国立感染症研究所

(2014年10月17日改訂)

手足口病(hand, foot and mouth disease:HFMD)は、その名が示すとおり、口腔粘膜および手や足などに現れる水疱性の発疹を主症状とした急性ウイルス感染症で、1950年代後半に認識されたウイルス性発疹症であり、我が国では1967年頃からその存在が明らかになった。本疾患はコクサッキーA16(CA16)、CA6、エンテロウイルス71(EV71)などのエンテロウイルスが原因ウイルスである。基本的に予後は良好な疾患であるが、急性髄膜炎の合併が時に見られ、稀であるが急性脳炎を生ずることもあり、なかでもEV71は中枢神経系合併症の発生率が他のウイルスより高いことが知られている。

(2014年10月14日改訂)

ネッタイシマカなどの蚊によって媒介されるデングウイルスの感染症である。デングウイルスはフラビウイルス科に属し、4 種の血清型が存在する。比較的軽症のデング熱と、重症型のデング出血熱とがある。

(2014年08月15日改訂)

エボラ出血熱はエボラウイルスによる急性熱性疾患であり、ラッサ熱、マールブルグ病、クリミア・コンゴ出血熱とともに、ウイルス性出血熱(Viral Hemorrhagic Fever:VHF)の一疾患である。本疾患が必ずしも出血症状を伴うわけではないことなどから、近年ではエボラウイルス病(Ebola virus disease: EVD)と呼称されることが多い。以後、EVDと略する。

(2014年07月23日改訂)

ヘルパンギーナは、発熱と口腔粘膜にあらわれる水疱性の発疹を特徴とした急性のウイルス性咽頭炎であり、乳幼児を中心に夏季に流行する。いわゆる夏かぜの代表的疾患である。その大多数はエンテロウイルス属に属するウイルスに起因し、主にコクサッキーウイルスA群である場合が多いが、コクサッキーウイルスB群やエコーウイルスで発症する場合もある。

(2014年6月25日改訂)

レジオネラ症(legionellosis)は、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)を代表とするレジオネラ属菌による細菌感染症で、その病型は劇症型の肺炎と一過性のポンティアック熱がある。レジオネラ肺炎は1976年、米国フィラデルフィアにおける在郷軍人集会(Legion)で集団肺炎として発見されたところから、legionnaires' diseaseと命名された。ポンティアック熱は、1968年に起こった米国ミシガン州Pontiacにおける集団感染事例にちなんで命名された。レジオネラ属菌は、もともと土壌や水環境に普通に存在する菌である。しかしながら、快適な生活や水資源の節約のため、エアロゾルを発生させる人工環境(噴水等の水景施設、ビル屋上に立つ冷却塔、ジャグジー、加湿器等)や循環水を利用した風呂が屋内外に多くなっていることなどが感染する機会を増やしているものと考えられる。感染症法の施行以後、検査技術の進歩とあいまって、2013年には1,111例(暫定値)が報告された。病原体に曝露された誰しもが発症するわけではなく、細胞内寄生細菌であるため、細胞性免疫能の低下した場合に肺炎を発症しやすい。

(2014年05月16日改訂)

いわゆる無菌性髄膜炎は、発熱、頭痛、嘔吐のいわゆる3主徴をみとめ、後部硬直、Kernig徴候などの髄膜刺激徴候が存在すること、髄液一般検査で定型的な所見を得ること、髄液の塗抹、細菌培養で細菌を検出しないことにより診断がなされる症候群である。通常の塗抹染色標本および一般細菌培養にて病原体がみつからないものがこの範疇にはいるため、多種多様の起因病原体があり、確定診断は病原体診断により起因病原体を明らかにすることによってのみなされる。また、特に成人の場合は膠原病、悪性疾患などの様々な非感染性疾患でも無菌性髄膜炎を起こすことがある。一般的な臨床の現場においては、無菌性髄膜炎はウイルス性髄膜炎を念頭において語られることが多く、これは多くの場合、良好な経過をとる。これはその頻度から言えば正しいと言える反面、ウイルス以外でも多くの病原体がこの病態を起こしうること、そして場合によっては重症となり不幸な転帰をとりうることを認識して、臨床症状、炎症反応、髄液所見などを正確に把握して治療に当たることが望まれる。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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