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国立感染症研究所 実地疫学研究センター
感染症疫学センター
2021年9月現在
(掲載日:2021年9月7日)

Chlamydia trachomatisは男性の尿道炎や女性の子宮頚管炎をおこす主な病原体の一つである。感染症発生動向調査では、地方自治体が定めた国内約1000の性感染症定点医療機関が報告しており、定点医療機関数は2000年以降微増している(2000年887、2020年977)。地方自治体が定めた性感染症定点医療機関が「症状や所見から性器クラミジア感染症が疑われ、定められた検査方法により診断した」場合に、同医療機関から性器クラミジア感染症として毎月報告される。定められた検査方法には、尿道や性器から採取した検体でのC. trachomatisの検出又はC. trachomatisの抗原か遺伝子の検出、又は血清での抗体検出が含まれる。

ここでは、2000年から2020年(2020年は暫定法)における、感染症発生動向調査状の性器クラミジア感染症の報告をまとめた。

感染症発生動向調査における性器クラミジア感染症の定点当たり報告数は、男女ともに2002年をピークに減少傾向にあったが、最も少なかった2015年に対して2020年の定点当たり報告数は、男性は11.8から15.1(1.3倍)、女性は12.8から13.9(1.1倍)に増加していた。

図1 感染症発生動向調査における性器クラミジア感染症定点当たり報告数、2000-2020年

5歳毎の年齢階級別定点当たり報告数は、男性では2020年は20代前半が最も多かった(図2)。また、2017年から20代前半で増加(2.1から3.6、1.7倍)、2018年には20代後半の増加(2.4から3.4、1.4倍)が始まり、20代の増加が全体の定点当たり報告数増加に大きく寄与していた。2019年には10代後半から40代前半までの幅広い年齢層で増加していた。

図2 男性の年齢階級別性器クラミジア感染症定点当たり報告数、15-54歳、2011-2020年

女性の年齢階級別定点当たり報告数は、20代前半が最も多い状況が続いていた(図3)。2011年以降、各年齢階級で概ね横ばいであったが、2016年から20代、特に20代前半(4.3から5.2、1.2倍)で増加していた。一方、10代後半では2014年から減少し2016年より横ばいとなっていた。

図3 女性の年齢階級別性器クラミジア感染症定点当たり報告数、15-54歳、2011-2020年

国内では若年人口が減少してきていることから、若年者における性器クラミジア感染症の罹患率は、より高齢の人達に比べ、更に増加してきている可能性がある。

若年者で性器クラミジア感染症が増加してきている可能性を深刻に捉え、性感染症全体に共通な対策として、コンドームの適切な使用を含む若年者への性教育の推進、医療機関での性器クラミジア感染症増加の周知とパートナー健診の推進等の対策を進める事が重要である。

 


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