令和6年度FETP初期導入研修2024 FETP Introductory Courseのご案内 [同期間中に開催される地方衛生研究所サーベイランス業務従事者研修の情報を含む]

令和6年度FETP初期導入研修は下記の日程により実施致します。

なお、この導入研修は、原則として新規FETP研修員を対象に、On the Job Training 開始前に基礎的な知識を得るために開催するものです。そのため、内容はFETP研修員を念頭としたものが主体となりますが、一部の講義は当該研修員以外にも参考になる内容を含むため公開するものです。ご理解のほど宜しくお願い致します。

日時:令和6年4月1日(月)~12日(金)
及び5月7日(火)~17日(金)

[うち4月11日(木)・12日(金)の2日間は地方衛生研究所サーベイランス業務従事者研修会として希望者はZoomでの参加可能]

開催方法:オンライン講義(外部聴講者)

研修内容:

・実地疫学、感染症疫学の基礎

・感染症サーベイランス

・アウトブレイク調査手法

・感染症各論

・関連法規

 等

参加条件:

・地方衛生研究所からは各所から先着1名まで

・地方衛生研究所以外の自治体(都道府県、政令市、中核市、特別区、保健所設置市)からは、地方衛生研究所とは別に先着2名まで

・大学等において感染症対策の診療・教育に従事している者(同一施設からは先着3名まで)

・原則的に全ての講義に参加する意思のある者

申込方法:

下記のURLより申し込みをお願い致します
https://v2.nex-pro.com/campaign/64484/apply
外部からのメールが受け取り可能なメールアドレスでご登録をお願い致します
(認証完了までに数日~1週間程度頂戴いたします)

申込期間:

2024年3月5日10:00~3月27日18:00

申込期限を過ぎた場合は受付致しませんので、ご了承ください

注意事項:

・令和6年度研修スケジュール

- 2024 FETP Introductory Course 前半

FETP Introductory Course 2024 Agenda 前半(外部受講者用)

- 2024 FETP Introductory Course 後半

FETP Introductory Course 2024 Agenda 後半(外部受講者用)

- 2024 地方衛生研究所サーベイランス業務従事者研修

2024 地方衛生研究所サーベイランス業務従事者研修

・(参考)昨年度の研修スケジュール:

FETP Introductory Course 2023 Agenda(外部受講者用)

・今般の事情により講義内容および講師は予告なく急遽変更になることがあります

・PCを使用する事がありますので、お持ちの方はご持参ください

・申込が定数に達した場合、締切前に受付を終了することがあります

 

令和6年度FETP初期導入研修は下記の日程により実施致します。

なお、この導入研修は、原則として新規FETP研修員を対象に、On the Job Training 開始前に基礎的な知識を得るために開催するものです。一部の講義は新規FETP研修員以外にも参考になる内容を含むため公開するものです。ご理解のほど宜しくお願い致します。

 

日時:令和6年4月1日(月)~4月12日(金)及び5月7日(火)~5月17日(金)

  [4月11日(木)~12日(金)は地方衛生研究所サーベイランス業務従事者研修会]

開催方法:オンライン講義(外部聴講者)

研修内容:

・実地疫学、感染症疫学の基礎

・感染症サーベイランス

・アウトブレイク調査手法

・ケーススタディ

・感染症各論

・関連法規

 等

募集方法(研修内容の詳細、申込条件、申込方法、申込期間等)については、後日、本ホームページにて公開致します。

 

 

 

国立感染症研究所
実地疫学専門家養成コース

第26期 研修員募集要項
Field Epidemiology Training Program Japan (FETP-J)

 

1.目  的

 「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(平成10年法律第114号)」において、自治体における感染症対策に関する責務が明記されている。特に令和2年より新型コロナウイルス感染症が世界的に重大な公衆衛生上の問題となって以降、平時からの自治体における感染症の発生動向調査(サーベイランス)をより充実させること、突発的な健康被害が発生した場合に自治体で迅速かつ効果的に積極的疫学調査を行うこと、さらにはそれらに対応できる公衆衛生上の基盤的人材を養成すること、の必要性が急激に、より増大してきた。

 平成11年より、国立感染症研究所においては実地疫学専門家養成コース(以下「FETP」といいます。)が設置されている。その目標は、まさに平常時から質の高い感染症サーベイランス体制の維持・改善に貢献し、感染症の集団発生・流行時には迅速かつ的確にその実態把握及び原因究明に当たることのできる実地疫学専門家の養成であり、新型コロナウイルス感染症の出現により、FETPの必要性はますます高まった。令和5年3月現在、FETP修了者は100名を数えている。質の高いFETP修了者を大きく増やすという目標に基づき、国立感染症研究所で研修を受ける者のうち、2年目(あるいは1年目)を所属元自治体等で受けるように組み込む1+1研修(後述)は従前より実施されており、北海道では地域ニーズに合わせた1+1研修を導入し、FETPをシステマチックに養成する試みを運用してきた。さらに、研修員が日頃は地域での業務にも一定程度携わりながら、特色のあるFETP研修活動を地域の協力を得て展開し、全国的な人材育成に寄与することが構想され、令和5年度から沖縄県及び大阪府において正式に開始された。

 本要項は、国立感染症研究所FETP研修員の募集にあたっての要件等を定めたものである。

 地域研修拠点のFETP(拠点FETP研修員)に特化した募集は若干名として行われるが、本要項とは別に募集する予定である。

2.対  象

 国、自治体等において感染症対策等の公衆衛生業務に従事している者、あるいは従事しようとしている者、又は感染症対策等地域保健業務に従事しようとしている者、もしくは大学等において感染症対策の専門家の養成に携わっている者

3.期  間

令和6年4月1日~令和8年3月31日

※協力研究員の場合は令和6年4月~令和8年3月

 なお、基本的な2年の研修を終えた後に更に1年の研修期間の希望があれば、国立感染症研究所で審査を行い、3年目の上級者向け研修を受けることができる。この期間には、FETPの指導者としてのトレーニングを中心に、研究に軸を置いた活動など、個々のキャリアパスに応じた内容の研修を行う。

4.内  容

 国立感染症研究所で実施される初期導入コース、及び実地疫学研究センターを中心とした所のスタッフ並びにWHO・米国CDC等の海外専門機関や国内機関の専門家による指導により、次の事項を習得させる。

(1) 国内外の感染症危機事象(単独から広域までのアウトブレイク事例)の情報収集、リスク評価、実地疫学調査及び対応

(2) 感染症サーベイランスデータの分析・評価方法

(3) 国内外の感染症危機事象に関する情報の還元・発信

(4) 疫学的・統計学的研究手法

(5) 感染症危機事象の調査・対応に関する教育経験

(6) 公衆衛生の現場で必要とされる疫学・統計学及び関連法規に関する基礎知識

(7) 感染症疫学研究の国内または海外における論文や学会での発表

5.研修場所

国立感染症研究所実地疫学研究センター

(研修の2年目については、事前相談を必須として、所属元自治体等における研修も組み込むことができる。)

 全体について、国立感染症研究所実地疫学研究センターで研修を受ける者のうち、2年目(あるいは1年目)を所属元自治体等で受けるように組み込んだ者(実地疫学研究センターでは1+1研修と呼称)、また、研修を拠点で受けるように組み込んだ者は、原則として研修を優先させること。自身の業務等の調整は所属元の担当者と相談すること。1+1研修員や拠点の研修員が3年目の上級者向け研修を希望することは出来るが、3年目はFETPの指導者としてのトレーニングを中心に行うことから、国立感染症研究所実地疫学研究センターで研修を行うこととする。

6.研修修了

 所定の修了要件を満たしたすべての研修員については、国立感染症研究所が発行する実地疫学専門家認定書を授与する。

7.募集人数

 予算等の状況に応じて適正な人数を選考する。

8.応募資格

(1)から(3)のいずれか、及び(4)から(7)までのすべての要件を満たす者

 ただし、国家公務員として採用される場合は、研修期間中に定年年齢へ達しないこと。

 

(1) 国、自治体、地方独立行政法人等(試験研究機関に限る)において感染症対策等の公衆衛生業務に従事している者、あるいは従事しようとしている者

(2) 感染症対策等地域保健業務に従事しようとしている者

(3) 大学等において感染症対策の専門家の養成に携わっている者

(4) 医師、歯科医師、獣医師、薬剤師、保健師、看護師、臨床検査技師等の専門資格を持つ者(任用資格である食品衛生監視員、環境衛生監視員等を要件として認める場合がある)

(5) 感染症危機事象の調査・対応に熱意を持ち、研修修了後に、感染症対策等の公衆衛生業務やFETPネットワークの強化に貢献する意欲のある者

(6) 研修中は国内外の情報収集等を行うため、英語を用いたコミュニケーションに意欲のある者(なお、運用能力については、最低限大学レベルの読解能力を持ち、口頭又は文面でのコミュニケーション能力があることが望ましい)

(7) 2年以上の臨床研修あるいは2年以上の公衆衛生活動(例:行政等における疫学調査や関連する業務等)に従事した経験を有する者

9.研修員の身分等

 国立感染症研究所実地疫学研究センターで執務する研修員は、令和6年度については、国家公務員である任期付研究員として採用される。令和7年度以降については15.その他、に記載の情報を参照のこと。

 なお、国、自治体等から派遣の場合には、国立感染症研究所の協力研究員となる。

 ただし、協力研究員に対する給与・諸手当等は国立感染症研究所から支給されない。

 

任期

 

採用予定日(令和6年4月1日)より2年

※基本的な2年の研修を終えた後に更に1年の研修期間の希望があれば、国立感染症研究所で審査を行い3年目の上級者向け研修を受けることができる(「3.期間」、を参照のこと)。3年目終了時点で、任期満了後に任期の定めのない官職の公募に応募することは差し支えない。

 

処遇

 

以下は国立感染症研究所任期付研究員として採用された令和6年度のFETP研修員に関するものである。令和7年度以降については15.その他、に記載の情報を参照のこと。

(1) 給与は、「一般職の任期付研究員の採用、給与及び勤務時間の特例に関する法律(平成9年法律第65号)」等に基づき支給する。

(2) 1週間当たりの勤務時間は、38時間45分(週休2日制)となる。

(3) 事例対応時には時間外の勤務や土日祝日の出張の可能性もある。

(4) 年20日の年次休暇(採用の年は、採用の時期により20日より少ない日数となる。)のほか、特別休暇(夏季・結婚・忌引・ボランティア等)、病気休暇の制度が整備されている。

<協力研究員としてのFETP研修員に関して>

 協力研究員に対する給与・諸手当等は国立感染症研究所から支給されない。

10.経  費

 研修期間中は感染症危機事象発生時の実地疫学調査に係る経費及び疫学的研究等の経費は、国立感染症研究所が負担する。

 ただし、研修期間中の宿泊施設については、各自で用意すること。

 また、研修の2年目など一定期間を所属元自治体等に組み込んだ場合は、研修のため往来する費用は所属元が負担すること。

11.採用スケジュール(案)

応募期間:令和6年1月4日(木)~令和6年1月30日(火)※必着

書類選考:書類選考の結果については、2月1日に当方からメールで連絡します。

面接試験:Webで実施します。

     なお、事前に参考として適性に関する検査を受けていただく場合があります。

 

1回目 (主に自治体職員以外の応募者)令和6年2月 8日(木)

2回目 (主に自治体職員の応募者)  令和6年2月 9日(金)

 

合格発表 :令和6年2月22日(木)

採用予定日:令和6年4月 1日(月)※なお、登庁日等については、後日連絡します。

12.出願書類

(1) 派遣機関の公文書(自治体等からの応募者に限る)

 自治体等からの応募については、派遣中の身分及び2年目の研修場所を明示すること                   (新様式別紙参照

(2) 出願書(様式第1号

(3) 履歴書(様式第2号

(4) 志望調書(様式第3号

 ※参考情報として、これまでに発表した論文リストがあれば添付

(5) 推薦状 1通

 自身の経歴、研究内容、人柄等を知る第三者(所属長、職場の上司、過去に指導的立場にあった者、自身の研究内容について関連のある者等)から、FETP応募に際し、応募者の目的への適合性、これまでの職務・研究等の評価、人柄等について推薦が出来る者に作成を依頼すること。

(様式自由:1通につきA4用紙1枚程度 ※文末に推薦者の署名もしくは押印が必要)

 推薦状作成者には後日、推薦状の内容について事務局から連絡をするので日中、連絡が可能な連絡先(メールアドレス、電話番号)を明記すること。

(6) 医師、獣医師等専門資格免許証の写し

(7) 語学力資格の写し(資格を所持している場合に限る)

 ※(2)~(4)は必ず添付の様式(Wordファイル)を使用すること。

13.提出先

 国立感染症研究所 実地疫学研究センター長 砂川 富正

 〒162-8640 東京都新宿区戸山1-23-1

 Tel 03(5285)1111  内線 2583

※ 出願書類の提出に当たっては、封筒に「FETP出願書類在中」と朱書きすること。

14.出願締切:令和6年1月30日(火)※必着

15.その他

 国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合し、新たな法人として「国立健康危機管理研究機構」を設置する「国立健康危機管理研究機構法」が令和5年6月7日に公布され、この法律の施行期日は、一部の規定を除き、公布日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日となっています。このため、当該法律の施行により国立感染症研究所が法人となった場合、その日以前に本公募により国立感染症研究所職員として任用されていた者は、国家公務員ではなくなり、法人職員となります。

16.照会先

<FETPの研修内容・研修期間・身分等の事前相談、その他コース全般に関すること>

 

 国立感染症研究所 実地疫学研究センター

 第一室(飯田橋オフィス)

 TEL:03-6261-5930(担当:郡(こおり))

 Email:q-fetp[at]nih.go.jp

※Emailは[at]をアットマークに変えご利用ください。

 

17.備 考

 本コースは国際的な実地疫学専門家(Field Epidemiologist) の養成コースに準拠した、厚生労働省の認定する研修である。

※FETPの基本方針や研修内容等について詳細をお知りになりたい場合は、事前のご相談や訪問をお薦めします。これらに関するご質問は、上記の実地疫学研究センター第一室宛てにご連絡下さい。

 

以上。

 

国内における小児の原因不明の急性肝炎について 
(第3報) 
2023年2月16日時点の事例報告集計

国立感染症研究所

感染症危機管理研究センター

実地疫学研究センター

感染症疫学センター

 

背景や症例定義、急性肝不全の診断基準などについては「国内における小児の原因不明の急性肝炎について(第1報) 2022年6月23日時点」を参照

要旨

・2023年2月16日までに暫定症例定義を満たす小児の原因不明の急性肝炎の可能性例が156例報告された。肝移植を要した症例が3例報告され、死亡例は1例報告された。

・これまでの報告と同様、症例の発症時期、居住地域、検出された病原体について、特定の傾向は確認されていない。

・アデノウイルス検査陽性例16例のうち、欧米諸国で多く報告されている41型が検出された症例は2例であった。

・アデノウイルスを含め関連する感染症発生動向調査においても特段の懸念のある動向は見られていない。

小児の原因不明の急性肝炎報告例の概要

厚生労働省(および国立感染症研究所)の調査における暫定症例定義を満たす可能性例は、2023年2月16日(第7週)までに、国内で156例報告された。原因となる病原体、発症の時期については明らかな傾向は認められていない。また、症例は全国から報告されており、地域的な偏りはみられていない。

 2021年第40週から2023年第6週までの、疫学週ごとの発症者数の推移を示す(図1)。直近の発症者については遅れて報告される可能性があること、また、事務連絡の発出以前の発症者は、医療機関が遡って確認する必要があり十分に報告されていない場合があると推定されることから、解釈には注意を要する。発症から入院までの期間は情報のある149例において、中央値[四分位範囲]は4日[2-8日]、入院期間は情報のある132例において、中央値[四分位範囲]は10日[7-15日]であった(表1)。

156例のうち、84例(54%)は男性、72例(46%)は女性で、年齢中央値[四分位範囲]は4歳6か月[1歳4か月-9歳2か月]であった。情報が得られた症例のうち(以下、分母は各情報が得られた症例数を表す)、基礎疾患を有する者の割合は25%(39例/155例)であった(表1、表2)。

 少なくとも1回以上の新型コロナワクチン接種歴がある者の割合は17%(24例/145例)、肝炎発症の前に明らかに新型コロナウイルス感染症の既往歴があった者の割合は15%(22例/148例)であった(表1)。

 最もよく見られた症状は発熱、消化器症状であり、これまでの報告と同様であった。肝機能の指標となるAST、ALT、総ビリルビン、PT-INRの中央値[四分位範囲]についても、これまでの報告と同様の傾向であった(表1)。

 全血、血清、便、呼吸器由来検体を主な対象とした病原体検査の結果を示す(表3)。7%(11例/150例)からSARS-CoV-2が検出された。また、アデノウイルスの検査が実施され、結果が判明した症例のうち、11%(16例/151例)からアデノウイルスが検出された(表3)。欧米で重症急性肝炎との関連について注目されているアデノウイルス41型は2例から検出された。現時点では、症例から検出された病原体について特徴的な傾向を認めない。

ICU/HCU入室例は17%(18例/103例)であり、急性肝不全の診断基準を満たす者は、PT-INRに関する情報の得られた99例のうち17例(17%)であった(図1、表1)。これらの割合は第2報と同様であった。急性肝不全の診断基準を満たす者17例のうち、肝移植を要した症例は、第2報から2例増加し3例 (18%) であった。急性肝不全の診断を満たす者17例のうち、死亡例が1例報告された。転帰については、さらなる観察期間を要する可能性に注意が必要である。

図1.暫定症例定義に該当する国内の症例の発症状況(n=150*1, 2023年2月16日10時時点)

*1 発症日不明の6名を除いている

*2発症日不明の1名を除いている

*3発症日事務連絡発出以前の遡り調査や、直近数週の報告については解釈に注意(本文参照)

表1. 暫定症例定義に該当する国内の入院症例の基本情報(n=156, 2023年2月16日10時時点)

*1重複あり

*2腹痛、下痢、嘔吐・嘔気のいずれかを呈する者

*3AST、ALT、総ビリルビン、PT-INRは報告時点までの最大値

*4AST、ALT、総ビリルビン、PT-INR は、それぞれ情報が得られた153例、153例、115例、99例の情報に基づく

表2.基礎疾患の分類(n=39, 2023年2月16日10時時点)

*1重複あり

表3.検出した微生物の基本情報*1

*1重複あり

*216例のうち12例がPCR法での検出、1例がウイルス培養での検出、2例が迅速抗原検査での検出であり、1例は検査方法不明である

*39例のうち6例は院内検査でアデノウイルスを検出したが、地方衛生研究所での検査が陰性であったため、型判定が不能であった

*4地方衛生研究所での検査で検出した微生物

関連する感染症発生動向調査の状況の概要

•「ウイルス性肝炎(E型肝炎・A型肝炎を除く)」の小児の症例数の報告が増えている兆候は見られていない(2023年3月7日時点)。

感染症法に基づくサーベイランス対象疾患としてのウイルス性肝炎(E型肝炎・A型肝炎を除く)(全数報告対象:5類感染症)では、小児の報告は稀である。2017~2019年と比べて、2020年以降の年間報告数は減少している。

2021年以降、一貫してB型肝炎が最も多く、B型・C型肝炎が当疾患の7割以上を占めている(D型肝炎の報告は0例)。それら以外のウイルス性肝炎の症例報告数はわずかに増加したが、大半が成人からであり、その起因ウイルスの大半はサイトメガロウイルスとEBウイルスである。

 

•アデノウイルスに起因する症候群が流行している兆候は見られない。

アデノウイルスに起因する症候群には、咽頭結膜熱、流行性角結膜炎、感染性胃腸炎などがある。しかし、感染症発生動向調査から、アデノウイルスの流行状況を反映すると考えられる上記の症候群の発生傾向に異常は見られない。

 

•病原体検出情報システム(病原体サーベイランス)における報告状況から、アデノウイルスが大きく流行している兆候は見られていない(3月17日時点)。

 地方衛生研究所等が病原体サーベイランスに報告した病原体の検出情報(感染症発生動向調査の定点およびその他の医療機関、保健所等で採取された検体から検出された病原体の情報)によれば、2023年2月においてアデノウイルス報告数が増加している、あるいは高いレベルで推移している兆候は見られていない。

 なお、小児科定点における胃腸炎症状(下痢、嘔気・嘔吐、腹痛)を認めた症例に限定しても、アデノウイルス報告数の増加や高いレベルでの推移は見られていない。アデノウイルスの検出は、2020~2021年は低いレベルで推移し、2022年以降にやや増加したが、2019年以前と比較すると少ない報告数で推移している。

 

病原体サーベイランスにおいては、検出から報告までの日数に規定がないため、報告が遅れる可能性があり、特に直近の情報については、解釈に注意が必要である。

 

 

当該事例の調査報告、及び日頃より感染症発生動向調査にご参加、ご協力をいただいている全国の医療機関、保健所、自治体本庁、そして地方衛生研究所の関係各位に心より感謝申し上げます。

 

参考資料

・国内における小児の原因不明の急性肝炎について(第2報) 2022年10月20日時点

https://www.niid.go.jp/niid/ja/jissekijpn/11623-2-2022-10-20.html

・国内における小児の原因不明の急性肝炎について(第1報) 2022年6月23日時点

https://www.niid.go.jp/niid/ja/jissekijpn/11255-fetp-3.html

・複数国で報告されている小児の急性肝炎について (第4報)

https://www.niid.go.jp/niid/en/from-lab-e/2521-cepr/11262-hepatitis-children-0704.html

・日本の感染症サーベイランス(2018年2月現在)

https://www.niid.go.jp/niid/ja/nesid-program-summary.html

・国立感染症研究所 病原微生物検出情報(IASR) https://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr.html

 

拠点によるFETP研修強化について

 

国立感染症研究所実地疫学研究センター

概要

 国立感染症研究所では、国立感染症研究所実地疫学専門家養成コース(以下、FETP)の研修を経た国内の実地疫学専門家を大幅に増やすという目標に対して、一部の協力自治体において研修を展開するFETP拠点(以下、拠点)を開始することとした。拠点における研修員については、日頃は地元自治体での業務にも一定程度携わりながら(当センターでは研修にあてる時間を全就業時間の7割以上と想定)、FETPに求められる基本的な研修活動に取り組むこと、そのために国立感染症研究所より指導担当者を必要時に自治体に派遣すること、が想定されている。具体的には、令和4年度から、沖縄県(沖縄県衛生環境研究所内)をパイロット自治体として先行的に準備を進めてきた。令和5年度から沖縄県に加えて大阪府(大阪健康安全基盤研究所内)において本格運用を開始することが予定されている。国内の地域(拠点)における多様な特色を生かしつつ、研修活動を多面的に強化したいという構想でもある。

 各拠点では、若干名のFETP研修員を採用する(通常のFETPと共に採用の審査を行う)。拠点FETPは、自治体内で通常の勤務場所がある者であることが想定されている(国立感染症研究所からの給与の支給はない)。応募資格については、FETPの通常の募集要項にある要件を同等に満たす者となる。FETPの研修について、拠点においては、可能な限りオンラインにて国立感染症研究所で実施される指導を同時に受けつつ、派遣される指導員等により必要な対面の指導を受ける。必要に応じて国立感染症研究所実地疫学研究センターでの講義及び指導(アウトブレイク発生時には現地派遣を含め)を受ける機会がある。また、研修においてはFETPとしての通常の達成項目を達成して初めて、FETP修了と認められる点においては、通常のFETP研修員との違いはない。

問い合わせ先

  国立感染症研究所 実地疫学研究センター

  E-mail : q-fetp[at]nih.go.jp(砂川宛て)

  ※Emailは[at]をアットマークに変えご利用ください。

 

以上。

 

クラスター対策班接触者追跡チームとしての実地疫学研究センター・FETPの活動報告(3)
(2021年12月31日時点)

2022年11月18日

国立感染症研究所 実地疫学研究センター

国立感染症研究所 実地疫学専門家養成コース

 

■はじめに

 2020年1月、日本でも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の確定症例が確認された。その後、主な新規変異株として、2020年12月にアルファ、2021年4月にデルタ、11月にオミクロンが国内で確認された。新規陽性者数は、従来株に始まり、出現した様々な新規変異株の感染拡大の状況や置き換わりの過程を経ながら増減を繰り返してきた。それらに対応するため、国は、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などの対策、2021年2月からの新型コロナワクチン接種を導入し、各自治体では、国の取り組みに並行して、流行状況に合わせた様々な取り組みと無数の現場対応が行ってきた。

 そのCOVID-19対策の1つとして、2020年2月25日、厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策本部にクラスター対策班が設置され、対応が続けられてきた。同班のうち接触者追跡チームは国立感染症研究所実地疫学研究センター*の職員、実地疫学専門家養成コース(FETP)研修員、FETP修了者を主体として構成され(以下、現地派遣チーム)、従来通り、原則として各都道府県の派遣要請に応じて現地において対策支援を行い、その後も必要に応じて遠隔支援を行ってきた。FETPとは感染症危機管理事例を迅速に探知し適切に対応する実地疫学専門家の養成コースである。1999年に設置され(https://www.niid.go.jp/niid/ja/fetp.html)、感染症法第十五条に基づく実地(現場)の積極的疫学調査の支援を行っている。また、新たな変異株が出現した際に、事例の特徴や整理を目的に実地調査をFETPから働きかけ、自治体とともに実施することもあった(深堀調査)。当該派遣においては、「感染症危機管理人材養成事業における実地疫学調査協力に関する実施要領(平成一二年二月一七日発)」に基づき守秘義務が課されており、要請機関の自治体の承諾なく、個人・施設や自治体を特定される疫学情報を外部に公表することはない。

 以下に、2020年2月1日~2021年12月31日の期間における現地派遣チームの活動概要を報告する。なお、これまで第1報(2020年5月20日)、第2報(2020年10月2日)を報告しており、本記事は第3報となる。

*2021年4月、国立感染症研究所内に実地疫学研究センターが設置された。これに伴い、旧感染症疫学センター第1室(感染症対策計画室)は、実地疫学研究センターに移動し、第一室(実地疫学研修室)、同第二室(実地疫学分析室)、同第三室(国際派遣室)が立ち上がった。

■活動実績

 2021年12月31日時点で現地派遣チームが関与した事例は計224事例であった。この時点までに派遣されたのは、国立感染症研究所の職員20名、FETP研修員23名、外部組織に所属する29名(FETP修了者も含む)の計72名であった。外部組織に所属する派遣者のうち11名はFETP修了生であった。また派遣先自治体等に所属するFETP修了生が共に活動した事例もあった。

 図1に2020年1月~2021年12月のSARS-CoV-2株別の現地派遣チームが関与した事例数の推移を示す。その際の時期的な目安について、厚生労働省による第6波までの分類に従い以下のように定義した(国内発生早期、特措法成立前の国内発生期:2020年1月28日~3月12日、第1波:2020年3月13日~6月13日、第2波:2020年6月14日~10月9日、第3波:2020年10月10日~2021年2月28日、第4波:2021年3月1日~6月20日、第5波:2021年6月21日~9月24日、第6波:2021年9月25以降)。全国における新規陽性者数との明らかな関係は認められなかった。FETPへの派遣要請は、新型コロナウイルス感染症の初期段階に(主には2020年中まで)集中しており、COVID-19流行の遷延とともに要請は減少していたことが分かる。多くの事例に対するクラスター対応として要請された3分の2ほどは医療機関や高齢者施設で発生した事例であり、FETPは疫学調査を主とし感染管理の面も加えて支援してきた。自治体からの支援の要請は、原則自治体のニーズに応じて行われることから、2021年に入っての急激な要請の減少は、初期の厳しい段階を経て、保健所を中心とした自治体における施設でのクラスター対応を行う体制が急速に強化されていったことを示唆する。

図1.現地派遣チームが関与した事例数(SARS-CoV-2株別)と全国における新規陽性者数の推移(224事例)

*全国における新規陽性者数:厚生労働省オープンデータ(https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/open-data.html

■発生場所別の特徴

 図2に現地支援を行った事例について、発生場所別の事例数の推移を示す。主な発生場所を、医療施設、高齢者または福祉施設等、地域(保健所支援、地域におけるクラスターなど)、事業所、学校等(学校、保育所、こども園など)、接待を伴う飲食店、飲食店、娯楽施設(カラオケ、ジムなど)、運動競技、旅行関連に分類した。222事例が分類され、分類できなかった2事例はその他とした。一般的なSARS-CoV-2の感染拡大経路や拡大のリスクが判明していなかった第1波時点では、医療機関が41事例、高齢者・福祉施設が19事例と最も多かった。第2波及び第3波初期では、接待を伴う飲食店事例が多かったが、その後は徐々に医療機関や高齢者・福祉施設への支援数も減少、接待を伴う飲食店への支援はわずかとなった。第3波及び第4波は、地域を対象とした事例(変異株の特徴把握目的の調査や保健所支援など)が増加し、それぞれ第3波で7事例、第4波で10事例であった。第5波の9月は、医療機関事例が多く、これはワクチンのブレイクスルーを対象として行った調査(深堀調査)の増加を示す。

 第1報(2020年5月20日)、第2報(2020年10月2日)以降、様々な新規変異株の出現や新型コロナワクチン接種の開始等、経時的に状況は変化し続けてきた。引き続き、医療機関では、COVID-19が疑われていない場合の不十分な標準予防策、基本的な手指衛生の不徹底などが感染対策上の課題であり、高齢者・福祉施設等では、介護等で密接に接触する機会が多く、感染対策の厳守が難しいこと、基本的な感染対策の知識不足や指導体制不足などが課題であった。医療機関や高齢者・福祉施設等以外の事例においては、第1波~第3波では会食やマスクなしでの接触が感染原因としては多く、基本的な感染対策の不足による感染拡大が見られ、第4波以降では、それに加え、有症状者や濃厚接触者の不十分な隔離による感染拡大が示唆された。

 表1、表2にそれぞれ発生場所別、陽性者数規模別の派遣期間を示した。派遣期間は、発生場所別では明らかな違いは認めなかったが、陽性者数規模別では、陽性者数が1000人を超えると、派遣期間が長かった。派遣先では各自治体の要望に応じて、症例や濃厚接触者のデータベース作成、データのまとめ及び記述疫学、クラスターの発生要因や感染ルートの究明、市中感染の共通感染源推定等の疫学調査支援、医療機関や福祉施設等における感染管理対策への助言、他自治体や関係機関との連絡調整等を行った。

図2.現地派遣チームが関与した事例数の推移(発生場所別)(224事例)

表1. 現地派遣チームが関与した事例の派遣期間(発生場所別)(222事例)

*遠隔支援など、現地での活動がない事例を含む

表2. 現地派遣チームが関与した事例の派遣期間(陽性者数規模別)(224事例)

*遠隔支援など、現地での活動がない事例を含む

**保健所支援や正確な陽性者数が不明な事例を含む

■まとめ

 今回の現地派遣チームが関与した事例のまとめにより、現地支援はCOVID-19のような新しい感染症や変異株の出現時など、その感染症がどのような特徴や性質を有するか不明な段階で、自治体が対応に困難を来していた状況下で求められてきたことが明らかとなった。そのことは、情報の解釈のうえでも重大な注意点があることを示唆する。すなわち、本まとめは現地派遣チームによる現地支援に至った事例について列挙したものであり、得られた情報は、真の傾向や割合ではなく、自治体がやむを得ず協力を求めた規模が大きかったり、複雑であったりする事例の分析結果である。

 現地における対応の方針や枠組み、対応に従事している関係者を尊重・理解し、信頼関係を築いたうえで行うことが最も重要である。支援させて頂いた事例1つ1つが、自治体、事例が発生した施設等の関係者との信頼関係、協力がなければ調査を完遂できないものであった。この場を借りて関係者の皆様へ深謝したい。

 

 

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