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Structural analyses of the GI.4 norovirus by cryo-electron microscopy and X-ray crystallography revealing binding sites for human monoclonal antibodies

Kimura-Someya T, Katsura K, Kato-Murayama M, Hosaka T, Uchikubo-Kamo T, Ihara K, Hanada K, Sato S, Murayama K, Kataoka M, Shirouzu M, Someya Y.

J. Virol., 98, 2024.

遺伝子型GI.4ノロウイルス特異的抗体CV-1A1とChiba株由来ウイルス様中空粒子(VLP)との複合体構造、GIの様々な遺伝子型に交叉反応する抗体CV-2F5とVP1タンパク質のPドメインとの複合体構造をそれぞれクライオ電子顕微鏡単粒子解析、X線結晶構造解析により決定した。CV-1A1はVLPを構成するVP1タンパク質のP2領域を、CV-2F5はP1領域を認識することが明らかになった。P2領域は遺伝子型間で変化に富むのに対し、P1領域は遺伝子型間で保存性が高く、これらの抗体の特異性が裏付けられた。CV-1A1はVLPのルイスb抗原結合を阻害し、抗体の一部領域がルイスb結合部位に入り込む構造解析結果と一致する。また、CV-2F5はVLPを破壊する特性が明らかになった。本研究の成果は構造情報に基づく創薬に貢献するものと期待している。

本研究はAMED(to TKS, TH, YS)およびAMED-BINDS(to MS)の支援により実施された。

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Loxapine inhibits replication of hepatitis A virus in vitro and in vivo by targeting viral protein 2C

Mami Matsuda, Asuka Hirai-Yuki, Osamu Kotani, Michiyo Kataoka, Xin Zheng, Daisuke Yamane, Masaru Yokoyama, Koji Ishii, Masamichi Muramatsu, and Ryosuke Suzuki

PLOS PATHOGENS 2024, 20(3): e1012091.

A型肝炎ウイルス(HAV)感染によって発症するA型肝炎は、開発途上国のみならず先進国においても流行し死者も出ていますが、現在HAV感染の治療に使える抗ウイルス薬はありません。我々は統合失調症の治療薬としてFDAに承認されているロキサピンがHAV複製の阻害剤であることを発見しました。HAVに対するロキサピンの効果はドーパミンD2受容体(抗精神病活性の標的)を介さずに、HAV 2Cタンパク質に直接作用する事が示唆されました。ロキサピンの抗HAV効果は培養細胞のみならず感染マウスモデルでも認められました。この研究成果はA型肝炎治療薬開発において有用な知見となることが期待されます。本研究は感染研、東京都医学研との共同研究で、厚労省、文科省、AMEDの研究支援を受け実施しました。

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Enterovirus A71 does not meet the uncoating receptor SCARB2 at the cell surface

Yorihiro Nishimura, Kei Sato, Yoshio Koyanagi, Takaji Wakita, Masamichi Muramatsu, Hiroyuki Shimizu, Jeffrey M. Bergelson, Minetaro Arita

PLOS Pathogens 2024 Feb 15;20(2):e1012022. doi: 10.1371/journal.ppat.1012022.

これまで、エンテロウイルスA71(EV-A71)は細胞表面で受容体SCARB2に結合して細胞内に侵入するとされてきました。今回、国立感染症研究所ウイルス第二部と京都大学、ペンシルベニア大学、フィラデルフィア小児病院、神戸医療産業都市推進機構との共同研究により、細胞表面にSCARB2は無いことを明らかにしました。EV-A71は細胞表面に付着するための受容体(PSGL-1など)に結合して侵入し、後期エンドソームやリソソームでSCARB2に出会い、ゲノムを放出すると考えられます。今回の研究成果により、EV-A71が細胞に侵入する機構の全容解明が進むと期待されます。

本研究はJSPS科研費、AMED等の支援を受けました。

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Generation of JC Polyoma Pseudovirus for High‐Throughput Measurement of Neutralizing Antibodies

Mami Matsuda, Tian‐Cheng Li, Akira Nakanishi, Kazuo Nakamichi, Makoto Saito, Tadaki Suzuki, Tomokazu Matsuura, Masamichi Muramatsu, Tetsuro Suzuki, Yoshiharu Miura, and Ryosuke Suzuki

Diagnostics 2024, 14(3), 311;

進行性多巣性白質脳症(PML)は,主に細胞性免疫の低下に伴ってJCポリオーマウイルス(JCPyV)が脳のオリゴデンドロサイトで増殖,脱髄を引き起こす予後不良の中枢神経疾患である.近年ナタリズマブ等の多発性硬化症(MS)の治療薬に関連したPMLが問題となっている.JCPyV抗体価はナタリズマブ関連PMLの発症リスクの指標として用いられるが,抗体価測定は同薬剤が使用,または使用が検討されている患者の国外での測定のみが可能である.本研究ではJCPyV様中空粒子を用いたELISAおよび1回感染型JCPyVを用いた中和試験系を構築し,MS等の神経疾患患者の血清中の抗JCPyV抗体レベルを測定し,その有用性を示した.

