エキノコックス症とは

(IDWR 2001年第48号掲載)  エキノコックス属条虫の幼虫(包虫)に起因する疾患で、人体各臓器特に肝臓、肺臓、腎臓、脳などで包虫が発育し、諸 症状を引き起す。ヒトには、成虫に感染しているキツネ、イヌなどの糞便内の虫卵を経口摂取することで感染する。わが国のエキノコックス症には、その原因寄 生虫種により単包性エキノコックス症(単包条虫)と多包性エキノコックス症(多包条虫)がある。近年、多包性エキノコックス症が、北海道東部から北海道全 域へと伝播域を拡大しつつあり、国民の健康に脅威を与える感染症となっている。そのために感染症法では、エキノコックス症を4類感染症全数把握疾患に指定 し、全患者発生例の報告を義務付けている。

続きを読む

(2023年9月13日改訂)

  1. エルシニア属細菌の一種,ペスト菌(Yersinia pestis)感染に起因する全身性の侵襲性感染症.
  2. 動物由来感染症.げっ歯類を保菌宿主とし,節足動物(主にネズミノミ属のノミ)によって伝播される.ペスト菌感染動物を感染源とする直接感染もある.
  3. 肺ペスト患者から排出された気道分泌液により,ヒトーヒト間で飛沫感染する場合がある.
  4. 潜伏期間は通常1〜7日.感染ルートや臨床像によって腺ペスト,肺ペスト,および敗血症型ペストに分けられる.
  5. 治療薬として,フルオロキノロン系,アミノグリコシド系もしくはテトラサイクリン系の抗菌薬が使用され,その投薬期間は10〜14日間である.
  6. 適切な抗菌薬による治療が行われなかった場合,腺ペストでの死亡率は30〜60%である.肺ペストの場合はさらに死亡率は高まる.
  7. 抗生物質の発見前には全世界的な大流行が幾度か記録されており,特にヨーロッパでは黒死病として古くから恐れられてきた.近年の流行は,アフリカ,南米で報告がある.北米やアジアでも散発事例が報告されている.

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan