国立感染症研究所

脂質転移タンパク質CERTの天然リガンド非類似性阻害剤

Natural ligand-nonmimetic inhibitors of the lipid-transfer protein CERT.

Nakao N, Ueno M, Sakai S, Egawa D, Hanzawa H, Kawasaki S, Kumagai K, Suzuki M, Kobayashi S, and Hanada K.

Communications Chemistry, 2, Article 20, 2019

細胞の中にある多様な小器官(オルガネラ)間でいろいろな脂質分子が適切に移動することは細胞の成り立ちに不可欠です。セラミド輸送タンパク質CERTは、小胞体で合成されたセラミドをスフィンゴミエリンの合成場であるゴルジ体へと運ぶ役割を担っています。いくつかの病原体の感染増殖には、宿主細胞のCERTが必要であることも知られています。

セラミド類似構造をもつCERT阻害剤は感染研と東京大学との共同研究により以前開発されておりました。今回、感染研・細胞化学部は、東京大学大学院理学系研究科および第一三共RDノバーレ株式会社との産官学連携により、表面プラズモン共鳴法による定量的な親和性評価、コンピュータを用いたスクリーニング、効率的な有機化学合成、候補化合物との共結晶解析といった手法を駆使して、セラミドとの構造類似性のない新規のCERT阻害剤の開発に成功しました。構造的に全く異なる阻害剤セットは、CERT機能を特異的に抑止したときに起こる生物学的表現型を知るための優れた薬剤ツールになるだけでなく、さまざまな脂質輸送タンパク質を分子標的とした阻害剤開発の先駆けとなると期待できます。CERTが恒常的に活性化することで起こる先天性精神発育不全症の存在が最近報告され、そのような遺伝病の症状緩和・治療への道を本CERT阻害剤は開くかもしれません。また、将来的には宿主因子を分子標的とした抗感染症薬の候補にもなることが期待されます。

 biochem 2019 2

天然型セラミド、既存のCERT阻害剤HPA-12及び新規に開発した阻害剤HPCB-5の化学構造。CERTに結合したHPCB-5の結晶構造も図示した。HPA-12とHPCB-5との間に化学構造上の類似点はほぼ無いが、ヒト培養細胞であるヒーラ細胞に投与すると同じようにCERTを阻害する。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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