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令和4年3月14日
国立感染症研究所
国立国際医療研究センター 国際感染症センター

【要旨】

2021年11月末以降、感染・伝播性や抗原性が従来株から大きく変化した変異株であるオミクロン株が出現し、我が国を含む全世界で主流となっている。オミクロン株感染者(オミクロン株症例)のウイルス学的特徴と血清学的特徴を迅速に把握することを目的に、感染症法第15条第2項の規定に基づき積極的疫学調査を実施した。本調査では、2021年11月29日から2022年1月13日までに本積極的疫学調査協力医療機関に入院し診療を行い、ゲノム解析により感染ウイルスがオミクロン株と確定した者を対象症例とした。登録された126症例(ワクチン接種者:63症例*、ワクチン未接種者:61症例)の年齢中央値は31歳(四分位範囲18-47歳)、退院までの全経過における重症度は、無症状が27例(21.4%)、軽症が92例(73.0%)、中等症Ⅰが6例(4.8%)、中等症Ⅱが1例(0.8%)であった。対象症例から得られた呼吸器検体662検体、血液検体190検体を用いてウイルス学的検査および血清学的検査を実施した。その結果、オミクロン株症例の呼吸器検体における感染性ウイルス検出率は、ワクチン接種者とワクチン未接種者ともに診断もしくは発症後5日目から10日目にかけて低下し、10日目以降は感染性ウイルスがほとんど検出されなくなることが示唆された。また、オミクロン株症例の血清学的特徴として、ワクチン未接種者では感染後にオミクロン株に特異的な中和抗体が誘導されるのに対して、ワクチン接種者では感染後に従来株とオミクロン株の双方に中和能を有する交差中和抗体が誘導される傾向があることが示唆された。なお、本調査では、ワクチンの有効性やワクチン接種後感染の発生割合については評価していない。

*定義された規定接種回数を終了していない1症例、接種ワクチンが不明な1症例の計2症例はワクチン接種者の記述、解析からは除外した

 

SARS-CoV-2 オミクロン株感染による新型コロナウイルス感染症の積極的疫学調査(第6報):ウイルス学的・血清学的特徴

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