国立感染症研究所

保育所、幼稚園、小学校、中学校、高等学校において休校、学年閉鎖、学級閉鎖があった場合に、その施設数を計上するとともに、当該措置を取る直前の学校、学年、学級における在籍者数、患者数、欠席者数を計上するもの。
*2008/09シーズン第27報より対象施設に高等学校が追加されました。

  

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  • (令和4年9月5日~9月11日)令和4年9月16日作成
  • 第2(令和4年9月12日~9月18日)令和4年9月26日作成
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  • 第6(令和4年10月10日~10月16日)令和4年10月21日作成
  • 第7(令和4年10月17日~10月23日)令和4年10月28日作成
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  • 第9(令和4年10月31日~11月6日)令和4年11月11日作成
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  • 第11(令和4年11月14日~11月20日)令和4年11月25日作成
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  • 第14(令和4年12月5日~12月11日)令和4年12月16日作成
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  • 第34(令和5年4月24日~4月30日)令和5年5月10日作成
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  • 第36(令和5年5月8日~5月14日)令和5年5月19日作成
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  • 第39(令和5年5月29日~6月4日)令和5年6月9日作成
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  • 第44(令和5年7月3日~7月9日)令和5年7月14日作成
  • 第45(令和5年7月10日~7月16日)令和5年7月21日作成
  • 第46(令和5年7月17日~7月23日)令和5年7月28日作成
  • 第47(令和5年7月24日~7月30日)令和5年8月4日作成
  • 第48(令和5年7月31日~8月6日)令和5年8月14日作成
  • 第49(令和5年8月7日~8月13日)令和5年8月18日作成
  • 第50(令和5年8月14日~8月20日)令和5年8月25日作成
  • 第51(令和5年8月21日~8月27日)令和5年9月1日作成
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背景

  •    2020年以降、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行は継続しているが、世界保健機関(WHO)は2023年5月4日に国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)に該当しないことを宣言した。2023年8月25日現在、SARS-CoV-2の変異株はXBB.1.9系統、XBB.1.16系統など、BJ.1系統とBM.1.1.1系統の組換え体であるXBB系統が世界的に主流となっている(WHO, 2023a)

 

検出状況

  •    2022年に主流となっていたBA.2系統の亜系統で、過去に報告されたBA.2系統からスパイクタンパク質に30以上のアミノ酸変異を有するBA.2.86系統が、2023年7月にイスラエルとデンマークから報告され(GitHub, 2023)、その亜系統であるBA.2.86.1系統も報告されている。2023年9月7日までに67件(イスラエル3件、デンマーク12件、米国7件、英国8件、南アフリカ16件、ポルトガル2件、スウェーデン5件、カナダ2件、フランス6件、スペイン3件、オーストラリア1件、韓国1件、日本1件)の患者から分離されたBA.2.86系統(BA.2.86.1系統を含む)のゲノム解析結果がGISAIDに登録された(GISAID, 2023)。また、米国オハイオ州、スイス、タイの下水サーベイランスでBA.2.86系統が検出されたとの報告がある(CDC, 2023、WHO, 2023a)。
    米国からからの登録のうち1件は、米国の主要空港で実施されている入国者に対するゲノムサーベイランスにて、日本からの渡航者からBA.2.86系統が検出されたものである(検体採取日:8月10日)。ただし、このゲノムサーベイランスプログラムは匿名での協力を得るものであり個人情報を取得できないことから、日本国内での行動歴や日本以外への渡航歴は不明である(CDC, 2023)
  •    国内では週に1,000件以上のゲノム解析が実施されており、2023年8月28日時点で、国立感染症研究所ゲノムサーベイランスシステム(COG-jp)に2023年1月1日以降64,654件のゲノム解析結果が登録されているが、BA.2.86系統の登録はなく(国立感染症研究所, 2023)、国内では9月7日に東京都からGISAIDに登録されたBA.2.86.1系統1件のみが確認されている。東京都から報告された1件については、8月24日に都内医療機関で採取された検体であることが公表されている(東京都保健医療局, 2023)。また、検疫における入国時感染症ゲノムサーベイランスにおいても、BA.2.86系統は検出されていない(厚生労働省, 2023)。ただし、検体提出から登録・報告まで時間を要することから、直近数週間の登録情報の解釈には留意が必要である。

 

科学的知見

  •    BA.2.86系統は、スパイクタンパク質にBA.2系統と比較して30以上、XBB.1.5系統と比較して35以上のアミノ酸の違いがあることから、ワクチンや感染による中和抗体による免疫から逃避する可能性が生じている。BA.2.86系統はXBB系統と抗原性が大きく異なることからXBB系統の感染やワクチンによる中和抗体の免疫から逃避する可能性が高い一方で、細胞への感染性はXBB系統より大幅に低い可能性があるとする報告 (Yang S. et al., 2023)や、ワクチンによる中和抗体の免疫から逃避する可能性はBA.2系統より高いものの、現在主流となっているXBB系統の亜系統と同等であるとする報告 (Lasrado N. et al., 2023)、XBB系統流行以前の献血者の血清ではBA.2.86系統に対する中和抗体価が低かった一方で、XBB系統流行下での献血者の血清ではBA.2.86に対する比較的高い中和抗体価が得られたとの報告があり(Sheward D.J. et al., 2023)、一定した知見は得られていない。ただし、いずれも査読を受けていないプレプリント論文であることに注意が必要である。
    現時点で、重症度の変化や感染性に関する疫学的、臨床的知見はない。
  •    検査への影響に関して、国立感染症研究所ではBA.2.86系統のゲノム解析結果から感染研PCR法におけるプライマー、プローブ配列に変異がないことを確認しているほか、米国疾病予防管理センター(CDC)も分子・抗原診断への影響は少ないとしている(CDC, 2023)。また、秋以降に接種が実施されるXBB.1.5系統対応1価ワクチンを生産、販売しているファイザー社、モデルナ社はいずれも現在準備中のワクチンにおいて、BA.2.86系統に対する中和活性を確認したとの報道発表を行った (Reuters, 2023、Moderna. 2023)。
  •    治療薬への影響に関して、CDCは複数の米国政府機関の専門家で構成されるSARS-CoV-2 Interagency Group (SIG)の意見として、 BA.2.86系統の有するアミノ酸変異からは、ニルマトレルビル・リトナビル、レムデシビル、モルヌピラビルなどの現在使用可能なCOVID-19に対する抗ウイルス薬はBA.2.86系統に対しても有効性が示唆されるとしている(CDC, 2023)。。

 

各国、各機関による評価

  •    検出数は少ないものの、既存の変異株と比較したアミノ酸の違いが多いことから、WHOは8月17日に、欧州疾病予防管理センター(ECDC)は8月24日にBA.2.86系統を監視下の変異株(VUM:Variants Under Monitoring)に指定した(WHO, 2023b、ECDC, 2023a)。
  •    米国、英国、デンマーク、WHO、ECDCはそれぞれ評価を公表しており、欧米、アフリカ、アジアと世界的にウイルスが検出されていること、ゲノム解析件数が世界的に減少傾向にあることから、水面下で拡大している可能性があるものの、検出数が少なく評価は困難であるとしている(CDC, 2023、UKHSA, 2023、Denmark SSI, 2023、WHO, 2023b、ECDC, 2023b)。BA.2.86系統の評価のために、ウイルス学的、疫学的、臨床的知見、国内外での発生状況の監視を継続する必要がある。 

参考文献

 

注意事項

迅速な情報共有を目的とした資料であり、内容や見解は情勢の変化によって変わる可能性がある。  

 

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2023年9月7日時点
2023年9月12日一部修正

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概要

  •    2020年以降、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行は継続しているが、世界保健機関(WHO)は2023年5月4日に国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)に該当しないことを宣言した。2023年8月25日現在、SARS-CoV-2の変異株はBJ.1系統とBM.1.1.1系統の組換え体であるXBB系統が世界的に主流となっており、XBB.1.5系統、XBB.1.9系統、XBB.1.16系統など、複数のXBB系統の亜系統が報告されている。
  •    2023年2月に初めて報告されたEG.5系統はXBB.1.9.2系統の亜系統である。EG.5系統及びその亜系統はXBB.1.9系統、XBB.1.16系統などの一部にみられるF456L変異を有しているほか、EG.5.1系統の一部はこれに加えてL455F変異を有しており、XBB.1.5系統と比較して免疫を逃避する可能性が高くなることが示唆されている。
  •    8月22日までにGISAIDに登録されたEG.5系統の90%をEG.5.1系統が占めている。EG.5.1系統はアジアや欧米でこれまで主流となっている系統に対して感染者数増加の優位性を見せているが、重症度や感染性の上昇という知見はなく、世界的に9月以降の接種が計画されているXBB.1.5系統対応新型コロナウイルスワクチンの有効性が低下するという報告もない。
  •    世界的な検出割合の上昇を受け、WHOは8月9日にEG.5系統を注目すべき変異株(VOI: Variant of Interest )に、欧州疾病予防管理センター(ECDC)は8月10日に他の変異株と合わせて“XBB.1.5-like + F456L”の一群をVOIに指定した。

 

発生状況

  •    2023年8月25日現在、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株はBA.2系統の亜系統であるBJ.1系統とBM.1.1.1系統の組換え体であるXBB系統が世界的に主流となっており、XBB.1.5系統、XBB.1.9系統、XBB.1.16系統など、複数のXBB系統の亜系統がみられている(WHO, 2023a)。
  •    XBB.1.9.2系統の亜系統であるEG.5系統は2023年2月に初めて報告され、さらにその中でQ52H変異を有するものとして、2023年3月にEG.5.1系統が初めて報告された(GISAID, 2023)。8月29日までに、59の国と地域からGISAIDにEG.5系統及びその亜系統(以下EG.5系統)が18,274件登録され (covSPECTRUM, 2023)、登録された全検体に占める割合は、第27週(7月3日~9日)に12.8%であったものが、第31週(7月31日~8月6日)には 23.8%に上昇している(WHO, 2023a)。 GISAIDに登録されたEG.5系統のうちEG.5.1系統及びその亜系統(以下EG.5.1系統)が92.8%(16,967件)を占めている。EG.5.1系統は55の国と地域から登録されており、中国、米国、日本、韓国、カナダ等のアジアと北米から多く登録されているほか、欧州でも登録数が増加しており、各国において感染者数増加の優位性がみられている(covSPECTRUM, 2023)。一方で、これらの国におけるSARS-CoV-2感染者数、重症者数、死亡者数の推移は国によって異なり、EG.5.1系統の割合の上昇は感染者数や重症者数の増加には直結していない(UKHSA, 2023b、China CDC, 2023、CDC, 2023、 Government of Canada, 2023、 ECDC, 2023)。ただし、中国は感染者数などの公表が月1回であり、米国は感染者数の報告が終了するなど、各国におけるサーベイランスやその報告状況が異なることに注意が必要である。
  •    日本国内においては、2023年3月に初めてGISAIDに登録されて以降、8月29日までに1,943件のEG.5系統が登録され、うち96.0%(1,865件)がEG.5.1系統であった (covSPECTRUM, 2023)。民間検査会社の検体に基づくゲノムサーベイランスでは、第32週(8月7日~8月13日)に検出された検体のうち29%をEG.5.1系統が占め、今後その割合が上昇すると推定されている(国立感染症研究所, 2023a、国立感染症研究所, 2023b)。
  •    現時点で、EG.5系統の重症度への影響、感染性、治療薬への影響などの臨床的、疫学的な知見は得られていないことから、今後の国内外での検出状況、感染者数、重症者数の推移を注視する必要がある。
  

ウイルス学的知見

  •    EG.5.1系統は、EG.5系統が有しているF456L変異に加えてQ52H変異を有しているXBB.1.9.2系統の亜系統である。
    F456L変異については、F456L変異を有するXBB.1.5系統のシュードウイルスを用いたin vitroの報告で、XBB.1.5系統に対する中和抗体による免疫から逃避する可能性が指摘されている(Yisimayi A. et. al., 2023)。ただし、査読前のプレプリント論文であることに注意が必要である。
    また、EG.5.1系統の一部はF456L変異と隣接したアミノ酸変異であるL455F変異を有しており、XBB.1.5系統にL455F変異やF456L変異が加わることで中和抗体からの免疫を逃避する可能性が高くなるほか、これら2つの変異が併存することでアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)への結合能が上昇することを示唆する専門家もいる(Jian F. et al., 2023. 2023)。シュードウイルスを用いたin vitroでの報告では、EG.5.1系統の免疫逃避が起こる可能性はXBB1.5系統やXBB.1.9.2系統、XBB.1.16系統と同等であり、EG.5.1系統の感染者増加の優位性には、ウイルスの性質だけではなく、複数の要因が関与しているとの報告(Kaku Y. et. al., 2023)、XBB系統およびBQ系統の中和抗体による免疫から逃避する可能性がXBB.1.16系統よりわずかに高いとする報告(Wang Q. et al., 2023)や、新型コロナウイルスワクチン接種後のブレイクスルー感染による中和抗体による免疫から逃避する可能性がXBB.1.9.2系統よりわずかに高いとする報告(Uraki R. et al., 2023)があり、一定した見解は得られていない。ただし、いずれも査読前のプレプリント論文であることに注意が必要である。

 

新型コロナウイルスワクチンに関する知見

  •    現在日本や諸外国において、秋以降に接種が実施される新型コロナウイルスに対するワクチンとしてXBB.1.5系統対応1価ワクチンが準備されている(厚生労働省, 2023)。XBB.1.5系統対応1価ワクチンを生産、販売しているファイザー社、モデルナ社はいずれも現在準備中のワクチンにおいて、EG.5系統に対する中和活性を確認したとの報道発表を行った (Reuters, 2023、Moderna. 2023)。XBB.1.5系統対応1価ワクチンによる中和抗体は、EG.5.1に対してもXBB.1.5と同程度に効果があることも確認されている(Chalkias, S. et al., 2023)。EG.5.1系統とXBB.1系統の抗原性の差を調べたこれまでの報告でも、確認できた差は2倍程度とわずかである(Wang Q. et. al., 2023、Jian F. et al., 2023、Kaku Y. et. al., 2023、Uraki R. et al., 2023)。ただし、いずれも査読前のプレプリント論文等であることに注意が必要である。

 

海外の専門機関による評価

  •    WHOは2023年8月9日にEG.5に関するリスク評価を公表するとともに、EG.5系統をVOIに指定した。このリスク評価の中で、感染者数増加の優位性と免疫から逃避する可能性に関するリスクを中程度(Moderate)、重症度と臨床的な懸念に関してのリスクは低(Low)とし、総合的なリスクについて低(Low)とした。ただし、包括的な評価のためには、さらなる知見が必要と述べている(WHO, 2023b)。
  •    ECDCは2023年8月10日にEG.5系統を含む“XBB.1.5-like + F456L”を、EU/EEA圏内で拡大傾向にあること、市中での流行状況、免疫を回避する可能性に関する知見を理由にVOIに指定した。この中にはEG.5系統のほか、FL.1.5.1系統、XBB.1.16.6系統、XBB.1.5.59系統などが含まれており、EG.5系統だけではなくFL.1.5.1系統やXBB.1.16.6系統も一部の地域で感染者増加の優位性があることから、“XBB.1.5-like + F456L”として評価を行っている(ECDC, 2023)。 

参考文献

 

注意事項

迅速な情報共有を目的とした資料であり、内容や見解は情勢の変化によって変わる可能性がある。  

 

ブタの日本脳炎抗体保有状況 -2023年度速報-

(2023年8月30日現在)

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 日本脳炎は、日本を含め東南アジアを中心に広く常在した疾患で、日本脳炎ウイルス(Japanese encephalitis virus: JEV)に感染した者のうち100~1,000人に1人程度が発症すると推定される重篤な急性脳炎である [1]。感染経路は、主にイエカ属の蚊(日本では主にコガタアカイエカ)による吸血でJEVに感染したブタ等を刺咬・吸血したのちにヒトを吸血することで感染する。

  1960年代までは毎年夏から秋にかけて多数の日本脳炎患者が発生しており [2,3]、ブタの感染状況からJEVが蔓延している地域に多くの患者発生がみられた。1960年代の日本脳炎の患者が多数発生していた環境では、日本脳炎患者が検出される時期に先行してブタのJEVに対するHI抗体の上昇が確認されている [4]。1992年以降、日本脳炎患者の報告数は、2016年の11例、2019年の10例を除き全て一桁の報告でブタの感染状況と比較して患者発生数は低く、環境中のウイルス活動状況と必ずしも一致していない。しかし、ブタの抗体保有状況はウイルス陽性蚊の存在している地域を間接的に示唆するデータと推測され、少なくともこのような地域ではヒトへの感染リスクの存在する地域と考えられる。2015年には10か月齢の小児にも感染が確認され[5]、2022年は千葉県、広島県、熊本県から症例が報告されている。

 感染症流行予測調査事業では、全国各地のブタ血清中のJEVに対する抗体保有状況を赤血球凝集抑制法(Hemagglutination inhibition test: HI法)により測定し、JEVの蔓延状況およびウイルスの活動状況を調査している。前年の秋以降に生まれたブタがJEVに対する抗体を保有し、さらに2-メルカプトエタノール(2-ME)感受性抗体(IgM抗体)を保有している場合、そのブタは最近JEVに感染したと考えられる。下表は本年度の調査期間中におけるブタの抗体保有状況を都道府県別に示しており、JEVに最近感染したブタが認められた地域を青色、それに加えて調査したブタの50%以上に抗体保有が認められた地域を黄色、80%以上に抗体保有が認められた地域を赤色で示している。

 本速報はJEVの感染に対する注意を喚起するものである。それぞれの居住地域における日本脳炎に関する情報にも注意し、JEVが活動していると推測される地域においては、日本脳炎の予防接種を受けていない者、とくに乳幼児や高齢者は蚊に刺されないようにするなどの注意が必要である。

 なお、日本脳炎定期予防接種は、第1期(接種回数は初回2回、追加1回)については生後6か月から90か月に至るまでの間にある者、第2期(1回)については9歳以上13歳未満の者が接種の対象であるが、平成7年4月2日(1995年4月2日)から平成19年4月1日(2007年4月1日)までに生まれた者で積極的勧奨の差し控えなどにより接種機会を逃した者は、20歳になるまでの間、定期接種として合計4回の日本脳炎ワクチンの接種が可能である(詳細は厚生労働省ページを参照)。また、平成19年4月2日(2007年4月2日)~平成21年10月1日(2009年10月1日)までに生まれた者に対しても、生後6か月から90か月未満のみならず9歳以上13歳未満の間にも、第1期(3回)の不足分を定期接種として接種可能である。ただし、生後90か月(7歳半)以上9歳未満は定期接種として接種することができないので、注意が必要である。市区町村からの案内に沿って接種を受けていただくようお願いしたい[6,7]。

抗体保有状況
(月別推移)


抗体保有状況
(地図情報)

JE 2021 11
1. 日本脳炎とは
2. 松永泰子,矢部貞雄,谷口清州,中山幹男,倉根一郎. 日本における近年の日本脳炎患者発生状況-厚生省伝染病流行予測調査および日本脳炎確認患者個人票(1982~1996)に基づく解析-. 感染症学雑誌. 1999. 73: 97-103.
3. Arai, S., Matsunaga, Y., Takasaki, T., Tanaka-Taya, K., Taniguchi, K., Okabe, N., Kurane, I., Vaccine Preventable Diseases Surveillance Program of Japan. Japanese encephalitis: surveillance and elimination effort in Japan from 1982 to 2004. Japanese Journal of Infectious Diseases. 2008. 61: 333-338. Pubmed
4. Konno, J., Endo, K., Agatsuma, H., Ishida, N., Cyclic outbreaks of Japanese encephalitis among pigs and humans. American Journal of epidemiology. 1966. 84: 292-300.Pubmed
5. 2015年夏に千葉県で発生した日本脳炎の乳児例. IASR Vol. 38 p.153-154: 2017年8月号. 
6. 厚生労働省. 日本脳炎. (2023年7月10日アクセス)
7. 国立感染症研究所 予防接種スケジュール

国立感染症研究所 感染症疫学センター/ウイルス第一部

 

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ポリオ 2023年現在

(IASR Vol. 44 p113-114: 2023年8月号)
 

急性灰白髄炎(ポリオ)は, ポリオウイルスが中枢神経に感染し, 運動神経細胞を不可逆的に障害し, 弛緩性麻痺等を生じる感染症である。ポリオウイルスには, 3つの血清型(1, 2, 3型)がある。治療薬は存在せず, 3つの血清型のポリオウイルスに対するワクチン接種が, ポリオの発症予防・流行制御の基本戦略になる。

 

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大阪市内において検出されたロタウイルスG11について

(IASR Vol. 44 p131-132 2023年8月号)
 

ロタウイルスAは, 乳幼児に重症の急性胃腸炎症状を引き起こすウイルスで, 11本の遺伝子分節からなる2本鎖RNAゲノムを有する。11本の遺伝子分節は6種類の構造タンパク質(VP)と6種類の非構造タンパク質(NSP)をコードしている。その遺伝子型の組み合わせはVP7-VP4-VP6-VP1-VP2-VP3-NSP1-NSP2-NSP3-NSP4-NSP5の順にGx-P[x]-Ix-Rx-Cx-Mx-Ax-Nx-Tx-Ex-Hx(xは数字)と表記される。外殻タンパク質であるVP7(G型)およびVP4(P型)は中和抗原を有し, 遺伝子型別の基礎として広く用いられてきた。国内においては病原体検出情報システムを通じてVP7の遺伝子型の報告がなされており, G1, G2, G3, G8およびG9が流行の主流である1)。ただし, わが国では2020年10月からロタウイルスワクチンが定期接種化され, 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)流行の影響も受けて, 近年のロタウイルスAの検出報告数は非常に少ない傾向が続いている。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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