印刷

IDWRchumoku 注目すべき感染症 ※PDF版よりピックアップして掲載しています。

◆直近の新型コロナウイルス感染症の状況

 

 2019年12月、中華人民共和国湖北省武漢市において確認され、2020年1月30日、世界保健機関(WHO)により「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を宣言され、3月11日にはパンデミック(世界的な大流行)の状態にあると表明された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2021年10月8日15時現在、感染者数(死亡者数)は、世界で236,747,683例(4,834,252例)、196カ国・地域(集計方法変更:海外領土を本国分に計上)に広がった(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21555.html)。

 国内では、厚生労働省により公表されている、各自治体がプレスリリースしている個別の症例数(再陽性例を含む)を積み上げた情報によると、2021年10月8日0時現在、新型コロナウイルス感染症の検査陽性者数は1,708,742例、死亡者数は17,856例と報告されている(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21555.html)。2021年第25週(6月21〜27日)から第33週(8月16〜22日)は新規陽性者数と検査陽性率がともに毎週増加したが、第34週(8月23〜29日)では、第33週と比べて、検査数が増加したにもかかわらず、新規陽性者数が減少し、検査陽性率は減少した。その後、第35週(8月30日〜9月5日)から第39週(9月27日〜10月3日)は、毎週、検査数、新規陽性者数、検査陽性率いずれも減少した。第38週(9月20〜26日)と第39週は以下のとおりであった:検査数(第38週:471,516、第39週:466,526)、新規陽性者数(第38週:17,331、第39週:10,021)、検査陽性率(第38週:3.7%、第39週:2.1%)(2021年10月5日現在:https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/open-data.html)。

 COVID-19による全国の入院治療等を要する者の数の推移については(https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/kokunainohasseijoukyou.html#h2_1)、2021年7月8日0時現在の16,127例から8月30日0時現在の231,596例まで、8月24日0時現在を除いて毎日増加したが、その後は、10月10日0時現在の10,871例まで、継続して減少した(2021年10月10日現在)。また、全国の入院治療等を要する者のうち重症者数においては、7月22日0時現在の392例から8月31日0時現在の2,110例まで毎日増加したが、その後は、前日より微減する日も見られ、9月9日0時現在の2,173例から10月10日0時現在の483例まで、継続して減少した(2021年10月10日現在)。また、日本COVID-19対策ECMOnetが集計するECMO/人工呼吸器装着数の推移(https://crisis.ecmonet.jp/)においては、7月中旬から下旬にかけて微増傾向に転じ、その後も9月上旬まで増加傾向であったが、その後は減少している(2021年10月10日現在)。

 感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新規変異株の感染者が世界各地から継続して報告されており、国内においても新規変異株感染者が報告されており、現在はB.1.617.2系統の変異株(デルタ株)が多くの地域で大部分を占めている。国内において、これまでに確認されている懸念される変異株、注目すべき変異株の件数については、本号10ページ「国立感染症研究所および地方衛生研究所等における全ゲノム解析により確認されたVOCs, VOIs」を参照いただきたい。変異株が検出された症例を含む事例への公衆衛生上の対応は、従来のSARS-CoV-2感染症例への対応と原則、同様であるが、広域事例を含め、積極的疫学調査によりクラスターを検出し丹念に対応していくこと、面的な対応を強力に行うことが重要である。また、変異株に関する詳細な解析結果や懸念される新規変異株のまとめについては、以下を参照いただきたい:感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新規変異株について(第13報)(https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2484-idsc/10623-covid19-57.html)。

 また、感染症発生動向調査(NESID)病原体サーベイランスには、医療機関、保健所等で採取された検体から、各都道府県市の地方衛生研究所、保健所、ならびに検疫所で検出された病原体の情報が、陰性の結果を含め、任意ではあるが報告されている。2021年10月11日現在、地方衛生研究所および保健所から報告された、新型コロナウイルス感染症/新型コロナウイルス感染症疑い症例から検出された病原体は、SARS-CoV-2が28,812件、陰性が155,058件であった。これ以外にも検疫所で検出されたSARS-CoV-2が561件報告されている。なお、詳細な内訳については、病原微生物検出情報(IASR)を参照いただきたい(https://www.niid.go.jp/niid/images/iasr/2021/9/499s01.gif)。

 2020年5月29日以降、新型コロナウイルス感染症発生届に関する国への報告事務は、厚生労働省が運営する新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)を用いて行われることとなり、移行可能な自治体から順次、移行を実施し、現時点で全国の自治体で利用されている。なお、新型コロナウイルス感染症の直近の感染状況等のまとめについては、「新型コロナウイルス感染症の直近の感染状況等(2021年10月6日現在)」も参照いただきたい(https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/10695-covid19-ab54th.html)。

 2021年第25週以降、継続して増加傾向であった新型コロナウイルス感染症の新規陽性者数と検査陽性率は、第34週以降、ともに減少に転じ、第35週以降、検査数、新規陽性者数、検査陽性率のいずれも減少している。また、入院患者数は、7月上旬(第27週)から8月下旬(第34週)まで増加傾向であったが、その後は継続して減少した。重症者数はそれより遅れて7月中旬(第29週)から継続して増加傾向にあったが、9月に入ってから(第35週)は前日より減少する日もみられ、9月9日0時現在以降は、継続して減少した(2021年10月10日現在)。引き続き、流行の変化を早期に探知するためにも、複数の情報源と指標を用いて監視する必要がある。また、各個人においては、密集場所・密接場面・密閉空間を避け、適切なマスクの使用(乳幼児以外)、手指衛生の徹底、適切な換気等、基本的な感染予防策の実施に努めていただきたい。

 

   国立感染症研究所 感染症疫学センター

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan