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学校における髄膜炎菌感染症のアウトブレイク、 2010年3月―米国・オクラホマ州

(IASR Vol. 33 p. 138, 142: 2012年5月号)

 

2010年3月10~31日にかけ、オクラホマ州保健局(OSDH)およびロジャーズ郡保健局(RCHD)は、オクラホマ北東部の一貫校(幼稚園入園前~高校、学生数 1,850名)における髄膜炎菌(Neisseria meningitidis )感染症のアウトブレイク調査・対応を実施した。

3月10日朝、7歳男児(症例A)が髄膜炎菌性髄膜炎の疑いで入院した。接触者調査の結果、症例Aの家族4名が予防投与を受け、濃厚接触のあった1名は予防投与を勧奨された。3月11日朝の2時間の間に3例の髄膜炎菌感染症疑い例(症例B、C、D、症例Bは死亡)が報告された。これら4例は一貫校の4校舎(小学校低学年、小学校高学年、中学校、高校)のうち小学校低学年(幼稚園入園前~小学校2学年)校舎に通学していた。48時間以内に4例が発症したため、OSDHとRCHDは校内にクリニックを開設し、生徒 443名とスタッフ50名の濃厚接触者に対し、米国小児科学会のガイドライン(経口リファンピシンの連続2日間4回投与もしくはセフトリアキソン1回筋注)に基づき、小学校低学年の児童にはセフトリアキソン筋注を用いて集団予防投与を実施した。同日午後4時頃に症例Dが死亡、さらに小学校低学年の2例(症例E、F)が発熱と発疹で入院した(後に、症例E、Fは除外された)。

死亡例2例の報告を受けて、予防投与対象を高学年、バスでの接触者など約 400名に拡大した。その結果、3月11~12日の間に計 846名( 1,063回分)に予防投与が実施された。さらに、12日に高校生1例(症例G)の発症が報告されたため、一貫校側は授業や行事などを中止し、予定を1日繰り上げて13日から1週間春期休暇とすることを決定し、OSDHとRCHDは一貫校の全生徒・スタッフへのワクチン接種を勧奨した。19日に学生寮でワクチン接種クリニックを開設し、22~26日には地域のクリニックで接種を実施した。その結果、計 1,459回分の髄膜炎菌ワクチンが接種され、全生徒(4~18歳)の約68%が接種されたことになる。強化サーベイランスを3月11~31日の間実施したが、追加症例は確認されなかった。

今回の症例4例(症例A、C、D、G)の検体から髄膜炎菌が分離培養され、すべて血清群Cであり、同一のパルスフィールド・ゲル電気泳動パターンが確認された。全5症例のうち、死亡例は2例、完全回復例が2例、四肢切断および顔面再建術施行例が1例であった。症例Aを含む3例は、同クラスの小学校2年生、症例Cは症例Aの弟の幼稚園児、症例Gは症例Aの兄弟と濃厚接触があり、いずれも髄膜炎菌ワクチンの接種歴はなかった。

今回は、アウトブレイク初期に予防投与・ワクチン接種クリニックの開設、学校から保護者への児童連絡システムによる予防投与やワクチン接種該当者への連絡等が可能であって、関連各機関の協力のもとに早急にアウトブレイクを制圧することができた。
(CDC, MMWR, 61, No.13, 217-221, 2012)

 

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