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原文:http://www.who.int/influenza/human_animal_interface/faq_H7N9/en/index.html

(邦訳:IDSC) 

1. インフルエンザA(H7N9)ウイルスとは何ですか?

インフルエンザH7亜型ウイルスは、通常、鳥の間で循環しているインフルエンザウイルスのグループです。インフルエンザA(H7N9)ウイルスはH7亜型ウイルスのサブグループの一つです。複数のH7亜型ウイルス(H7N2、H7N3およびH7N7)の人への感染が時折発見されてきましたが、H7N9ウイルスの人への感染は中国からの最近のレポートがあるまで報告されていませんでした。

2. インフルエンザA(H7N9)ウイルスによるヒト感染の主な症状は何ですか?

これまでのところ、この感染症を有する患者は、重症肺炎を患っていました。症状には、発熱、咳、息切れが含まれます。ただし、情報はまだインフルエンザA(H7N9)ウイルスの感染が起こしうる病気として考えられる範囲に限ったものです。

3.何人のインフルエンザA(H7N9)ウイルスによる人症例がこれまでに中国で報告されていますか?

2013年4月3日までに、7人が検査による確定例として中国で検出されています。症例に関する最新情報の詳細は、Diseases Outbreak Newsを参照することができます。

4.なぜこのウイルスは現在、人間に感染しているのですか?

これまでの感染患者における曝露源が分かっていないので、我々はこの質問に対して、まだ答えを知りません。しかし、分離されたウイルスの遺伝子解析の結果からは、ウイルスは鳥由来であるものの、哺乳動物に適応の兆しを見せていることを示唆しています。これらの適応には、ウイルスが哺乳動物の細胞に結合する能力と、(鳥のそれよりも低くなっている)哺乳類の通常の体温に近い温度で増殖しうる能力が含まれます。

5.インフルエンザH7亜型ウイルスによる以前の人への感染について世界的に知られていることは何ですか?

1996年から2012年まで、インフルエンザH7亜型ウイルス(H7N2、H7N3、およびH7N7)の人への感染は、オランダ、イタリア、カナダ、米国、メキシコ、英国で報告されてきました。これらの感染のほとんどは、家禽におけるアウトブレイクに関連して発生しました。オランダで発生した1例の死亡を除いて、感染は主に結膜炎や軽度の上気道症状でした。現在までに、インフルエンザH7亜型ウイルスによる人への感染は中国で報告されていません。

6.インフルエンザA(H7N9)ウイルスは、インフルエンザA(H1N1)ウイルス、およびインフルエンザA(H5N1)ウイルスとは違うのですか?

はい。すべての3つのウイルスはインフルエンザウイルスですが、互いに異なっています。H7N9とH5N1は、時には人々に感染する動物のインフルエンザウイルスであると考えられています。H1N1ウイルスは、人に通常感染するものと、動物に通常は感染するものに大別できます。

7.人々はどのようにインフルエンザA(H7N9)ウイルスに感染したのでしょうか?

確定例の中には、動物や動物のいる環境との接触があった者がいますが、ウイルスはこれまで動物からは発見されていません。よって、これらの人がどのように感染したかは分かっていません。動物から人への感染の可能性、同様に人から人への感染の可能性に対して調査が進められています。

8.インフルエンザA(H7N9)ウイルスの感染をどのように防ぐことができますか?

感染源と感染経路の両方が不確定ではありますが、感染全般を防ぐために基本的な衛生慣行に従うことが賢明です。その中には手指衛生や咳エチケット(原文では「呼吸器の衛生」)と食品安全対策が含まれます。

手指衛生:

・以下のような時には手を洗いましょう:

  • 食事を用意する前、用意している間、その後。
  • 食べる前。
  • トイレを使用した後。
  • 動物の世話をしたり、動物の排泄物を処理した後。
  • 手が汚れている時。
  • 家人が病気になりお世話をする時。
  • 手指衛生は、また、(汚染面への接触から)自分自身への感染伝播を予防します。これらは、医療機関においては、患者に対して、あるいは医療従事者や他の人への感染伝播を防ぐことにつながります。

・肉眼的に汚れている場合には、石けんと流水で手を洗いましょう。そうでない場合は、石鹸と水で手を洗ったり、アルコール製剤による手指のクリーナーを使用しましょう。

咳エチケット:

・咳やくしゃみをするときには、医療用マスク、ティッシュペーパー、(服の)袖、または曲げた肘で口と鼻を覆いましょう。その直後に、蓋を閉じることの出来る容器に使用されたティッシュペーパーを捨てましょう。気道分泌物との接触後には、手指衛生を行いましょう。

9.肉(例:鶏肉や豚肉製品)を食べることは安全ですか?

我々はまだ感染経路を把握していませんが、以下のように、衛生的な食品調理の基本原則に従うことが賢明です。

  • 病気の動物を食べてはいけません。
  • それ以外の場合は、適切に準備され、調理された肉を食べても安全です。
  • インフルエンザウイルスは加熱により不活化され、調理に用いられる通常の温度は(たとえば、その食品はすべての部分が70℃に達する)、ウイルスを殺すには十分です。
  • アウトブレイクが発生している地域では、適切に調理が行われ、食事の準備が適切に行われていれば、肉製品は安全に消費することができます。
  • 生の肉や、未調理の血液を用いた料理の摂食は、高いリスクとなりますのでお勧め出来ません。
  • 汚染を避けるために、調理済み食品や、すぐに食べられる食品(ready-to-eat foods)と、生の肉とは常に離しておいてください。
  • 生の肉や他の食品を調理するために、同じまな板や同じ包丁・ナイフを使用しないでください。
  • 手を洗わずに生の食品と、調理済みの食品の両方とを処理しないでください。
  • 調理した肉を調理前にあった同じ場所や表面に戻さないでください。
  • その後に熱処理あるいは、調理されることのない食品の準備において、生卵や半熟卵を使用しないでください。
  • 生の肉を扱った後は、石鹸と水で十分に手を洗ってください。
  • 生の肉と接触していたすべての表面や調理器具を洗浄し、消毒してください。

10. インフルエンザA(H7N9)ウイルス用のワクチンはありますか?

インフルエンザA(H7N9)感染予防のためのワクチンは現在ありません。しかし、ウイルスはすでに最初の患者から分離され、特徴が分かってきています。ワクチン開発の最初のステップは、ワクチンに用いることができる候補となるウイルス株の選択です。WHOは、パートナーと協力して、最良の候補ウイルスを識別するために利用可能なインフルエンザA(H7N9)ウイルスの特徴を明らかにしていきます。そうして、ワクチンが必要となった場合に、これらの候補ワクチンウイルスは、ワクチンの製造に用いることができます。

11.インフルエンザA(H7N9)感染症の治療法はありますか?

中国で行われた臨床検査の結果からは、インフルエンザA(H7N9)ウイルスは、ノイラミニダーゼ阻害剤(オセルタミビルおよびザナミビル)として知られている抗インフルエンザ薬に感受性があることが示されています。これらの薬は病気の過程で早期に投与される場合、季節性インフルエンザウイルスとインフルエンザA(H5N1)ウイルス感染に対して有効であることが判明しています。ただし、現時点では、H7N9感染症の治療のために、これらの薬物を使用した経験はありません。

12.一般住民は、インフルエンザA(H7N9)ウイルスの危険にさらされていますか?

これらの感染が、社会における感染伝播に対して重大なリスクがあるかどうかを判断するためには、情報は十分ではありません。その可能性については、今行われている疫学調査の対象となっています。

13.医療従事者は、インフルエンザA(H7N9)インフルエンザウイルスの危険にさらされていますか?

医療従事者が感染症患者に接触することはよくあることです。そのためWHOは、適切な感染防護策・感染管理が一貫して医療現場において用いられ、医療従事者の健康状態を注意深く監視することを勧めます。インフルエンザA(H7N9)感染における疑い例や確定例の診療・看護を行う医療従事者は、標準予防策の実施と同時に、追加の予防措置を用いるべきです(http://www.who.int/csr/resources/publications/swineflu/WHO_CDS_EPR_2007_6/en/index.html)。

14. どんな調査が始まっていますか?

地域および国の保健当局は、次のような対策を行っています:

  • 新たな症例の早期発見と検査確定を確実にするために、原因不明の肺炎症例のための強化サーベイランス。
  • 疑い症例と既知症例との接触者の評価を含めた疫学調査。
  • 感染源を決定するために、家畜衛生当局との緊密な連携。

15.このインフルエンザウイルスがパンデミックの脅威となりますか?

人に感染する能力を有するいかなる動物のインフルエンザウイルスは、パンデミックを引き起こす理論上のリスクを有しています。しかし、インフルエンザA(H7N9)ウイルスが、実際にパンデミックを引き起こしうるかどうかについては不明です。人への感染がしばしば検出されている動物の他のインフルエンザウイルスが、パンデミックを常に引き起こしているわけではありません。

16.中国に旅行することは安全ですか?

中国で特定された症例数は非常に少ないです。WHOは、中国への訪問者にも、中国を離れる人々に対しても、旅行措置の適用を助言するものではありません。

17.中国製品は安全ですか?

いかなる中国製品と現在の症例を結び付ける証拠はありません。WHOは、この時点で貿易に関するいかなる制限が行われることに対しても反対します。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan