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Should a viral genome stay in the host cell or leave? A quantitative dynamics study of how hepatitis C virus deals with this dilemma.

Iwanami S, Kitagawa K, Ohashi H, Asai Y, Shionoya K, Saso W, Nishioka K, Inaba H, Nakaoka S, Wakita T, Diekmann O, Iwami S*, Watashi K

PLoS Biology 18(7): e3000562 (2020) doi: 10.1371/journal.pbio.3000562

一本鎖+鎖RNAウイルスのゲノムRNAは、複製の鋳型であると同時にウイルス粒子構成分子としても機能する。この両者の分配バランスのtrade-offは最終的なウイルスの感染伝播効率を決定するが、その解析はほとんどなされていない。
 本研究ではC型肝炎ウイルスの臨床分離株JFH-1と、実験室型キメラウイルスJc1-nの2つのウイルス株をモデルに用いて、培養細胞での感染実験データに数理モデルを利用しウイルス動態を解析した。

2株間には感染性粒子割合やRNA複製速度に違いはなく、感染効率はJFH-1がやや高い一方で、ウイルス放出速度はJc1-nがJFH-1に比較して約2.6倍と顕著に高かった。つまりJFH-1ゲノムRNAはより複製鋳型、Jc1-nゲノムRNAはより子孫粒子として放出される性質を持つこと、またこれによりJFH-1は感染細胞内RNA量の最大化に適し、Jc1-nは新規伝播を効率的に得ることが示された。このように本研究では、ウイルス増殖過程上の運命の別れ道とそれによって規定される感染拡大戦略の違いが定量的に示された。


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