国立感染症研究所

蚊媒介感染症の診療ガイドライン(第3版)の概要

 

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蚊媒介感染症の診療ガイドライン(第3版)の概要

(IASR Vol. 37 p. 123: 2016年7月号)

2014年8月~10月初旬にかけて, 国内で約70年ぶりにデング熱患者の発生が確認された。2015年4月にはデング熱の国内流行事例を受けて蚊媒介感染症に関する特定感染症予防指針(平成27年厚生労働省告示第260号)が告示された。本診療ガイドラインは, 特定感染症予防指針に基づき, 医師がデング熱, チクングニア熱およびジカウイルス感染症などの蚊媒介感染症を診断し, 確定した症例について直ちに届出を行うことができるよう, 疫学, 病態, 診断から届出, 治療, 予防に至る一連の手順などを示したものである。

本診療ガイドラインは2015年5月に「デング熱及びチクングニア熱の診療ガイドライン」(第1版)として発刊された。その後, 2016年に入りジカウイルス感染症が南北アメリカ大陸, カリブ海地域等で急速に拡大し, ジカウイルスの関連が強く疑われる小頭症を含む先天異常, ギラン・バレー症候群を含む神経疾患の集団発生について, 世界保健機関が「国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態(PHEIC)」を宣言した。このため, 2016年7月に「蚊媒介感染症の診療ガイドライン」(第3版)として, ジカウイルス感染症の国内発生時の対応を含め, 診療対応の考え方や手順を整理した(http://www.niid.go.jp/niid/images/epi/dengue/Mosquito_Mediated_160713-3.pdf)。

ジカウイルス感染症はヤブカ属のネッタイシマカ, ヒトスジシマカなどによって媒介される。その他に, 母子感染(胎内感染), 輸血, 性行為による感染経路等が知られている。

ジカウイルスに感染したヒトが症状を呈した場合を「ジカウイルス病」と分類する。発症者は主として軽度の発熱(<38.5℃), 頭痛, 関節痛, 筋肉痛, 斑状丘疹, 結膜炎, 疲労感, 倦怠感などを呈する。斑状丘疹は掻痒感を伴うことが多く, 90%以上に認められるのに対して, 発熱の頻度は36~65%とされている。大半の患者では入院を必要としないが, ジカウイルス病の神経合併症としてギラン・バレー症候群を発症することが報告されている。一方, ジカウイルスの胎内感染により小頭症などの先天異常をきたした場合を 「先天性ジカウイルス感染症」 と分類する。

現時点で, 国内で製造承認された検査試薬はなく, 確定診断には地方衛生研究所, 国立感染症研究所(感染研)などの専門機関での検査が必須である。表1の条件を参考に「ジカウイルス病を疑う患者」については, ウイルス検査について最寄りの保健所に相談するとともに, 必要に応じて日本感染症学会が公表しているジカウイルス感染症協力医療機関(http://www.kansensho.or.jp/mosquito/zika_medical.html)に相談または患者を紹介する。ウイルス検査としては, 血液, 尿検体を対象としてRT-PCR, 特異IgM抗体, 中和抗体, ウイルス分離がある。

ジカウイルス感染を疑われる妊婦は, ジカウイルス感染症協力医療機関等の専門機関において母体のジカウイルス感染の評価を実施する。図1に 「母児に対する検査手順」 を示した。また, ジカウイルス感染症の検査の対象となりうる妊婦について表2に示す。必要なジカウイルス検査は感染研等で実施する。また, 出生後の新生児において, 先天性ジカウイルス感染症と合致する先天異常を認めた場合には, 母親の妊娠期間中にジカウイルス感染症流行地域への渡航歴の有無, 妊娠前または妊娠中に, 流行地への渡航歴のある男性(帰国後8週間以内, ジカウイルス病の診断の有無にかかわらない)と適切にコンドームを使用しない性交渉歴があるか否か, 他の原因が特定されないか否かの検討を行った上で, 母体および新生児におけるウイルス検査を実施する。「ジカウイルス病」, 「先天性ジカウイルス感染症」, いずれも4類感染症全数把握疾患として届出が必要である。

国立感染症研究所
 感染症疫学センター
 ウイルス第一部

 

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