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IDWRchumoku 注目すべき感染症 ※PDF版よりピックアップして掲載しています。

◆直近の新型コロナウイルス感染症およびインフルエンザの状況(2020年10月15日現在)

 

新型コロナウイルス感染症:

 2019年12月、中華人民共和国湖北省武漢市において確認され、2020年1月30日、世界保健機関(WHO)により「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を宣言され、3月11日にはパンデミック(世界的な大流行)の状態にあると表明された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2020年10月15日15時現在、感染者数(死亡者数)は、世界で38,378,875例(1,091,048例)、191カ国・地域(集計方法変更:海外領土を本国分に計上)に広がった(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14155.html)。

 国内では、厚生労働省により公表されている、各自治体がプレスリリースしている個別の事例数(再陽性例を含む)を積み上げた情報によると、2020年10月15日0時現在、新型コロナウイルス感染症の検査陽性者は90,710例、死亡者は1,646例と報告されている。PCR検査実施人数は2,375,927例であった(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14155.html)。この公表値は暫定値であり、変更される可能性がある。

 現在の全国の入院治療を要するCOVID-19入院者数について検討すると(https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/kokunainohasseijoukyou.html#h2_1)、7月以降では8月10日の13,724例を最高に、その後大きく減少したが、9月後半以降は、減少傾向がやや鈍化し横ばいになっている可能性がある(10月17日:5,326例)。国内のCOVID-19重症者における人工呼吸器装着数(https://crisis.ecmonet.jp/)においては、約2週間の遅れを生じつつも同様な傾向である。なお、全国的には、介護施設等を含むクラスターあるいは事例の発生が認められることから、重症患者の増加については警戒しなければならない。この重症患者数については、一部の都道府県においては、都道府県独自の基準に則って発表された数値を用いて算出されていることに注意する。

 地域によっては、検査数を高レベルで維持している中で、直近では陽性数、陽性率ともに微増になっており、感染源不明の数と割合が高い傾向も見られている(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)。さらに、多くの地域で人の流れの増加傾向が継続して観察されていることは、今後、適切な感染防護策を伴わずに人との接触が増加すると、感染者数、ひいては重症者数の増加にも繋がりかねず、警戒が必要であることを示唆する。発熱等相談件数等の症候群サーベイランス(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)やクラスター発生等、複数の情報源をモニタリングするサーベイランス体制と継続した注視が必要である(https://apps.who.int/iris/handle/10665/332051)。

 なお、感染症発生動向調査(NESID)病原体サーベイランスには、医療機関、保健所等で採取された検体から、各都道府県市の地方衛生研究所、保健所、ならびに検疫所で検出された病原体の情報が、任意ではあるが報告されている。2020年10月14日現在、地方衛生研究所および保健所から報告された、新型コロナウイルス感染症/新型コロナウイルス感染症疑い症例から検出された病原体は、SARS-CoV-2が6,960件(4月が最多の3,282件;8月までは陽性割合も4月が最高であった)、陰性が58,633件であった。これ以外にも検疫所でSARS-CoV-2が検出された121件が報告されている。

 2020年5月29日以降、新型コロナウイルス感染症発生届に関する国への報告事務は、厚生労働省が運営する新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)を用いて行われることとなり、移行可能な自治体から順次、移行を実施し、現時点で全国の自治体で利用されている。厚生労働省においては、今後の統計情報の集計等については、HER-SYSに入力された情報に基づいて行うことを基本とするとしている。本稿では、HER-SYSに基づく情報は含めておらず、今後分析を行っていく予定である。

 

季節性インフルエンザ:

 全国約5,000のインフルエンザ定点より報告された、2020年第41週(2020年10月14日現在)の定点当たりのインフルエンザ報告数は0.00(患者報告数17)となり、前週の定点当たり報告数0.00(患者報告数7)と同程度で推移している。都道府県別の第41週の定点当たり報告数(報告数)では岩手県0.02(報告数1)、岡山県0.02(報告数2)、沖縄県0.02(報告数1)、北海道0.01(報告数2)、岐阜県0.01(報告数1)、愛知県0.01(報告数2)、京都府0.01(報告数1)、大阪府0.01(報告数3)、兵庫県0.01(報告数1)、鹿児島県0.01(報告数1)、千葉県0.00(報告数1)、東京都0.00(報告数1)となっている。定点医療機関からの報告を基にした、定点以外を含む全国の医療機関をこの1週間に受診した患者数は推定出来ない(約0万人)。また、全国約500の病原体定点からの報告による感染症発生動向調査(NESID)病原体サーベイランスにおける、インフルエンザウイルス分離・検出速報によると(https://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-inf.html)、2020/21シーズンのインフルエンザウイルス分離・検出報告はまだない。

 WHOによると(10月12日現在)、南半球の一部の国では、インフルエンザの検査を継続したか、さらには増加しているにもかかわらず、インフルエンザの検出はほとんど報告されていない(https://www.who.int/influenza/surveillance_monitoring/updates/
latest_update_GIP_surveillance/en/
)。東南アジアではインフルエンザの検出数の増加が報告された国はある。世界中で、報告されたウイルスの検出数は非常に少ないものの、そのなかではインフルエンザA(H3N2)ウイルスが検出の大部分を占めた。WHOは、世界の国々がCOVID-19伝播を減らすための対策を取ったことがインフルエンザの減少に影響した可能性がある、としている。今後も、インフルエンザの定点報告の継続と、インフルエンザ様疾患に対する病原体サーベイランスの継続が重要である。

 

   国立感染症研究所 感染症疫学センター

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