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香川県における新型コロナウイルスに対する小児血清疫学調査(2020~2022年度)

(IASR Vol. 44 p208-210: 2023年12月号)
 
はじめに

小児血清疫学調査は検体採取に困難も多く, 国内のみならず国外においても新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に関する小児抗体保有状況の報告は少ない。今回, 小学4年生対象の生活習慣病予防健診(以下, 健診)が毎年行われている香川県市町のご協力のもと, 2020年度から3年間, 同一地域においてSARS-CoV-2感染診断歴(以下, 診断歴), 新型コロナワクチン(以下, ワクチン)接種歴等とともに抗SARS-CoV-2抗体保有状況の変化を追跡し, 小児における感染拡大状況, 感染およびワクチン接種による抗体獲得状況を検討した。

 

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沖縄県における医療施設の新型コロナウイルス感染症5類定点化後流行状況把握調査, 2023年7月末時点

(IASR Vol. 44 p185-186: 2023年11月号)
 
背景と目的

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は2023年5月8日から感染症法上の2類相当全数報告疾患から5類定点報告疾患に変更され, 感染症発生動向調査上は流行のトレンドとレベルの把握が中心となった。沖縄県では2023年4月後半から定点医療機関当たり報告数の増加がみられ, 5月には10人を超え, 第26週(6月26日~7月2日)には48.39人に達した。一方, 同週の日本全体の定点当たり報告数では7.24人と, 大きな隔たりがあり, 沖縄県は定点化変更後, 最も早くCOVID-19の大きな流行を認めた自治体であった。県内医療施設ではひっ迫状況を来しており, その背景情報の収集解析は保健行政・医療機関がCOVID-19対策を構築するうえで重要と考えられた。なお本報告は2023年7月末時点の情報に基づく。

 

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長崎県内における75歳未満の新型コロナウイルス感染症罹患後の死亡例に関する実地疫学調査, 2022年1月~2023年1月

(IASR Vol. 44 p96-98: 2023年6月号)
 

2022年1月以降, オミクロンの流行により新型コロナウイルス感染症(COVID-19)症例は, 以前に比してその流行規模が大きくなった1)。死亡者の多くは高齢者だが, 高齢者以外の死亡も認められた。死亡リスクが比較的低いとされている年代の死亡者の背景や発症から死亡に至るまでの経過を把握することは, 公衆衛生対策を検討するうえで重要である。本調査はオミクロン流行にともなう長崎県内の75歳未満のCOVID-19罹患後死亡者の特徴の把握を目的に積極的疫学調査を行った。

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下水中から検出される新型コロナウイルス変異株の塩基配列解析について

(IASR Vol. 43 p264-265: 2022年11月号)
 
はじめに

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はRNAウイルスであり変異株の出現は避けられないことから, 新たに出現することが想定されるウイルス株の感染力, 病原性, ワクチンの効果等を評価するために, 迅速に変異株を検出できる手法が求められている。下水には上気道, 糞便由来のSARS-CoV-2が含まれているため, 下水中のウイルスゲノム検出事例が国内外で報告されている。福島県では2013年度よりポリオ環境水サーベイランス(感染症流行予測調査事業への協力)を実施しており, 本調査方法は腸管系ウイルスの監視に優れた感度特性を持つ。本報告では, 下水中のSARS-CoV-2遺伝子について, サンガーシーケンス法によりレセプター結合部位の解析を試み, 臨床由来検体の解析結果と比較を行った。

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新型コロナウイルスオミクロン株流行期における宿泊療養者の唾液検体のゲノム量およびウイルス分離率の解析

(IASR Vol. 43 p265-267: 2022年11月号)
 
はじめに

 富山県では2022年1月より, 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と診断され, 宿泊療養施設で療養中の者に対して, 発症後5~6日目に陰性化確認を目的としたreal-time RT-PCR検査を行ってきた。今回, 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)オミクロン株流行期のCOVID-19臨床唾液検体において, 発症後5~6日目の検体中のウイルスゲノム量を測定し, 陽性率および検体のthreshold cycle(Ct値)別の割合を算出した。また, 培養細胞を用いてウイルス分離を行い, PCR陽性の唾液検体中の感染性ウイルスの量について検証した。

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新型コロナウイルス感染症の変異株流行期別二次感染率の推移

(IASR Vol. 43 p267-269: 2022年11月号)
 
はじめに

 本解析の目的は, 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に対して実施された積極的疫学調査情報を集約し, 変異株の感染性や, 感染者や濃厚接触者の特徴を明らかにすることである。これまでに非変異株流行期, アルファ株流行期, デルタ株流行期に実施した調査結果をIASRに報告1-3)してきたが, 今回オミクロン株流行期の情報を新たに集約し, 変異株流行期別, 感染者と濃厚接触者基本属性別の二次感染リスクを検討した。

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新型コロナウイルスオミクロン株によると推定された院内クラスターにおける医療従事者を対象としたスクリーニング検査

(IASR Vol. 43 p238-240: 2022年10月号)

 

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)オミクロン株(以下, オミクロン株)が優勢となった2022年1月に発生した高知市内の急性期病院(A病院)におけるクラスターで, 職員へのスクリーニング検査で得られた知見を報告する。

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BA.5系統とBA.2系統の組換え体と推察された新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)株の検出について

(IASR Vol. 43 p240-241: 2022年10月号)

 

 愛知県衛生研究所(当所)では国立感染症研究所(感染研)の方法1)にのっとり, SARS-CoV-2のゲノム解析を実施している。今回, BA.5.2.1系統とBA.2.9系統の組換え体と考えられる2株を検出したので報告する。

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B.1.1.529系統(オミクロン株)SARS-CoV-2国内流行初期に都内神社Aにおいて発生したオミクロン株による集団感染事例(2021年12月~2022年1月)

(IASR Vol. 43 p196-198: 2022年8月号)

 
はじめに

 2021年12月, 国内の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新規感染者の届出数は, 前年同時期の約10分の1で推移していたことから〔12月31日時点, 直近7日間の1日当たり平均感染者報告数2021年320人(2020年3,532人)〕, 東京都内にある神社Aでは, 前年に減少した初詣の参拝者が増加することを想定し, 12月初旬より主に巫女業務に従事する臨時勤務者を約100人雇用し, 初詣への準備を進めていた。

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まん延防止等重点措置にともなう推定感染場所別症例数の推移(2021年8月20日~9月12日)―富山県

(IASR Vol. 43 p198-199: 2022年8月号)

 
はじめに

 富山県内における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第5波(2021年7月3日~10月30日)において, 2021年7月上旬から新規陽性者数が増加し, 第33週(8月16日~22日)をピークに減少に転じた。この期間に, 県内では2,825例の症例が報告され, 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の主要な変異株はアルファ株(B.1.1.7系統)からデルタ株(AY.4.2系統)へと置き換わった。これまでに著者らは, デルタ株は従来株, アルファ株と比較し, 二次感染率が高いことを報告した1)。一方, 富山県内では, 第5波感染拡大期に確認されたクラスターの4割が飲食店等の飲食をともなう場で確認された。このことから, 県内では初めて, 2021年8月20日~9月12日の期間, A市内にまん延防止等重点措置(以下, 重点措置)が適用され, 飲食店の営業時間短縮, 酒類提供の終日自粛, が要請された。さらに重点措置終了後も飲食店の営業時間, 酒類提供時間の短縮が9月26日まで要請された。本稿では, 重点措置の効果および意義を検証することを目的として, 推定感染場所別の症例数の推移を解析した。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan