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2021年12月8日

国立感染症研究所

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WHOの変異株B.1.1.529系統を監視下の変異株(Variant Under Monitoring; VUM)に分類したが(WHO. Tracking SARS-CoV-2 variants)、同年11月26日にウイルス特性の変化可能性を考慮し、「オミクロン株」と命名し、懸念される変異株(Variant of Concern; VOC)に位置づけを変更した(WHO. Classification of Omicron (B.1.1.529) )。同じく、欧州CDC(ECDC)も、11月25日時点では同株を注目すべき変異株(Variant of Interest; VOI)に分類していたが(ECDC. SARS-CoV-2 variants of concern)、11月26日にVOCに変更した(ECDC. Threat Assessment Brief)。

2021年11月26日、国立感染症研究所は、PANGO系統でB.1.1.529系統に分類される変異株を、感染・伝播性、抗原性の変化等を踏まえた評価に基づき、注目すべき変異株(VOI)として位置づけ、監視体制の強化を開始した。2021年11月28日、国外における情報と国内のリスク評価の更新に基づき、B.1.1.529 系統(オミクロン株)を、懸念される変異株(VOC)に位置付けを変更した。

 

表 SARS-CoV-2 B.1.1.529系統(オミクロン株)の概要

 

PANGO

系統名

日本

感染研

WHO

EU

ECDC

UK

HSA

US CDC

スパイクタンパク質の主な変異

検出報告国・地域数

B.1.1.529

VOC

VOC

VOC

VOC*

 

VOC†

 

G142D, G339D, S371L, S373P, S375F, K417N, N440K, G446S, S477N, T478K, E484A, Q493K, G496S, Q498R, N501Y, Y505H

57か国

*UK HSA. SARS-CoV-2 variants of concern and variants under investigation in England: technical briefing 30.

†CDC. SARS-CoV-2 Variant Classifications and Definitions.

オミクロン株について

  •   オミクロン株は基準株と比較し、スパイクタンパク質に30か所程度のアミノ酸置換(以下、便宜的に「変異」と呼ぶ。)を有し、3か所の小欠損と1か所の挿入部位を持つ特徴がある。このうち15か所程度の変異は受容体結合部位(Receptor binding protein (RBD); residues 319-541)に存在する(ECDC. Threat Assessment Brief)。
  •   国内外で検出されているオミクロン株は、これらのそれぞれの変異を認めるものも、認めないものもあるため、オミクロン株を規定する変異(variant defining mutations)は未だ定まっていない。今後どの変異がオミクロン株において主流になるかによって、オミクロン株を規定する一連の変異が定まってくるものと考えられる。
  •   2021年12月6日時点でGISAIDに登録されているオミクロン株525件の50%以上で認める変異や欠損は以下の通りである:A67V、del60/70、T95I、G142D、del143/145、N21I、del212/212、G339D、 S371L、S373P、S375F、S477N、T478K、E484A、Q493R、G496S、Q498R、N501Y、Y505H、T547K、 D614G、H655Y、N679K、P681H、N764K、D796Y、N856K、Q954H、N969K、L981F(Outbreak.info)
  •   このうち、例えば、G339D、S477N、T478K、N501Y変異等はSARS-CoV-2がヒトの細胞に感染する際の受容体であるACE2への親和性が高まっている可能性がある(Deep Mutational Scanning of SARS-CoV-2 Receptor Binding Domain Reveals Constraints on Folding and ACE2 Binding. Cell.)。また、K417N (オミクロン株の50%未満(46.5%)で認めるため上記には含まれない)、N440K、E484A等は抗体医薬として承認されているものを含めたモノクローナル抗体からの逃避が示唆されている(CDC. Science Brief: Omicron (B.1.1.529) Variant)。さらに、H655Y、N679K、P681H変異はS1/S2フリン開裂部位近傍の変異であり、細胞への侵入しやすさに関連する可能性がある(DOH RSA. SARS-CoV-2 Sequencing & New Variant Update 25 November 2021)。非構造タンパク質(nonstructural protein)の一種であるnsp6における105-107欠失は、アルファ株、ベータ株、ガンマ株、ラムダ株にも存在する変異であり、インターフェロンに拮抗的に作用する可能性が示唆されている。インターフェロンは、ウイルスの増殖阻止や免疫系の調整などの働きをするサイトカインの一種であり、主には(ワクチンで得られる免疫のような獲得免疫ではなく)自然免疫に関与する因子であるが、これに拮抗的に作用する結果、免疫逃避に寄与する可能性・伝播性を高める可能性が指摘されている。また、ヌクレオカプシドタンパク質におけるR203K、G204R変異はアルファ株、ガンマ株、ラムダ株にも存在し、感染・伝播性を高める可能性がある。
  •   ただし、ウイルスの特性の変化や、ワクチンや既感染による免疫からの逃避、臨床像等は、各ウイルスが有している変異や欠損等の組み合わせによって決まるため、それぞれの変異や欠損を単独で評価してもそれが必ずしも一連の変異や欠損を持つウイルスの特性等と合致しない可能性があるので、解釈に注意が必要である。

海外での発生状況

世界での発生状況

  •   2021年11月8日に南アフリカで最初のオミクロン株による感染例(以下オミクロン株感染例)が報告されて以降、12月7日までに日本を含め全世界57か国から感染例が報告され(WHO: Weekly epidemiological update on COVID-19 - 7 December 2021)、このうち、複数の国で市中での感染が疑われる事例が報告された。12月7日時点でECDCで把握された情報の範囲では、死亡例は報告されていない(ECDC. Epidemiological update: Omicron variant of concern (VOC) – data as of 6 December 2021 (12.00))

南アフリカでの発生状況

  •   南アフリカでは2021年11月以降、SARS-CoV-2検査数、陽性例数、陽性率が増加傾向にある。陽性率は全ての州で増加しており、第47週時点で地域別ではハウテン(Gauteng)州で最も高かった(約16%)(National Institute for Communicable Diseases. COVID-19 TESTING SUMMARY WEEK 47 (2021))
  •   南アフリカのSARS-CoV-2の実効再生産数(Rt)は2021 年8月中旬から10月下旬までは1を下回っていたが、その後急上昇し、11月中旬には2.2 (95% CI 1.96-2.43)となった(Eidgenössische Technische Hochschule Zürich. COVID-19 Re.)
  •   ゲノムサーベイランスでは10月はデルタ株が84.3%(548/650)を占めていたが、11月は検査されたSARS-CoV-2陽性例のうち73%(228/312)がオミクロン株であった (National Institute for Communicable Diseases: SARS-COV-2 GENOMIC SURVEILLANCE UPDATE (3 DEC 2021))

重症度とワクチン接種歴に関する情報を含む英国の発生状況

  •   英国健康安全保障庁(HSA)の発表によると、2021年11月30日時点で、イングランドにおけるオミクロン株感染例は22例確認されており、このうち14日以上前に少なくとも2回のワクチン接種を受けた感染例が12例、初回接種から28日以上経過していた感染例が2例、ワクチン未接種の感染例が6例、ワクチン接種に関する情報が得られなかった感染例が2例であった。入院例や死亡例の報告はない(UK HSA. SARS-CoV-2 variants of concern and variants under investigation in England Technical briefing 30)。

 

日本での発生状況

  •   2021年12月6日までに海外で感染したと推定される3例のオミクロン株感染例が報告された(2021年12月6日時点)。うち1例は30代男性でナミビア滞在歴があり、到着時無症状であった (厚生労働省 2021年11月30日報道発表資料 新型コロナウイルス感染症(変異株)の無症状病原体保有者について(空港検疫))。1例は20代男性でペルー滞在歴があり、到着時無症状であった(厚生労働省 2021年12月1日報道発表資料新型コロナウイルス感染症(変異株)の無症状病原体保有者について(空港検疫))。1例は30代男性でイタリア滞在歴があり、到着時無症状であった(厚生労働省 2021年12月6日報道発表資料新型コロナウイルス感染症(変異株)の無症状病原体保有者について(空港検疫))。なお、12月6日時点でイタリアからオミクロン株検出の報告があり、ナミビア、ペルー両国からは検出の公式な報告はない。
  •   上記3例と同じ便に搭乗していた乗客について、全員を濃厚接触者として扱い健康観察および定期的に検査を実施中である。

 

ウイルスの性状・臨床像・疫学に関する評価についての知見

オミクロン株については、現時点ではウイルスの性状に関する実験的な評価や疫学的な情報は限られている。国内外の発生状況の推移、重症度、年代別の感染性への影響、ワクチンや既存の治療薬の効果についての実社会での影響、既存株感染者の再感染のリスクなどへの注視が必要である。

      感染・伝播性

南アフリカにおいて流行株がデルタ株からオミクロン株に急速に置換されていることから、オミクロン株の著しい感染・伝播性の高さが懸念される(WHO: Classification of Omicron (B.1.1.529) , ECDC; Threat Assessment Brief)。

南アフリカでは10月にウイルスゲノム解析された検体の84%がデルタ株であったが、11月には73%がオミクロン株であった(National Institute for Communicable Diseases: SARS-COV-2 GENOMIC SURVEILLANCE UPDATE (3 DEC 2021))。ただしS gene target failure(詳細は後述)を認める検体(オミクロン株であることが疑われる検体)を優先的にウイルスゲノム解析しているのであれば、73%という値は過大評価である可能性がある。また、10月にはデルタ株の流行が減少していた時期でもあるため、解釈に注意が必要である。

南アフリカでの予備的なデータによると、デルタ株に比べてオミクロン株の感染・伝播性はかなり高いと推測されている。モデリングによる予測ではオミクロン株は今後数カ月以内にEU/EEAにおけるSARS-CoV-2感染の半数以上を占めるようになるとされている(ECDC: Threat Assessment Brief: Implications of the further emergence and spread of the SARS CoV 2 B.1.1.529 variant of concern (Omicron) for the EU/EEA first update 2 December 2021)。

オックスフォード大学が行った立体構造予測では、オミクロン株に存在する変異は、抗体結合に影響を与える可能性が高く、新型コロナウイルスがヒトの細胞に感染する際の受容体であるACE2との結合がこれまでの変異株よりも高まる可能性があることが示唆された(データの詳細はまだ公開されていない)(UK HSA SARS-CoV-2 variants of concern and variants under investigation in England Technical briefing 30)。

香港では、同じホテルに隔離中だった南アフリカから入国した無症状のオミクロン株感染例が、他者へ感染させたことを示唆される事例が認められた。2名とも2回のワクチン接種歴があり廊下を挟んで反対側の部屋に隔離されていた。この2名から検出されたオミクロン株については、全ゲノム解析で1塩基のみの違いであった。疫学調査では、この2名で共有した物品はなく、お互いが部屋に出入りする機会もなかった。それぞれがドアを開ける機会は食事を廊下から回収するときと、定期的なPCR検査を受けるときであった。ただし、2名の帰国日は異なっていたため定期的なPCR検査を受ける日程が同日であった可能性は低い(Probable transmission of SARS-CoV-2 omicron variant in quarantine hotel, Hong Kong, China, November 2021.Emerg Infect Dis.

      ワクチン効果への影響や免疫からの逃避

オミクロン株の有する変異は、これまでに検出された株の中で最も多様性があり、感染・伝播性の増加、既存のワクチン効果の著しい低下、及び再感染リスクの増加が強く懸念されるとしている (ECDC; Threat Assessment Brief) 。

一方で、現時点で明らかな細胞性免疫からの逃避についての情報はなく、重症化予防効果への影響は不明である。

南アフリカにおいてSARS-CoV-2陽性例および検査のサーベイランスデータを用いた研究では、2種類の手法を用いて、非オミクロン株とオミクロン株への再感染のしやすさについて検討された(Increased risk of SARS-CoV-2 reinfection associated with emergence of the Omicron variant in South Africa. MedRxiv)。まず、初回感染の発生率に対する再感染の発生率の比が第1波と同じであると仮定して、その後の再感染者数を予測したところ、第2波(ベータ株主流)、第3波(デルタ波主流)で観察された再感染者数は予測範囲内であったが、11月に観察された再感染者数は予測範囲を上回っていた。次に、全期間について初回感染の発生率に対する再感染の発生率の比を算出したところ、第1波(従来株主流)は0.15、第2波(ベータ株主流)は0.12、第3波(デルタ株主流)は0.09であったが、11月以降は0.25と上昇していた。比は一貫して1を下回っており、初回感染よりも再感染の発生率は低いが、ベータ株やデルタ株の流行時に比較して、再感染の発生率は高まっている可能性があった。なお、この検討では、個々のSARS-CoV-2陽性例のワクチン接種歴が得られていないためワクチン接種による感染予防効果は検討されていない。また、SARS-CoV-2陽性例のウイルスゲノム解析結果は不明であり、検査対象は時系列的に変化し、受療行動が変化している可能性があることにも留意する必要がある。

       重症度

オミクロン株感染例について、現時点では重症度について結論づけるだけの知見がない。十分な観察期間と年齢、SARS-CoV-2の感染歴、ワクチン接種歴などの情報を含めた、さらなる研究が必要である(ECDC. Implications of the further emergence and spread of the SARS-CoV-2 B.1.1.529 variant of concern (Omicron) for the EU/EEA – first update 2 December 2021)。

南アフリカハウテン州ツワネ市都市圏からの報告では、重症度の上昇を示唆する所見は現段階で見られていないが、オミクロン株の流行の初期段階であることから、特に今後二週間の動向について注視する必要がある(South African Medical Research Council. Tshwane District Omicron Variant Patient Profile - Early Features)

 

     検査診断

国立感染症研究所の病原体検出マニュアルに記載のPCR検査法のプライマー部分に変異は無く、検出感度の低下はないと想定される。

オミクロン株は国内で現在使用されるSARS-CoV-2 PCR診断キットでは検出可能と考えられる。

Thermo Fisher社TaqPathにおいて採用されているプライマーにおいて、ORF1, N, S遺伝子のPCRでS遺伝子が検出されない(S gene target failure; SGTFと呼ばれる)特徴をもつ。一方で、これまで多くの国で流行の主体となっているデルタ株ではS遺伝子が検出されることから、この特徴を利用し、デルタ株が主流である国においてはオミクロン株の代理マーカーとして、SGTFが利用できる(WHO: Classification of Omicron (B.1.1.529) )。なお、SGTFはアルファ株でもみられ、代理マーカーとして使用された。

抗原定性検査キットについては、ヌクレオカプシドタンパク質の変異の分析で診断の影響はないとされるが、南アフリカ政府において検証作業が進められている(NCID: Frequently asked questions for the B.1.1.529 mutated SARS-CoV-2 lineage in South Africa)。

     感染拡大状況

アフリカでは、感染例が報告されていない国からの輸出例が確認されていること、またゲノムサーベイランスが十分に実施されていない国もあることを考慮すると、すでに広い範囲でオミクロン株による感染が拡大している可能性がある。

世界各地でオミクロン株感染例の報告が増加しており、アフリカ以外でも複数の国・地域から市中感染の可能性が示唆される事例が報告されている。さらに、ゲノムサーベイランスの質が十分でない国・地域においては探知されていない輸入例が発生している可能性やオミクロン株による感染拡大の程度が過少評価されている可能性がある。

 

国内におけるスクリーニング検査法

感染研では、リアルタイムRT-PCR法によるオミクロン株スクリーニング検査の方法を検討した。比較的早期に導入可能と考えられる、これまで感染研より情報提供してきたN501Y変異検出法とL452R変異検出法について、まず検討を行った。

 

      遺伝子配列による検討

感染研より情報提供したL452R変異検出系で利用されているプライマー/プローブセットは、プライマー配列内にオミクロン株に対して2カ所のミスマッチがあった。そのため、オミクロン株のL452(L452R変異検出系陰性)を検出する感度が落ちる可能性があった。一方、大半を占めるデルタ株452R(L452R変異検出系陽性)として検出し除外できる方法と考えられた。

感染研より情報提供したN501Y変異検出系で利用されていたプライマー/プローブセットは、オミクロン株に対して、プライマー配列内に1カ所のミスマッチに加え、プローブ配列内にも1カ所ミスマッチが認められたため、501Y (N501Y変異検出系陽性)を検出する感度が落ちる可能性が懸念された。

遺伝子配列から得られるこれらの情報から、L452R変異検出リアルタイムRT-PCR法による検出法を暫定的なスクリーニング検査の方法として提案した。

      オミクロン株陽性者検体を用いた検討

2021年11月30日にオミクロン株陽性者の検体RNAが得られたことから、これを用いてN501Y変異検出法とL452R変異検出法について比較検討を行った。

オミクロン株に対してL452R変異検出系は、プライマーのミスマッチによりN2検出系に比べるとL452検出時のCp値は若干大きくなるものの、蛍光増殖曲線はしっかりとしたシグモイドカーブを描くためL452を識別する事は可能であった。ただし、L452を識別する際は、Cp値(Ct値)のみを確認するのではなく、L452の蛍光増殖曲線を目視で確認する必要がある。

オミクロン株に対してN501Y変異検出系は、プライマーおよびプローブのミスマッチによりN2検出系に比べると501Y検出時のCp値は大きくなり、シグモイドカーブの立ち上がりが遅くなるため、機械によっては陰性と判定される可能性が考えられた。そのため、501Yを識別する際は、Cp値(Ct値)のみを確認するのではなく、501Yの蛍光増殖曲線を目視で確認する必要があることに留意する必要がある。

      今後のオミクロン株のスクリーニング検査について

直近までL452R変異検出系によりデルタ株のスクリーニングを行っており、再開が迅速に可能であること、プローブ領域にミスマッチがない事から、オミクロン株のスクリーニング法を迅速に展開する観点において、L452R変異検出系をオミクロン株スクリーニング暫定利用の第一選択とした。

オミクロン株陽性者検体を利用した検討から、N501Y変異検出系での501Y検出時のCp値(Ct値)は大きくなるが、501Yの蛍光増殖曲線を目視で確認することでオミクロン株のスクリーニングに利用する事は可能である。

感染研では、引続きオミクロン株とそれ以外の株を特異的に識別する事が可能な変異検出系の開発に向け検討を行っている。

      留意点

オミクロン株以外にも現在国内での流行は確認されていないが、アルファ株なども501YやL452を有しており、またN501Y変異を有していないオミクロン株やL452R変異を有するオミクロン株もわずかながら報告されているため、オミクロン株と確定するためにはゲノム解析が必須である。

検体中のウイルス核酸濃度が低い場合は、L452R変異検出系でL452および452Rのどちらも識別できずに判定不能となる場合がある。この場合はオミクロン株である可能性を否定する事ができない。

検体中のウイルス核酸濃度が低い場合は、N501Y変異検出系でN501および501Yのどちらも識別できずに判定不能となる場合がある。この場合はオミクロン株である可能性を否定する事ができない。

N501Y変異検出系を用いる場合は、Cp値(Ct値)のみを確認するのではなく、501Yの蛍光増殖曲線を目視で確認する必要があることに留意する必要がある。

国内における感染拡大についてのリスク評価

現時点で国内でのオミクロン株による感染拡大を示唆する所見はない。感染者が報告された国を中心に入国者の健康観察体制の強化が進められているところであるが、海外では、南アフリカなどの市中感染が報告されている国以外への渡航後のオミクロン株感染例や、オミクロン株感染例との接触歴が明らかでない感染例が報告されている。水際対策と並行して、検疫及び国内での変異検出PCR及びゲノムサーベイランスによる監視を引き続き行う必要がある。現時点で、感染・伝播性についてのエビデンスは十分でないため、オミクロン株感染例と同一空間を共有した者については、マスクの着用の有無や接触時間にかかわらず、幅広な検査の対象としての対応を行うことが望ましい。

 

基本的な感染対策の推奨

個人の基本的な感染予防策としては、変異株であっても、従来と同様に、3密の回避、特に会話時のマスクの着用、手洗いなどの徹底が推奨される。

 

参考文献

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厚生労働省2021年12月1日報道発表資料. 新型コロナウイルス感染症(変異株)の無症状病原体保有者について(空港検疫)https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22520.html

 

注意事項

迅速な情報共有を目的とした資料であり、内容や見解は情勢の変化によって変わる可能性がある。

更新履歴

 第3報 2021/12/8

 第2報 2021/11/28

 第1報 2021/11/26

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan