のCt値が得られたとの報告がある(4)。
    • 米国カリフォルニア州の調査でも、デルタ株が主流となった時に、上記と同様の報告がある(5)。
    • シンガポールの研究でも同様に、デルタ株感染者においてワクチン既接種者と未接種者で同等のCt値が得られたが、ウイルスRNA量は既接種者においてより早く減少したとの報告がある(6) 。
    • デルタ株の割合がほとんどを占めていたオランダでの医療従事者におけるブレイクスルー感染者の研究では、ワクチン既接種者(主にデルタ株感染)と未接種者(主に既存株感染)で同等のCt値が得られたが、ウイルス分離の陽性率は既接種者で低下していたことを報告した (7)。
  • 以上の知見は、ブレイクスルー感染があり得ること、ブレイクスルー感染者が(ウイルスを排出する期間が短くなり未接種者に比べ相対的にリスクは低下している可能性はあるものの)二次感染を引き起こし得ることを示している。ワクチン既接種者は未接種者に比べてデルタ株に感染するリスク、感染し発症するリスクは低下しているものの、感染者数が多い状況では、ワクチン既接種者も場面に応じた基本的な感染防止対策の継続が必要であると考えられる。

要約

新型コロナワクチンBNT162b2(Pfizer/BioNTech)の有効性(vaccine effectiveness, VE)をサーベイランスデータ等を利用して推定した。VE推定値は、20-59歳の1回接種で男性47.5-55.4%、女性37.9-50.2%、60歳以上では1回接種で男性73.7-83.9%、女性75.7-81.2%であった。2回接種を完了後2週間以上経過した者の間では、20-59歳で男性89.6-93.4%、女性85.4-91.8%、60歳以上で高齢者では高い値が得られ2回接種で男性94.7-96.9%、女性92.6-96.1%であった。20-59歳の推定値は英国の既報と同程度であった。

1.背景

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンのひとつであるBNT162b2 (Pfizer/BioNTech)を利用して2月以降に医療従事者と高齢者を対象に優先接種が行われた。mRNAワクチンの有効性(vaccine effectiveness, VE)は一般的に非常に高いと考えられているが、変異株、特にデルタ株に対して十分でないことが報告されている。例えば、英国では1回接種で30.7%の有効性、2回接種で88.0%の有効性が報告されてきた(1)。

本報告では、本邦における性・年齢別の有効性を理解するために、サーベイランスデータとワクチン接種者数データに数理モデルを適用してBNT162b2 (Pfizer/BioNTech)のVEを推定した。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan