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鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスによる人への感染に対する暫定的なWHOサーベイランス勧告

 Interim WHO surveillance recommendations for human infection with avian influenza A(H7N9) virus

 2013 年5 10 日現在

 邦訳担当 感染症疫学センター

 

背景

2013年3月31日、鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスの人への感染が、中国当局よりWHOに報告された。家禽でのアウトブレイクと関連したインフルエンザA(H7亜型)ウイルスの人への感染が過去に発生しているが、ほとんど散発的で人においては軽症であった1.。しかし、今までのところ報告されているH7N9感染確定例のほとんどは肺炎を伴い、さらにそのほとんどは重症である。現在、継続的な人-人感染の証拠はない。インフルエンザA(H5N1)とは違い、このH7N9ウイルスは、ニワトリに対して「低病原性」であることを示唆する分子マーカーを持っている。このウイルスは家禽に対して軽症もしくは無症候と考えられる。ウイルスが家禽に対して軽症もしくは無症候であることは時間の経過により変化するかもしれないが、(現時点では)症状が顕在化しないため家禽への感染の広がりを監視するのは困難である。概して、H7N9に関する暫定ガイダンスは高病原性鳥インフルエンザA(H5N1)のそれと類似の内容である。H7N9に関する暫定ガイダンスを以下に要約するが、さらに情報が集積すれば更新される。

 

 サーベイランスの目的

目的は以下の通りである。

  1. H7N9の人への感染症例を発見すること。

  2. 新たな症例の時間的・地理的な広がりを監視すること。

  3. このウイルスによる人-人感染を早期に発見すること。

 H7N9による人への感染に対するサーベイランス・調査の提言

 

すべての国において

現在流行している国及びその周辺国3.において(上記に追加)

現在流行している国において(さらに上記すべてに追加)

症例の検査と調査

確定例(Confirmed case)と可能性例(Probable case)の症例定義

 

確定例

 H7N9ウイルスによる最近の感染4.が検査によって確定した症例

可能性例

急性呼吸器感染症のある者で臨床的、放射線学的、組織学的に肺実質性疾患(例えば、肺炎またはARDS)の所見があり、かつ発症前2週間以内に、H7N9ウイルス感染が検査によって確定した症例との濃厚な接触歴5.がある症例

確定例の報告

このウイルスに関してさらに知見が得られるまで、各国当局は、H7N9症例を確定した場合は感染経路や重症度パターンの変化も含めて、24時間以内に当該WHO地域事務局の国際保健規則(IHR)連絡窓口を通じて報告するよう求められている。

 実施中のサーベイランスでの活動性や特別に実施した調査結果は、国際的なリスクアセスメントやガイダンスを提供するために速やかにWHOへ連絡を行なう。さらに各国当局が、発症日、年齢、性別、経過や疾患の臨床像、基礎疾患、曝露情報、渡航歴や治療に関する情報を含む追加情報をWHOと共有するように促す。症例の情報収集様式は、添付資料を参照する。

国際的サーベイランスの結果

H7N9の人への感染症サーベイランス結果は以下を参照:

http://www.who.int/influenza/human_animal_interface/influenza_h7n9/en/index.html.

動物サーベイランス結果の最新情報は以下を参照:

OFFLU: http://www.offlu.net/
OIE:http://www.oie.int/en/animal-health-in-the-world/web-portal-on-avian-influenza/

 

 


 

  1. http://www.who.int/wer/2013/wer8813/en/index.html.
  2.  “クラスター”とは、2症例以上の人々で、14日以内の同時期に発症し、教室、職場、家族、親戚、医療機関、そのほかの住居、兵舎、レクリエーション施設に関連している人々と定義する。
  3. 流行地に関して:
    http://www.who.int/influenza/human_animal_interface/influenza_h7n9/Data_Reports/en/index.html
    A(H5N1):
    http://www.who.int/influenza/resources/documents/h5n1_investigations/en/index.html
  4. 現在、利用可能な診断検査は、polymerase chain reaction (PCR)のみである。しかし、血清学的検査のような他の検査法も将来的には利用可能になるかもしれない。このガイダンスは適宜、更新される。
  5. 濃厚接触者には患者をケアした医療従事者あるいは家族または身体的な濃厚接触した者、症状を呈した確定例あるいは可能性例と同じ場所に滞在した者(例えば、同居や訪問など)が含まれる。

 FAO: http://www.fao.org/avianflu/en/index.html

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan