国立感染症研究所

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百貨店従業員において発生した新型コロナウイルス感染症クラスター事例, 2021年7月

(IASR Vol. 43 p43-45: 2022年2月号)

 

 2021年7月から東京都および大阪府内の複数の百貨店従業員の間で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者が増加した。同年6月以前のたび重なる国内COVID-19流行時には確認されなかった患者数の急増であった。比較的大規模な事例として疫学調査の対象となり, 情報提供の協力が得られた3百貨店(A, B, C)の事例について, 調査から得られた知見を報告する。

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単科精神科病院の療養病棟で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)集団感染事例の血清疫学調査(第二報)

(IASR Vol. 43 p45-47: 2022年2月号)

 
はじめに

 我々はこれまでに, 2020年9月に県内の単科精神科病院において発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の集団感染事例とその対応, および事例発生から約2カ月後の血清疫学調査の結果について報告してきた1,2)。今回, 本事例における調査対象者の抗体測定結果について, 事例発生から1年間の動態と感染歴のある人へのワクチン接種に関する知見が得られたので報告する。

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新型コロナウイルス感染症患者鼻腔・鼻咽頭ぬぐい液および唾液検体における新型コロナウイルス分離培養の比較解析―富山県衛生研究所

(IASR Vol. 43 p20-22: 2022年1月号)

 
はじめに

 富山県では以前, 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陽性検体を培養細胞に添加してウイルス分離を行い, 感染性の有無を評価し, リアルタイムPCRによるCt値との相関について解析した1)。評価する過程で, 鼻腔・鼻咽頭ぬぐい液検体においては効率よくウイルスが分離されたものの, 唾液検体からは分離できないものが多かった。本研究では, SARS-CoV-2のPCR検査のために当所に持ち込まれ, SARS-CoV-2が陽性であることが確認された鼻腔・鼻咽頭ぬぐい液と唾液の臨床検体を用いて, ウイルスの分離率の比較を行った。また, 鼻腔・鼻咽頭ぬぐい液および唾液に既知のウイルスゲノム量のSARS-CoV-2を添加して作製した模擬検体を用い, 培養細胞に接種して検体種ごとのウイルス分離率の比較も行った。鼻腔・鼻咽頭ぬぐい液や唾液中のSARS-CoV-2の感染性について明らかにできれば, 今後の感染予防対策にも繋がることが期待される。

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新型コロナワクチン接種率100%の高齢者施設におけるCOVID-19ブレイクスルー感染集団事例

(IASR Vol. 43 p22-23: 2022年1月号)

 
はじめに

 福井県における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)第5波の期間(2021年7月20日~10月14日)において, 県内の高齢者施設(施設)で計39例のCOVID-19症例の集積が確認された。当該施設の全職員62名, 入所者68名(A階の居室:29名, B階の居室:39名)は2021年4~7月に2回のワクチン接種を終え, ワクチン接種率は100%であったにもかかわらずクラスターが発生し, いわゆるブレイクスルー感染集団発生事例であった。今回, ブレイクスルー感染のクラスターがどのような状況, 環境下において発生したのかを明らかにし, 今後の対策に資するため, 実地疫学調査を行ったので, その結果について報告する。

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八尾市の外国人コミュニティにおける新型コロナウイルス感染症発生時の地域的なコミュニケーション支援等の体制強化(2021年3~4月)

(IASR Vol. 42 p290-291: 2021年12月号)

 
背 景

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は2019年12月に中国湖北省武漢市で発生した新興感染症である。世界保健機関(WHO)は, 3月11日にパンデミック(世界的な大流行)の状態にあることを表明した。2021年8月31日現在, 世界では累積症例数が約1.7億人, 死亡者数が約340万人1), 国内では2021年9月3日現在, 累積症例数が約152.1万人, 死亡者数が約1.6万人と報告されている2)。国内のCOVID-19クラスターにおいては, これまで外国人居住者における事例の発生が散見され, 予防啓発および発生時の対応に関して情報提供等の課題が指摘されてきた3)。本報告は, 大阪府八尾市の外国人を主体としたCOVID-19のクラスター発生下で実施された, 地域における外国人への情報提供や連携体制強化の取り組みから得られた所見に関して報告するものである。

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事例探知当初の情報からは濃厚接触者を選定することが困難であった2事例に関する検討

(IASR Vol. 42 p263-265: 2021年11月号)

 
背景・方法

 変異ウイルスの流行や, 患者の急増など, その原因は多岐にわたると考えられるが, 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の積極的疫学調査の現場では, 「新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領」(2021年1月8日暫定版)(実施要領)1)に定義された濃厚接触者の範囲外で陽性者を認めることがある。そこで, 現時点での実施要領の濃厚接触者の定義を評価することを目的とし, 実施要領に定義された濃厚接触者の範囲外で探知されたCOVID-19患者に関する情報を記述した。2021年4~5月の期間に発生したN501Y変異を有する新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株が検出された保育施設および事務所の集団発生事例2事例を対象とし, 厚木保健福祉事務所(保健所)が収集した5月末日時点の積極的疫学調査のデータを収集した。なお, これら事例に関して, 2021年4月1日以降, COVID-19と検査診断された者を「陽性者」, 陽性者の実施要領に基づく濃厚接触者の条件を満たした者を「濃厚接触者」, 陽性者の感染可能期間に陽性者と接触し濃厚接触者の条件を満たさない者を「接触者」と定義した。

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国内における新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)L452R変異株置き換わりに関する分析

(IASR Vol. 42 p265-267: 2021年11月号)

 
背 景

 L452R変異を有する新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)変異株(以下, L452R変異株)は感染性・伝播性の増加や宿主の中和活性の減少に影響を与える可能性があるとされている1-3)。B.1.617.2系統(デルタ株) はスパイクタンパク上にL452R変異を有しており, 世界保健機関や国内では懸念される変異株(variants of concern:VOC)に位置付けられている。デルタ株はインドでは2021年3月以降に急速な拡大を認め, 国内では2021年4月に国内の患者から, 国内例として初めて検出された4)。国内では一部の国から委託された民間検査会社で, 5月下旬からL452R変異株スクリーニング検査を先行的に開始し, その後, 自治体に対してはこれまで実施していたN501Y変異株から変わり, L452R変異株スクリーニング検査の検査数の報告が求められるようになった5)。以前に報告を行ったN501Y変異株の置き換わりに関する分析やその後の解析では, 5月中旬時点において, 国内の大多数の都道府県でN501Y変異株への90%以上の置き換わりがみられた6)。今回は以前の報告と同様の手法を用いて, 国内におけるL452R変異株への置き換わりについての検討を行った。

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国内流行初期のSARS-CoV-2デルタ株国内探知症例の疫学的, 分子疫学的特徴について

(IASR Vol. 42 p267-269: 2021年11月号)

 

 2020年にインドで報告された新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新規変異株であるB.1.617.2系統の変異株(デルタ株)は, 2021年3月下旬に検疫で初めて検出され1), 4月に日本国内で感染者が確認されて以降, 8月中には大都市圏でゲノムが解読された症例の約9割がデルタ株になるなど, 急速に置き換わりが進んだ。国立感染症研究所(感染研)はデルタ株流行初期に国外からの流入起点が少なくとも7つあることをハプロタイプネットワークから同定し, 7つのうち6つは終息したこと, 残る1つからその後全国に流行が拡大したことを報告した2)。今回, 自治体公表資料, SARS-CoV-2感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)への登録情報から疫学情報を収集し, 7つの起点における流入および感染拡大の要因について検討を行った。

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新型コロナウイルスN501Y変異株感染入院患者が従来の退院基準を満たした日におけるCt値および抗原量に関する検討

(IASR Vol. 42 p233-234: 2021年10月号)

 
はじめに

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者は2020(令和2)年6月25日付の事務連絡1)に基づいて発症日から10日間経過し, かつ, 症状軽快後72時間経過した場合に退院が認められてきた。しかし, 世界的に流行しているN501Y変異株は科学的データが乏しいことから, 2020年12月25日付の事務連絡により退院基準として2回連続の核酸検出検査による陰性確認が必要となった2)。北海道でも2021(令和3)年2月頃から市中でN501Y変異株感染者が増加し, 入院病床がひっ迫する状況となった。2021年4月8日に国立感染症研究所より, 空港検疫所における軽症例および無症状例のウイルス量の経時的変化に関する調査が報告された3)。変異株症例と非変異株症例のウイルスRNAコピー数を比較すると, 診断後7日には明らかな違いはなく, 診断後10日には103copies/反応以下と少なくなっており, ウイルス分離試験でも陰性であった。この知見によりN501Y変異株感染者においても従来の退院基準に基づいて退院が可能となった4)。しかし, 中等症以上を含む入院患者における知見は乏しい。今回, N501Y変異株感染入院患者が従来の退院基準を満たした日におけるCt値および新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の抗原量について検討した。

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コールセンターにおけるCOVID-19クラスター事例:気流調査に基づく予防策の検討

(IASR Vol. 42 p234-236: 2021年10月号)

 
はじめに

 2021年5~6月, 東京都内のオフィスビルの1つのフロア(Aフロア)に所在する複数のコールセンター(事業所)で, 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症例が報告された。これら症例の集積を確認した管轄である池袋保健所が, 国立感染症研究所(厚生労働省クラスター対策班)に本事例の感染源・感染経路の検討を要請した。また, 気流・換気の調査に関しては北海道大学および熊本大学の協力を得た。本稿では, 調査結果と提言を簡潔に報告する。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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