国立感染症研究所

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国立感染症研究所
2021年4月7日17:00時点

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要約

  • 懸念される変異株(VOC)感染者の割合が国内でも増加しつつある。 変異株スクリーニングPCRの全国的な導入によりVOCの実態が明らかになってきた。中でも、VOC-202012/01が大半を占め、関西圏で増加傾向である。海外の報告と同様に、従来株と比べて感染・伝播性が高いと見られる。
  • N501YとE484K変異を有するP.3系統株がフィリピンからの入国者から新たに見つかったことから、国内ではVOCとして扱うこととする。
  • E484K変異を有するR.1系統株が、関東・東北地方で増加している。継続してVOIとして取り扱い、感染・伝播性を含め発生動向を注視し、ワクチンへの影響等を検討していく。
  • 社会の新型コロナウイルス感染対策は、従来株・変異株を問わないが、感染・伝播性が増加した変異株による感染者急増を極力回避するため、対策の強化・徹底を推奨する。
  • 変異株の流行による感染者の急増に備え、医療需要が急増した際の対応策の構築を急ぐとともに、速やかに社会的な感染機会の抑制を図るより強力な対策を行うこと、また、県境を跨ぐ移動など VOCが急増する地域との往来の抑制等、拡大抑止対策を検討することを推奨する。

国立感染症研究所
2021年4月5日時点

1.背景

従来株に比べて感染・伝播性や獲得免疫の効果に影響があるとされる新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新規変異株が相次いで報告され、国際的な流行が懸念されている。これらの新規変異株はいずれも感染・伝播性に影響があるとされるN501Y変異を有する。2020年11月に英国南東部地域でSARS-CoV-2の新規変異株VOC-202012/01(lineage B.1.1.7)が報告されて以降、同株症例は同国内で急速に増加し、その後世界的に感染拡大を起こした。VOC-202012/01は従来株に比較して実効再生産数が43-90%高く[1,2]、また死亡リスクを55%上昇させるという報告がある[3]。しかし新規変異株症例の疫学的特性についてはまだ十分に解明されているとは言えない。英国ではVOC-202012/01が報告された当初に従来株に比べて小児の感染リスクが高い可能性が指摘され[4]、その後、英国公衆衛生庁の解析ではどの年代でもおしなべて2次感染率が上昇していることが報告された[5]。また南アフリカから最初に報告された501Y.V2株、日本においてブラジル渡航者から検出された501Y.V3株は、N501Y変異に加えて免疫逃避との関連が指摘されているE484K変異を有しており、ワクチンの効果が減弱する可能性が指摘されている。

日本では2020年12月25日に空港検疫で英国からの帰国者からVOC-202012/01が初めて検出された。さらに同年12月28日に南アフリカ共和国からの帰国者から501Y.V2が、2021年1月6日にブラジルから到着した渡航者4名から501Y.V3が検出された。その後、国内では主にVOC-202012/01症例のクラスターが確認されており、新規症例数が増加しつつある[6]。今後、新規変異株の流行拡大が想定されるなかで、その疫学的特性を明らかにすることは制御戦略を設計するうえで重要である。

本報告の目的は2021年4月5日までに日本国内で確認された新規変異株症例の特性を記述し、特に新規変異株症例の主体であるVOC-202012/01症例の感染・伝播性と感染リスクについて評価することである。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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