本研究は,感染研ウイルス第二部,第一部,病理部,慈恵医大,駒込病院,浜松医科大との共同研究で,厚労省,文科省,AMEDの研究支援を受け実施した.

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Structural basis of hepatitis B virus receptor binding

Asami J#, Park JH#, Nomura Y#, Kobayashi C#, Mifune J, Ishimoto N, Uemura T, Liu K, Sato Y, Zhang Z, Muramatsu M, Wakita T, Drew D, Iwata S, Shimizu T, Watashi K*, Park SY*, Nomura N*, Ohto U*

Nature Structural & Molecular Biology (2024)
doi: https://doi.org/ 10.1038/s41594-023-01191-5

B型肝炎ウイルス(HBV)が肝臓にのみ感染するという特徴は、胆汁酸取り込み輸送体NTCP/SLC10A1を受容体に利用するためであるが、その高い親和性と特異性が何に起因するかは明らかでなかった。本研究ではHBV表面抗原の受容体結合領域preS1ペプチドとNTCPの結合立体構造をクライオ電子顕微鏡解析により解明した。preS1は外向き型9回膜貫通NTCPタンパク質とのみ複合体を形成していた。preS1は極めて複雑に折り畳まれてNTCPと結合し、そのN末端側の多重ループ構造で胆汁酸トンネル内部と、よりC末端領域でNTCPの細胞外表面と這うように接触していた。特にpreS1のN末端領域、NTCPの胆汁酸トンネルを構成する第8膜貫通ヘリックスが複合体形成に重要であることが示された。これまで長らく謎とされていたHBVと肝臓表面受容体が接触する瞬間の機能構造が初めて明らかとなり、これはHBVが感染宿主を選択する仕組みや細胞侵入機構の解明、新たな抗ウイルス薬の開発に有用な知見となる。

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Infectious virus shedding duration reflects secretory IgA antibody response latency after SARS-CoV-2 infection

Sho Miyamoto, Takara Nishiyama, Akira Ueno, Hyeongki Park, Takayuki Kanno, Naotoshi Nakamura, Seiya Ozono, Kazuyuki Aihara, Kenichiro Takahashi, Yuuki Tsuchihashi, Masahiro Ishikane, Takeshi Arashiro, Shinji Saito, Akira Ainai, Yuichiro Hirata, Shun Iida, Harutaka Katano, Minoru Tobiume, Kenzo Tokunaga, Tsuguto Fujimoto, Michiyo Suzuki, Maki Nagashima, Hidenori Nakagawa, Masashi Narita, Yasuyuki Kato, Hidetoshi Igari, Kaori Fujita, Tatsuo Kato, Kazutoshi Hiyama, Keisuke Shindou, Takuya Adachi, Kazuaki Fukushima, Fukumi Nakamura-Uchiyama, Ryota Hase, Yukihiro Yoshimura, Masaya Yamato, Yasuhiro Nozaki, Norio Ohmagari, Motoi Suzuki, Tomoya Saito, Shingo Iwami, Tadaki Suzuki.

Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America. 2023 Dec 22; 120 (52) e2314808120.

SARS-CoV-2オミクロン感染者の臨床検体の解析から、粘膜表面における分泌型IgA抗体の誘導が早い症例ほど感染性ウイルス排出期間が短くなる傾向を明らかにしました。加えて、分泌型IgA抗体は鼻粘膜検体において他の抗体(IgG抗体やIgA抗体)よりもウイルス量や感染性を強く抑制する傾向も見られました。なお、新型コロナウイルスへの感染歴やワクチン接種歴がある感染者ほど分泌型IgA抗体の誘導時間が短くなることも明らかになりました。本研究は、呼吸器ウイルス感染症において分泌型粘膜抗体が感染性ウイルス排出を抑制する可能性をヒトで示した世界で初めての報告となります。

本研究成果により、粘膜免疫を標的とした次世代のワクチン開発が加速され、将来、呼吸器系ウイルスによるヒト間伝播を予防し、パンデミックを制御するための新たな戦略を与えることが期待されます。

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Rapid and sensitive on-site detection of SARS-CoV-2 RNA from environmental surfaces using portable laboratory devices

Kouichi Kitamura, Minami Kikuchi Ueno, Hiromu Yoshida

Microbiology Spectrum, e00456-23, 2023

感染者のくしゃみ等で排出されテーブルなど物体表面に付着した新型コロナウイルスは、感染性が失われたあともウイルスRNAとして長期に残ることが報告されています。本研究では、物体表面上のウイルスRNAをポータブル機器のみで検出する手法の検討を行いました。その結果、疑似ウイルス拭き取り検体溶液をモバイル型リアルタイムPCR機でそのまま検査する直接検出法と、ポータブル実験機器によりRNA抽出を行う高感度検出法を開発しました(下図)。これらのオンサイトPCR検査技術は、検査ラボへのアクセスが困難な施設などでのリスク評価および早期感染対策への活用が期待できます。

本研究は、厚労省科研費、AMEDの研究支援を受け実施しました。

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HTLV-1 Proliferation after CD8+ Cell Depletion by Monoclonal Anti-CD8 Antibody Administration in Latently HTLV-1-Infected Cynomolgus Macaques

Nakamura-Hoshi M, Nomura T, Nishizawa M, Hau TTT, Yamamoto H, Okazaki M, Ishii H, Yonemitsu K, Suzaki Y, Ami Y, Matano T

Microbiol. Spectr., 11, e0151823, 2023

ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は慢性潜伏感染を引き起こす。潜伏感染者体内でプロウイルスは検出されるが、ウイルス複製・増殖は認められない。本研究ではHTLV-1感染カニクイザルモデルを構築し、慢性感染下でのモノクローナル抗CD8抗体投与によるCD8陽性細胞枯渇実験でプロウイルス量と抗HTLV-1抗体価の上昇が起きることを明らかにした。本結果はCD8陽性細胞非存在下で潜伏感染状態からHTLV-1増殖が可能であることを示しており、HTLV-1複製・増殖抑制にCD8陽性細胞が中心的役割を担っていることを示すevidenceを提供するものである。

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Potential Anti-Mpox Virus Activity of Atovaquone, Mefloquine, and Molnupiravir, and Their Potential Use as Treatments

Akazawa Da, Ohashi Ha, Hishiki Tb, Morita Tb, Iwanami Sc, Kim KSc, Jeong YDc, Park ES, Kataoka M, Shionoya K, Mifune J, Tsuchimoto K, Ojima S, Azam AH, Nakajima S, Park H, Yoshikawa T, Shimojima M, Kiga K, Iwami S, Maeda K, Suzuki T, Ebihara H, Takahashi Y, Watashi K (abcequally contributed)

The Journal of Infectious Diseases
Mar 9 (2023) Online ahead of print
doi: 10.1093/infdis/jiad058

2022年5月に国際的アウトブレイクが発生したエムポックスに対しては、国内で承認された治療薬が存在しない。本研究では抗ウイルス・抗真菌・抗寄生虫/原虫薬を含む132種の既承認薬のエムポックスウイルスへの効果を感染細胞系で検証し、経口投与可能な高活性化合物3種を見出した。メフロキンはウイルスの細胞侵入を、アトバコンおよびモルヌピラビルはウイルス複製を阻害すると考えられた。これらの抗ウイルス活性と、既知の臨床薬物動態、感染患者の血中ウイルス量情報を基にした数理モデル解析より、特にアトバコンが最も臨床で抗ウイルス効果が期待できると推定された。アトバコンは核酸生合成酵素であるDHODHの活性を阻害することで抗ウイルス活性を示すと示唆された。本研究成果はエムポックス治療薬創出に有用な知見を提供するものである。

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Identification of IMP Dehydrogenase as a Potential Target for Anti-Mpox Virus Agents

Hishiki T#, Morita T#, Akazawa D$, Ohashi H$, Park ES, Kataoka M, Mifune J, Shionoya K, Tsuchimoto K, Ojima S, Azam AH, Nakajima S, Kawahara M, Yoshikawa T, Shimojima M, Kiga K, Maeda K, Suzuki T, Ebihara H, Takahashi Y, Watashi K (#$equally contributed)

Microbiology Spectrum (in press)
doi: 10.1128/spectrum.00566-23.

エムポックスウイルス(MPXV)感染細胞実験でのスクリーニングから、Gemcitabine、Trifluridine、Mycophenolic acidなどの化合物が抗MPXV活性を有することが明らかとなった。Mycophenolic acidが阻害するのはMPXVの細胞侵入後の過程であり、その標的分子の一つであるIMP dehydrogenase(IMPDH)およびこれが制御するプリン生合成経路がMPXV複製に必要であることを見出した。IMPDHを阻害する化合物はいずれも抗MPXV活性を示し、その中にはMycophenolic acidよりも明らかに強い抗ウイルス活性をもつものが見出されたことより、今後IMPDHは抗MPXV薬開発の有効な創薬標的となる可能性が示唆された。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan