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感染症発生動向調査及び積極的疫学調査により報告された新型コロナウイルス感染症確定症例287例の記述疫学(2020年3月9日現在)

国立感染症研究所
(掲載日 2020/3/17)
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2020年2月1日より、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は感染症法第6条第8項の指定感染症に定められ、診断した医師は直ちに管轄の保健所に届け出ることが義務づけられた(感染症発生動向調査)。また、感染症法第15条に規定する積極的疫学調査を行うことが可能となった。

本稿では、感染症発生動向調査及び積極的疫学調査により、探知された確定例について、感染症発生動向調査に届け出られた情報及び厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策本部が関係自治体等から毎日収集し、更新した情報(3月9日現在)をもとに記述する。前回2月24日現在の報告(https://www.niid.go.jp/niid/ja/covid-19/9440-covid19-14.html)を行っており、今回は2回目の報告となる。これらの情報収集は現在も進行中であるため、今後、修正、もしくは更新がなされる可能性がある。また、一部は未届出の段階の、あるいは感染症発生動向調査としての届出作業が終了していない症例が少なくないことから、本データで紹介する患者数は、厚生労働省が公表しているそれとは現時点で異なっている。今後、徐々に乖離は解消されていくと思われるが、注意されたい。

2020年3月9日までに、感染症発生動向調査及び積極的疫学調査の両調査で報告がなされ、突合可能であった確定症例(PCR検査陽性)は287例であった(3月9日現在)。

性別は男性159例、女性128例で、男女比は1.2:1で男性に多かった。

年齢の中央値は66歳(範囲4-91)、その分布は10歳未満3例(1.0%)、10代2例(0.7%)、20代17例(5.9%)、30代18例(6.3%)、40代26例(9.1%)、50代48例(16.7%)、60代54例(18.8%)、70代91例(31.7%)、80代27例(9.4%)、90代以上1例(0.3%)であり、60代以上で約6割を占めた。

国籍は日本200例、米国21例、オーストラリア18例、中国11例、カナダ8例、フィリピン6例、インド5例、香港5例、インドネシア4例、タイ2例、ニュージーランド2例、コロンビア1例、ルーマニア1例、不明3例であった。 

推定感染地域及び経路として、クルーズ船関連188例(乗員・乗客のみ)、中国/武漢関連11例、東京都18例、和歌山県11例、神奈川県10例、大阪府8例、千葉県5例、新潟県4例、北海道2例、石川県2例、岐阜県2例、愛知県2例、兵庫県2例、福岡県2例、埼玉県1例、長野県1例、京都府1例、熊本県1例、国内(都道府県不明)5例、フランス2例、フィリピン1例、石川県/フランス1例、国内・国外不明7例が報告された。

発症日の判明している200例の流行曲線をに示す。症例は2020年1月20日から3月4日にかけて発症していた。クルーズ船関連の症例は2月7日に発症者のピークがあり、中国/武漢関連症例は1月の発症が多い傾向がみられた。その他の症例は散発していた。

主な症状について、届出時点から3月9日現在までの経過中のエピソードとして、発熱188例/287例(66%)、咳180例/287例(63%)、肺炎121例/194例(62%)、全身倦怠感79例/195例(41%)、咽頭痛58例/211例(27%)、鼻汁・鼻閉30例/150例(20%)、下痢29例/154例(19%)、頭痛25例/128例(20%)、関節・筋肉痛10例/142例(7%)、嘔気・嘔吐9例/145例(6%)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)7例/123例(6%)、結膜充血2例/119例(2%)を認めた。年齢群別の各症状の報告数をに示す。なお、情報無し・不明であった場合、分母から除いて集計しているため、それぞれの症状で分母が異なる。

医療的介入について、ICU入室22例/136例(16%)、侵襲的換気(気管内挿管等)29例/133例(22%)であった。また、年齢群別の医療的介入の報告数をに示した。その他の介入として体外式膜型人工肺(ECMO)使用が9例(40代1例、60代2例、70代5例、80代1例)であった。なお、割合算出にあたり、情報無しであった場合、分母から除いて集計しているため、割合の数値は過大評価されている可能性があり、評価には注意が必要である。

重症例の基礎疾患の有無について、ICU入室例22例では、基礎疾患あり10例・なし2例・情報なし/不明10例、侵襲的換気を必要とした29例では、基礎疾患あり15例・なし1例・不明13例、ECMOを必要とした9例では、基礎疾患あり6例・情報なし/不明3例であった。

また、診断時、無症状病原体保有者として届け出られた症例は71例(25%)であり、うち実際には診断日以前あるいは同日の発症日を有する者の情報が6例、発症日不明で症状の記載があった者の情報が22例、診断後に発症が確認された者が11例あった。無症状病原体保有者として届け出られた後、発症が確認された者のうち、5例が侵襲的換気(気管内挿管等)、うち2例がECMOの使用が必要となった。3月9日現在、無症状症例(症状の報告のない症例)は32例(11%)であった。

なお、今回の分析対象となった287例の3月9日時点の転帰は、死亡3例(1%)、退院115例(40%)であった。入院開始日と退院日ともに判明している102例における入院期間の平均値(標準偏差)は14.3日(±5.2日)であった。

本稿のまとめは、日本におけるPCR検査陽性症例(厚生労働省3月9日報告:国内472例、チャーター便帰国者15例、クルーズ船696例)の一部である。COVID-19の日本における発生動向及び疾患の重症度の把握、対策への反映等を目的に引き続き情報収集と分析、情報の還元を実施予定である。

感染症発生動向調査及び積極的疫学調査にご協力いただいております各自治体関係者の皆様に心よりお礼申しあげます。

 

 
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図.感染症発生動向調査及び積極的疫学調査の情報に基づく2020年1月20日~3月4日における発症日別COVID-19症例数(n=200)
(3月9日現在)
 
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訂正

(2020年3月30日) 表の全身倦怠感の割合の数値に誤りがありましたので、訂正しました。

(2020年3月23日) 「入院期間の平均値(標準偏差)は14.0日(±5.2日)であった。」を「入院期間の平均値(標準偏差)は14.3日(±5.2日)であった。」に訂正しました。

 
 

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