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第14回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和2年11月19日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第14回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード資料4)。

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直近の感染状況等

・新規感染者数は、11月以降増加傾向が強まり、2週間で2倍を超える伸びとなり、過去最多の水準となっている。大きな拡大が見られない地域もあるが、特に、北海道や首都圏、関西圏、中部圏を中心に顕著な増加が見られ、全国的な感染増加につながっている。感染拡大のスピードが増しており、このまま放置すれば、更に急速な感染拡大に至る可能性があり、厳しい状況が続いている。

 実効再生産数:全国的には1を超える水準が続いている。北海道、東京、大阪、愛知などで概ね1を超える水準が続いている。

・感染拡大の原因となるクラスターについては、地方都市の歓楽街に加え、会食や職場及び外国人コミュニティー、大学生などの若者、医療機関や高齢者施設などにおける事例など多様化や地域への広がりがみられる。また、潜在的なクラスターの存在が想定され、感染者の検知が難しい、見えにくいクラスターが感染拡大の一因となっていることが考えられる。

・こうした感染拡大の要因を明確に断定することは難しいが、基本的な感染予防対策がしっかり行われていないことや、そうした中での人の移動の増加、気温の低下による影響も考えられる。

・一方、感染者に占める60歳以上の割合は横ばいで推移しているが、感染者数は増加している。また、入院者数、重症者数は増加が続いており、病床占有率も上昇が続いている。このままの状況が続けば、予定された手術や救急医療の受入等を制限せざるを得なくなるなど、通常の医療との両立が困難となる。

【感染拡大地域の動向】

①北海道  札幌市を中心に接待を伴う飲食店などでクラスターが発生し、感染が拡大していたが、札幌市近郊を含め、道内全体にも感染が拡大。クラスターも、接待を伴う飲食店以外の職場、学校、医療機関や高齢者施設等が増加。濃厚接触者対応も厳しい状況となってきている。また、医療機関においては患者数の増加により、札幌市を中心に病床がひっ迫しており調整が困難になるなど、厳しい状況となっている。

②東京都  都内全域に感染が拡大。感染経路が分かっている中では、家庭内感染が最も多く、職場、高齢者施設等、会食と続いているが、感染経路不明割合も半数以上となっている。社会経済活動が活発化し、若年層を中心に感染拡大のリスクを高める機会が増加、大学等も含め感染の場面が多岐にわたっている可能性。

③大阪府  府内全域に感染が拡大。感染経路不明割合は約6割。歓楽街の関係者・滞在者や、家庭内、事業所等様々な場面で感染が確認される事例が発生。高齢者施設、医療機関、学校等でクラスターが発生。

④愛知県  県内全域に感染が拡大。感染経路不明割合は約4割。名古屋市で、歓楽街を中心に感染者が増加し、保健センターの負荷が大きくなっている。感染者の年齢や感染が生じた場は多様化しており、高齢者施設等、大学の課外活動に関連した発生も認めている。また、医療機関での対応も厳しさが増している。名古屋市以外についてもクラスターが多様化し、外国人コミュニテイ、大学、高齢者施設で散発。

北海道の一部の地域では、接触機会の削減・行動制限などの強い対策が求められる状況であると考えられる。東京、大阪、愛知においては、こうした強い対策が求められる状態に近づきつつある。

今後の対応について

感染者数の増加傾向が強まっており、新型コロナウイルス感染症対策以外の公衆衛生体制や医療提供体制を維持するためにも、可及的速やかに減少方向に向かわせる必要がある。

多様化するクラスターに対する対応が急務である。会食や接待を伴う飲食店、職場、大学生などの若者、外国人コミュニティ、医 療機関や高齢者施設等に対して、状況に応じた適切な対応を実施する。見えにくいクラスターへの対策も必要である。

11月9日の分科会の緊急提言も踏まえ、接待を伴う飲食店への取組の徹底や、医療が受けにくいなどの困難を抱える外国人コミュニティへの支援等クラスターの特徴に応じた対応を着実に行うとともに、事例の増加が見られる医療機関や高齢者施設等における検査の徹底等の速やかな対応を進める必要がある。

このため、11月16日の政府対策本部において、「今般の感染拡大に対応したクラスター対策のさらなる強化等について」として示されたように、①地方団体における事業者に対する協力要請とそのための支援、②早期検知しにくいクラスターへの対策、③検査・医療提供体制の確保、④保健所等の人材確保・支援 等に速やかに実行することが求められる。

また、感染の「減少要因」を強めるためには、こうしたクラスター対策に加え、個人や事業者による基本的な感染予防対策の徹底が何より重要である。特に行動範囲の広い若年層を中心に、感染リスクの高まる「5つの場面」などについて情報発信する必要がある。さらに、飲食の場面も含むマスクの徹底など実際の行動変容につながる情報発信の強化や飲食店等における業種別ガイドラインの徹底が改めて必要。人の移動を感染拡大のリスクとしないためにも、こうした基本的な感染予防対策の徹底が必要。

こうした取組を行う一方、こうしたクラスター対策や基本的な感染予防対策の徹底だけでは対応できない状況も懸念される状況であり、各都道府県においては、都道府県全体の動きだけでなく、都道府県内において感染が急拡大している地域があれば、そうした地域ごとの病床の状況等にもしっかりと着目し、地域に限定した対応も行うなど、各自治体において、速やかに必要な対応を行うことが必要。

今後、感染の急拡大が回避できず、病床のひっ迫の予兆が見られる等の事態となれば、速やかに一段と強い対策を行う必要がある。そうした事態を回避するためにも、国民が一丸となって対策を進めていく必要がある。

なお、今後の感染拡大に際しても、DV、性暴力、自殺等の相談体制について、必要な機能を果たしていくことが求められる。また、休校や休園の判断において、女性や子どもへの影響に配慮が必要である。

 感染状況分析・評価グラフ等 

 

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan