印刷

国立感染症研究所
(掲載日:2022年9月27日)

【背景・目的】

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防には、SARS-CoV-2感染や新型コロナワクチン接種に誘導されるSARS-CoV-2のスパイクタンパク質に対する抗体が重要であることが知られている。

 本邦においては、新型コロナワクチンの接種が広く普及しており、2022年7月25日現在で6割以上の者が3回以上のワクチン接種を完了している(デジタル庁ワクチン接種記録システム (VRS) 新型コロナワクチンの接種状況, https://info.vrs.digital.go.jp/dashboard/)。

 一方で、オミクロン株の出現後の第6波以降、本邦の感染者数は急増しており、一般人口において感染歴とワクチン接種歴の双方を有する者の割合が増加しつつある。感染とワクチンの組み合わせにより誘導されるハイブリッド免疫は、SARS-CoV-2再感染に対して優れた免疫防御を与えることが報告されている。一方で、ハイブリッド免疫の質と持続性は、感染したウイルス株や、接種ワクチンの種類、ワクチン接種間隔、ワクチン接種と感染の間隔など様々な要因の組み合わせにより変動する可能性が指摘されている。よって、今後の新型コロナウイルス感染症の疾病負荷予測のためには、感染もしくはワクチン接種により誘導された免疫保有者だけでなく、ワクチン接種と感染歴の双方を有するハイブリッド免疫者のSARS-CoV-2に対する免疫防御の特性を評価しておくことが重要となる。

 しかしながら、本邦においては、感染履歴のないワクチン接種者の血清抗体の報告に比べて、感染とワクチン接種の双方の履歴を有しハイブリッド免疫を有する者の血清抗体の特性解析の報告は限られている。また、これまでに実施された血清疫学調査では、ワクチン株として使用されている祖先株に対する抗スパイク抗体のみの評価であり、変異株に対する抗体は評価されていなかったが、SARS-CoV-2に対する免疫の全体像を理解するためには、抗原性の変化した変異株に対する抗体も合わせて評価する必要がある。

 そこで、本研究では、令和3年度に厚生労働省/国立感染症研究所が実施した新型コロナウルス感染症に対する抗体保有状況の調査において感染やワクチンによりSARS-CoV-2に対する抗体を保有することが判明した者の血清の残余を用いて各種変異株に対する中和試験を実施することにより、感染歴を持つ者におけるSARS-CoV-2変異株に対する血清中和抗体の性状を評価した。

  続きを読む:新型コロナウイルスに対する抗体保有者の血清中和抗体の性状に関する解析
 
Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan