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第9回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和2年9月24日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第9回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード資料3)。

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直近の感染状況等

〇新規感染者数の動向

  • 全国の発症時点で見た感染状況は、7月末をピークに減少に転じたが、その傾向に鈍化が見られる。8月最終週以降、東京、大阪、愛知の実効再生産数は、1をはさんで前後しており、全国的にも直近で1に近い水準となっている。
  • 接待を伴う飲食店などハイリスクの場における積極的な対応や都道府県による自粛要請へ の協力、市民の行動変容の影響などもあってか、新規感染者数は全国的に減少していたが、上昇に転じる動きも見られ、その動向に留意が必要。 
    ・人口10万人当たりの1週間の累積感染者数(9/9~15、9/16~22)全国( (2.96人(3,731人↑)、2.61人(3,287人↓))、東京都 (9.02人(1,255人↑)、8.05人(1,120人↓))、愛知県 (2.79人(211人↑)、2.52人(190人↓))、大阪府 (6.37人(561人↑)、5.04人(444人↓))、福岡県 (2.27人(116人↓)、0.92人(47人↓))
    ・感染経路が特定できない症例の割合(9/12~18) 全国 48.4%(前週差0.5%↓)、東京都 50.5%(3.5%↓)

〇入院患者数の動向(※)

  • 入院者数は減少傾向となっている。受入確保病床に対する割合(括弧内)も同様であるが、一部地域ではやや高水準となっている。
    ・入院者数(9/16):全国 3,754人↓(14.2%)、東京都 1,234人↓(30.9%)、愛知県 172人↓(21.7%)、 大阪府 375人↓(28.3%)、福岡県 144人↓(29.4%)、沖縄県 145人↓(31.2%)
  • 重症者数は7月上旬以降増加傾向が続いていたが、8月下旬以降減少傾向となっている。
    ・重症者数(9/16):全国 316人(300人↓)(9.6%(9.1%))、東京都 116人↑(23.2%)、愛知県 19人↑(27.1%)、大阪府(※) 51人(35人↓)(19.5%(13.4%))、福岡県 10人↓(16.7%)、沖縄県 22人↑(41.5%)

〇検査体制

  • 検査件数に変動はあるが、直近の検査件数に対する陽性者の割合は2.9%であり、緊急事態宣言時(4/6~4/12の8.8%)と比較すると引き続き低位であるが、4連休に伴う検査数の減少の影響にも留意が必要である。
    ・検査数(9/7~9/13、9/14~20(※)):全国 (126,734 件↓、81,024件↓)、東京都(37,369 件↑、19,614件↓)、愛知県 (4,315件↑、3,006件↓)、大阪府(9,986件↓、6,409件)、福岡県 (6,652件↓、4,899件↓)
    ・陽性者の割合(9/7~9/13、9/14~20(※)) :全国 (2.9%(前週差0.1%ポイント↓)、4.3%(1.4%ポイント↑)、   東京都 (3.3%(0.5%ポイント↑)、6.1%(2.8%ポイント↑)、愛知県 ((4.6%(0.4%ポイント↓)、6.9%(2.3%ポイント↑)、大阪府(5.7%(1.2%ポイント↑)、7.2%(1.5ポイント↑))、福岡県 (1.9%(1.0%ポイント↓)、1.2%(0.7%ポイント↓)

※ 「入院患者数の動向」は、厚生労働省「新型コロナウイルス感染症患者の療養状況、病床数等に関する調査」による。この調査では、記載日の0時時点で調査・公表している。
  重症者数については、8月14日公表分以前とは対象者の基準が異なる。↑は前週と比べ増加、↓は減少を意味する。

※ 9/14~20の検査数の数値は、民間検査会社と医療機関からの数字が一部含まれていない暫定値。陽性者数についても、陽性者数を当該検査数で割ったもののため、暫定値。

直近の感染状況の評価等

<感染状況について>

  • 新規感染者数は、8月第1週をピークとして全国的に減少に転じたが、その傾向に鈍化が見られる。発症日ベースの流行曲線でも、7月27~29日をピークとして下降に転じたが、その傾向が鈍化している。また、検査件数に対する陽性者割合は、前週差で0.1%ポイント減少して2.9%となった。(~9月13日の1週間)

  • 8月第1週以降、新規感染者数がいったん減少に転じた要因としては、接待を伴う飲食店など感染拡大の端緒となりうるハイリスクの場における積極的な対応や都道府県による自粛要請への協力が功を奏しはじめたことや、感染拡大の報道等に伴う市民の行動変容の影響などが考えられる。

  • 一方で、8月最終週以降、複数の自治体で新規感染者数の減少が止まってしまう動きや増加に転じる動きが見られ、その動向に注意が必要である。とりわけ、東京、大阪、愛知の実効再生産数は、 1をはさんで前後しており、全国的にも直近で1に近い水準となっている。これは、社会活動が活性化する中で、会食や職場などを介した感染が生じていることがうかがわれ、シルバーウィークの人の動きの影響や検査数の減少の影響なども含め、全国的な感染拡大につながることのないよう、警戒を続けていく必要がある。

  •  また、感染者数に占める中高年層の割合は、6月~7月と比較すると引き続き高い水準で推移しており、留意を要する状況である。一方で、重症者の状況については、7月上旬以降増加傾向が続いていたが、8月下旬以降減少傾向となっている。

  • 世界的にも、連日30万人近い新規感染者数を記録するなど感染拡大が続いていること等にも留意が必要である。

<今後の対応について>

  • これまで国内で感染拡大のきっかけとなってきた接待を伴う飲食店などのリスクの高い場における積極的な対応を継続していくとともに、クラスターが生じている会食や職場等での対応を強化していく必要がある。また、イベントや旅行の増加、大学での授業再開などで人の動きや対面での社会活動の活性化が見込まれる中で、改めて、「3密」や大声を上げる環境の回避、室内でのマスクの着用、フィジカル・ディスタンスの徹底、換気の徹底など、基本的な感染予防対策の実施を徹底することが重要である。

  • 併せて、院内・高齢者施設における施設内感染対策により重症者・死亡者を抑えていくとともに、クラスターが起きた場合の早期対応など、これからも必要な対策を継続すべきである。

  • 一方で、今後は異なる場が感染拡大のきっかけになる可能性もあり、諸外国での知見なども参考にしながら、感染拡大の端緒となり得る大規模クラスターやクラスター連鎖への早期かつ適切な対応ができる体制を整備していくことが求められる。また、地域によっては予想できない再拡大が生じる可能性があることにも留意が必要である。

 新型コロナウイルス感染症における治療の進展に関する資料(PDF)

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan