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ブレイクスルー感染者を含む医療機関、福祉施設等での
クラスター調査から得られた知見(簡略版)
2021年12月8日時点
国立感染症研究所実地疫学研究センター
2021年2月より、国内では新型コロナウイルスワクチン(以下、ワクチン)接種が進められていますが、2021年8月以降、医療施設や福祉施設などにおいて、ワクチン接種後一定の期間を経過した者のうち、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患する、いわゆるブレイクスルー感染者を多数含むクラスターが報告されるようになりました。本稿においては、管轄自治体のご協力のもと当センターが従事した、ブレイクスルー感染者を多数含む複数の国内各地で発生したクラスターの各調査結果(計11事例)から得られた、共通すると思われる代表的な所見、および共通する対策に関する提案について、迅速性に重きを置いた形で簡略に紹介したいと思います。なお、本調査における陽性者の全検体の遺伝子情報が分析されてはいませんが、分析されたウイルスについてはすべてデルタ株であったことを申し添えます。また、この11事例全体を通して、2回目の接種日から発症までの週数の中央値は、職員については17.1週(範囲5.1-22.6週)、入所者・入院患者については7.3週(範囲0.1-19.6週)でした。
代表的な所見:
共通する対策に関する提案:
以上、どうぞ、よろしくお願い申し上げます。
2021年12月15日19:00時点
12月17日 一部修正
国立感染症研究所
WHOは2021年11月24日にSARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統を監視下の変異株(Variant Under Monitoring; VUM)に分類したが(WHO. Tracking SARS-CoV-2 variants)、同年11月26日にウイルス特性の変化可能性を考慮し、「オミクロン株」と命名し、懸念される変異株(Variant of Concern; VOC)に位置づけを変更した(WHO. Classification of Omicron (B.1.1.529) )。
2021年11月26日、国立感染症研究所は、PANGO系統でB.1.1.529系統に分類される変異株を、感染・伝播性、抗原性の変化等を踏まえた評価に基づき、注目すべき変異株(Variant of Interest ; VOI)として位置づけ、監視体制の強化を開始した。2021年11月28日、国外における情報と国内のリスク評価の更新に基づき、B.1.1.529 系統(オミクロン株*)を、懸念される変異株(VOC)に位置付けを変更した。
* B.1.1.529 系統の下位系統であるBA.ⅹ系統等が含まれる。
表 SARS-CoV-2 B.1.1.529系統(オミクロン株)の概要
PANGO 系統名
|
日本 感染研 |
WHO |
EU ECDC |
UK HSA |
US CDC |
スパイクタンパク質の主な変異(全てのオミクロン株で認めるわけではない) |
検出報告国・地域数 |
B.1.1.529 BA.x |
VOC |
VOC |
VOC |
VOC |
VOC
|
G142D, G339D, S371L, S373P, S375F, K417N, N440K, G446S, S477N, T478K, E484A, Q493K, G496S, Q498R, N501Y, Y505H |
76か国 |
オミクロン株について
海外での発生状況
日本での発生状況
ウイルスの性状・臨床像・疫学に関する評価についての知見
オミクロン株については、現時点ではウイルスの性状に関する実験的な評価や疫学的な情報は限られている。国内外の発生状況の推移、重症度、年代別の感染性への影響、ワクチンや既存の治療薬の効果についての実社会での影響、既存株感染者の再感染のリスクなどへの注視が必要である。
国内におけるリスク評価
国内の発生動向
国内の新規COVID-19報告数は微増傾向ではあるものの、依然いずれの地域・年齢群でも低いレベルで推移している。国内のゲノムサーベイランス検体からオミクロン株は検出されておらず、現時点でオミクロン株による市中での急激な感染拡大を示唆する所見はない。しかし、オミクロン株感染例の探知を報告する国は増加しており、日本においても市中感染が報告されている国以外への渡航後のオミクロン株感染例が増加している。
感染・伝播性
免疫獲得状況や対策の程度が日本の現状とは必ずしも同様でないものの、限られた初期の情報ではあるが海外における疫学的評価から感染・伝播性の増加が示唆されている。
重症度
国内で経過観察されているオミクロン株感染例については全員軽症もしくは無症状で経過しているが、症例数が少なく、海外の報告を併せても現時点では重症度の評価は困難である。引き続き国内外の動向を注視する必要がある。
ワクチン・抗体医薬品の効果への影響や免疫からの逃避
査読前論文ではあるが実験室における評価や初期の疫学的評価で、ワクチン2回接種による発病予防効果が低下している可能性が示唆されている。
当面の推奨される対策
基本的な感染対策の推奨
参考文献
注意事項
迅速な情報共有を目的とした資料であり、内容や見解は情勢の変化によって変わる可能性がある。
更新履歴
第4報 2021/12/15 19時時点
第3報 2021/12/8
第2報 2021/11/28
第1報 2021/11/26